第2話 あれはそう
「あの…………ここってどこかわかりますか?」
疑問を彼女にぶつける。
モップ掛けをしながら少女は、口を開く。
「あなたもそうなんでしょう?」
「…………?」
「記憶、ないんでしょう?」
「……てことは、あなたも?」
自分の目の前にいる少女から少し話を聞いてみることにした。
*
それから数分が経つ。
彼女も自分と同じく、自分に関係する記憶がなく、10日ほど前に目覚めたらここにいたという。
彼女の名前は、レサワスグナというらしい。
容姿は、洋風だが名前は日本人で……よくわからないなこりゃ。
彼女は、目覚めてすぐに自分は、海難事故で遭難し記憶を失い、それでこの家の主に助けてもらったのではないかと思い、辺り一帯を探したが、人はいなかったという。
この自分たちのいる場所は、離島でその中心にポツンと家がある場所。
木が数本あり、それ以外は、特にない。
船置き場もなく。
不自然だった。
彼女は、本能的にこの場所から離れようと決心し、行動をしたが、失敗に終わる。
地面に煙をたいたり、SOSの文字を書くが、ここ数日間飛行機や船すらも見えていないという。
筏を作り、海を渡るが、ある境目を超えると、いつの間にか、海を渡る前に戻っていたという。
まるで謎の力が働いているかのようで。
ある日、彼女は諦めた。
元の場所に戻る事を。
あいにくこの家は、衣食住が整っており、電気、水道もあるという。
何もない環境下で、電気や水道が使えるのは、いささか虚想であると思ったが、彼女が慣れた手つきで部屋の電気をつけたので納得した。
彼女が言うにこの場所で、不満があるといえば、毎日が退屈であること。
退屈な毎日を生きていた彼女は、ある日を境目に、メイドの仕事をして、毎日の暇をつぶすようになったらしい。
家の様々な箇所の手入れ、離島の環境整備。
これをするのが毎日の楽しみという。
……この話聞いたことがある。
記憶はないが、なぜかわかる。
それにこの少女の事を自分は、心のどこかで知っているは──
「──ッッ!!??」
頭に電流が、走ったような音が聞こえる。
酷い頭痛を覚えた。
「……なんなんだよ!」
不満を漏らしながら、目をつぶり、頭を抱え、少しでも痛みを抑えようとする。
「……え?」
何かあたたかな感触を覚える。
どこか心地が良いラベンダーの香り。
心臓が鼓動を何回も鳴る。
目を薄く開く。
「レ……サ……ワ……ス……グ……ナ?」
彼女は強く自分を抱きしめていたのであった。
「おやすみなさい」
彼女は、涙をこぼし、震えた声でそう言うと、視界は完全にブラックアウトした。
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