第2話 あれはそう

「あの…………ここってどこかわかりますか?」



 疑問を彼女にぶつける。

 

 モップ掛けをしながら少女は、口を開く。



「あなたもそうなんでしょう?」

「…………?」

「記憶、ないんでしょう?」

「……てことは、あなたも?」


 自分の目の前にいる少女から少し話を聞いてみることにした。

 それから数分が経つ。


 彼女も自分と同じく、自分に関係する記憶がなく、10日ほど前に目覚めたらここにいたという。


 彼女の名前は、レサワスグナというらしい。


 容姿は、洋風だが名前は日本人で……よくわからないなこりゃ。


 彼女は、目覚めてすぐに自分は、海難事故で遭難し記憶を失い、それでこの家の主に助けてもらったのではないかと思い、辺り一帯を探したが、人はいなかったという。


 この自分たちのいる場所は、離島でその中心にポツンと家がある場所。


 木が数本あり、それ以外は、特にない。


 船置き場もなく。


 不自然だった。


 彼女は、本能的にこの場所から離れようと決心し、行動をしたが、失敗に終わる。


  地面に煙をたいたり、SOSの文字を書くが、ここ数日間飛行機や船すらも見えていないという。


 筏を作り、海を渡るが、ある境目を超えると、いつの間にか、海を渡る前に戻っていたという。


 まるで謎の力が働いているかのようで。


 ある日、彼女は諦めた。


 元の場所に戻る事を。


 あいにくこの家は、衣食住が整っており、電気、水道もあるという。


 何もない環境下で、電気や水道が使えるのは、いささか虚想であると思ったが、彼女が慣れた手つきで部屋の電気をつけたので納得した。

 

 彼女が言うにこの場所で、不満があるといえば、毎日が退屈であること。


 退屈な毎日を生きていた彼女は、ある日を境目に、メイドの仕事をして、毎日の暇をつぶすようになったらしい。


 家の様々な箇所の手入れ、離島の環境整備。


 これをするのが毎日の楽しみという。


 ……この話聞いたことがある。


 記憶はないが、なぜかわかる。


 それにこの少女の事を自分は、心のどこかで知っているは──

 


「──ッッ!!??」



 頭に電流が、走ったような音が聞こえる。


 酷い頭痛を覚えた。



「……なんなんだよ!」



 不満を漏らしながら、目をつぶり、頭を抱え、少しでも痛みを抑えようとする。



 「……え?」


 

 何かあたたかな感触を覚える。


 どこか心地が良いラベンダーの香り。


 心臓が鼓動を何回も鳴る。


 目を薄く開く。



 「レ……サ……ワ……ス……グ……ナ?」

 


 彼女は強く自分を抱きしめていたのであった。



「おやすみなさい」



 彼女は、涙をこぼし、震えた声でそう言うと、視界は完全にブラックアウトした。

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