第24話 特に何も無い日。

「さてと…行くか!!!」

俺は、バックを持ち扉を開けた。


そして、その開けた扉の先には太陽の光に照らされるVの姿。

「おはよ!」


俺が片手を持ち上げて挨拶をすると、Vも、カバンを後ろに追いやる拳を、少しだけ握りしめて、「お、おはようございます…」と返事をする。


俺は、Vの隣に並ぶと、バックを持って家の前の道を進む。


「そういえば…MERの件…終わったんですか…?その…セルーとか…」


「え?まあ、MERのシベリアの基地はとりあえず潰したぞ?まあ、MERの基地を壊しただけで、セルーはまだ生きてる可能性が高いけどな…」


「そ、そうですか………その…セルーのこと…憎いとか…思わないんですか…?」


Vは俺の方では無く、道の端を見ながら問う。

「え?まあ…一ミリもないと言えば、嘘になるけど…でも、俺をこの世に誕生させた父だからな。それに、Vに出合わせてくれたのも、セルーだし…ある程度は感謝してるぜ?」


「その…能力を得る薬物売ったりとか…そういうのは良いんですか?」


「え?まあ…俺は別に何も思わないかなぁ…別に精神が狂うとか…そういうのじゃ無いじゃん?あれはただ単に悪い奴が使うから悪用されているだけで…そんなこと言ったら、俺が持っている銃みたいなもんだろ」


「そ、そうですね…」


「だから…まあ、俺にとってはセルーはただ科学者やってるってだけって感じだなぁ…」


しばらく歩くと、俺らの歩いていた道に学生のような人がだんだんと流れ込んできた。


「今日は森崎喫茶行かない…?」


「え?んん〜良いね!!」


目の前にはカップルなのか、手を繋ぐ男女の姿。

お互いに笑顔を見せ合い、目と目を合わせている。


俺は、少しだけ手を動かすと、すぐにVの手の甲と俺の手の甲が掠れた。


「ん…」

Vは少し驚いたのか、声を漏らした。


あ、良いこと思いついた!


俺はVのぶら下がっていた手を、握った。


「ふぇ?ゆ、ユミーさん!?」

俺の握った手を一度確認して、顔を赤くしたV。


俺は「どうした?」と余裕の表情で聞き返す。


するとVは、顔を隠して、「なんでも…無い…です…」と呟く。


そして、Vは俺の手を握る。


指と指を絡め合わせて、離れないように握る。


「んん?あれ?Vとユミー?」


後ろから聞こえた声。

俺とVはその声の元へと振り返ると、そこには最上沙由香の姿。


2-Aの女子生徒で、霧矢の姉。


髪をまとめてゴムで縛る彼女は俺の様子を伺いながら話しかけてきたようだ。


「ま、まさか!!!!!!カッp_____」


沙由香が全てを言う前にVがその大きく空いた口を閉じさせる。

「う、うるさいですよ!!!!!」


「む、むー!!!むー!!!!ぱはぁ!!!!」

沙由香はVの手を無理矢理剥がすと、「え?え?つ、付き合ってんの!?」と目を輝かせながら聞いてきた。


兄姉で全く似てないな…


「う、うるさいから!!!!し、静かにしてください!!!!!」


「え?私…静かにしてましたけど…?」


俺はそんな二人のJKを見守りながら朝を過ごした…





廊下の一部に置かれたカウンター。

そこに並ぶ多種多様なパンの数々。


「って…お前なんでここにいるんだよ…!!!」


俺はつい、ある人物にツッコミをする。

起眞高の売店で、なぜかそこには赤髪の男がパンを売り捌いていた。

そして、胸には「新人」を指す若葉マーク。


そして胸にはフィクサーと書かれている。

昨日までの老けていたシワはどこに行ったのか…


「お前…今何歳だよ…?」


「えぇ?僕は今…体質年齢的には16?らしいけど…」


「お前…セルーに何してもらった?」


俺は焼きそばパンを売り捌く赤髪の少年に聞く。

「えっとぉ…ちょっとした、若返りの薬とぉ…」


「薬と…?」


「不老の薬……です…」


「なぁるほど…やってんな…」


「って…ユミーさんとこの人は…一体どんな関係…なんですか…?」

すると、俺とフィクサーの会話を聞いていたVが横から口を挟む。


「え…っとぉ…こいつ…電脳特殊捜査隊の第0団員だ…」


「第0団員…?ど、どういうことですか…?」


「葉月さんの所に拾われてからさ、しばらく暇だったし、殺し屋仲間のこいつと、正義のヒーロー的な?そんな感じの事をやっていた時の相棒だったんだよ…俺がハッキング係でこいつがバトル係だったんだ。」


「へ、へぇ…そうなんですね…」


「それじゃあ、これから、またお世話になると思うから、よろしくね〜」


「お前なぁ…」

俺はそう言いつつ、フィクサーが売店にて、女子高校生らにパンを売るのを見ていた…


その後、フィクサーは売店アイドルとして高校のトップアイドル的な存在になるのは、それから数日経った後の話だ。






「まあ…てなことがあってな…」


コーヒーを啜るD。

まあいつも通りの大型の遠隔操作型のロボットだけど。


そんなことを話しながら、俺はオレンジジュースを飲んだ。


「てか、若返りの薬…ですか…僕も一度、見てみたいですね……」


「ああ…そう…お前…そういえば、セルー化学者側だもんな…」


俺は少し苦笑いをすると、Dはコーヒーを機械の中に入れる。


入れたコーヒーは後にDの部屋に運ばれて、コーヒーサーバー的な物に投入されるらしい。


無駄にならなくて良かった。


「まあ、もうちょっとしたら、仕事も落ち着くんじゃないかな…?」


「え?どうしてですか?」


「MERの本拠地が潰れたんだ。そう簡単に能力を得られる薬作れるとも思えなし」


「つまり、生産ラインを断ち切ったことで、能力の薬は減り、そして悪者も暴れなくなるってことですね!!」


「うん…まあそういうことだ。だから、俺もなんか部活とかしてみようかな〜インターネット部とか。」


「そんなのあるんですか…?」


「いいや?無いだろうな」


「無いんですか…」


「まあ、とりあえずは、長めの休暇を満喫しようかな〜。そういうの、あっても良いだろ?」


「まあ…そうですね。」


俺はそう呟きながら、森崎喫茶の外の空を見上げる。

そこには、青く澄んだ大きな空が、たびたび雲を泳がせていた。


青の騎士さん休暇に入る…


明日から何をしようかと思うと、楽しみで胸がワクワクしてくるな〜


俺はオレンジジュースを飲み干すと、店員を呼んだ。


「霧矢〜会計したいんだけど〜!」


「はーい少し待っててくださーい」


とりあえずは一件落着。

お疲れ様でした!!!俺!!!!


















『電脳特殊捜査隊第六課』


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