第21話 MER突撃作戦

「は?も、もう一回言ってくれない?」

俺は病院の帰り道、Vのとある言葉をもう一度聞き返す。

「電脳特殊捜査隊第六課メンバーのユミー以外のメンバー全員と、現在音信不通の状態です…どうしてこうなったのかは…私にも…」

Vがランボルギーニの助手席で涙を流しながら言った。

「あるとしたら…」

「MERか…まあ、あいつらなら生きてはいるだろうな…脱出は出来んだろうけど…」

俺はハンドルを一気に右方向へ回し、交差点を曲がる。

そして、ギアを切り替え、一気に加速。

「そんじゃあ、寝起き1発目のミッションはもしかして救出作戦?」

「そ、そういうことになります…」

「あいつら…まあ、勝ってみせるか…」

個人的にも思っていた。

そろそろセルーとの因縁にもピリオドを打たないとなってな…

「やってやろうじゃん…」

となると…ちょっとくらいは戦力を集めた方が良さそうだな…


翌日。

「とまあ…そういうことで…」

森崎喫茶の中。

俺はDにコーヒーを奢る約束で、今話を聞いてもらっている。

「なるほど…MERの位置はわかっている…でも…本当に電六のメンバーの人たちはMERにいるという証拠はあるんですか?」

Dが顎に手を当てながら言う。

いや、正確には、顎に手を当てるような仕草…なのではあるのだが…

「ああ…まあ、なんとなくの勘だ。」

「そうですか…それなら…」

俺は腕時計の中から3枚の写真を取り出す。

「こ、これは?」

MERのカメラをハッキングして取り出した写真。

その中に写っているのは、移動する台のようなものに磔にされた電六のメンバーのみんな。

「うわ…これはひどいですね…」

「ということで、俺はお前の力を借りたい。協力してくれるか?」

Dは少しだけ、黙った後、「それなら…」と言って、そして、着いてきてくださいと言葉をつけ加えた。

「え?どこか行くのか?」

俺は席を立つDの背中を追う。

ちなみにちゃんと1万円札は置いていったD。

絶対そんな必要ないだろ…

「今俺らはどこに向かってるんだ?」

「僕の基地です。」

基地?どこにそんなものがあるのだろうか…

入り組んだ地形を迷うことなくDは進んでいく。

このあたりにあるのだろうか…

俺は、Dの背中を追う。

そして、Dはなぜか、暗い暗い裏路地へと入った。


闇に包まれた裏路地にはポチャリと雨水が落ちる音が静かに響いた。

そして、Dは迷いなく、その裏路地を突き進んでいくと、やがて目の前に壁が現れる。

その壁には鉄の扉が埋め込まれていた。

鉄の扉は妙に汚れていて、そして、その扉から少しだけ青い光が漏れている。

「この中です。」

「お…おう…」

俺は新調したしたばかりの腕時計にせめてもと、手を添える。

扉の中には下へと続く階段があった。

Dが入ると、それに俺も続いて入る。

扉は自動で閉まり、そしてウィーンとオートロックが掛かる音がした。

そして、Dが一定テンポで階段を下っていくと、やがて、一本の廊下のような通りに出た。

横幅2mほど、そして、階段を降りた所から10mほど先、そこにもまた入口と同じような鉄の扉があった。

そして、その廊下には、一定間隔で照明が天井に埋め込められている。

Dは無言でその扉の近くに行き、丸いドアノブを掴み、右に捻った。

そして、扉を開くと、そこには、まるでモニター室のように液晶画面が吊るされている壁の部屋。

そして、その液晶画面の前には大きな椅子があった。

「よく来てくれました。ユミーさん。」

すると、どこか聞き覚えのある声が部屋の中に響いた。

「こうやって面と面で会うのは初めてですね。」

そう言うと、くるりとその大きな椅子が回転をした。

そして、その椅子には小さな少年が、座っていた。

「お前…Dか…まさか…こんなところに居たのか…」

「え?あれが本体じゃないって知ってたんですか?」

「え?いやだって、あからさまに黒い液晶が頭についてるじゃん…」

Dには顔が無かった…それは頭が黒い液晶で包まれており、まるで影のように見える…ということだ…

「まあ…それは良いとして…その…この前はお姉ちゃんをありがとうございました…」

「あぁ…お前…Vの弟だったのか…」

「それで…戦力とか…仲間とか…そう言うのは集まっているんですか?それに、MERの本拠地がどこにあるとか。」

「MERの居場所は掴んでいる。今のところ欲しいのは輸送機が一番欲しいかな。念のために…ってところだな。」

「なるほど…じゃあ、僕も何かしらの形で輸送機を送りましょう。何かご要望は?」

「いや、特に。あえて言うなら、C-2とか?まあ、お前に用意できるとは思えんけえどな…」

C-2とは、自衛隊の使う輸送機で、94人を乗せることのできる航空機だ。

「良いですよ。C-2ですね。どうせなら自動操縦の物で良いですか?」

まじか…

「ああ…運転手なら別に大丈夫だ…用意は出来てる…」

あるのか?

俺がそう言うと、Dは、自身の胸を叩いて、「任せてくださいよ!」と胸を張って言ってみせた。




後日…

ロシア、シベリア。


輸送機C-2のケツ部分に取り付けられている上下開閉式のハッチが開き、空気が機内に吹き込む。


俺は、腕時計をしっかりと、付けると、予備の腕時計を、パーカーのポケットの中へ入れる。


乗組席には、元航空自衛隊の葉月さんが乗っていた。

俺は葉月さんに「言ってきまーす!!!!」と言うと、葉月さんから、「後は頼んだよ!!!!」と言葉が返ってきた。


そして、赤色に光っていたランプが、黄色、緑と色を変えた。

俺は、その緑色になった瞬間、腕時計と酸素マスク以外の装備を何もつけずに、ハッチへと走り、そして、シベリアの寒い空気の中に飛び込む。


バアアアアアアアン!!!!!!!!!!

耳元で激しく響く、空気が擦れる音。


高度10000mの大空の上を滑空する。


見えた!!!!MER本拠地!!!!

白く塗られた山脈と山脈の間。

赤くライトの光る場所が見えた。


俺はそこに向かって滑空をする。

開くパラシュートも無い俺。


推定距離5000m!!!!

まだだ!!!!!


しばらくすると、凍るような冷たさの空気が襲いかかる。


推定距離2000m!!!!!


推定距離1000m!!!!


推定距離500m!!!!!

今だ!!!!!!!!!


俺は足を地面に向ける体制になって、目の奥をギラつかせた。

赤く染まった目そして、その目を包むように作られる肉。






「DEADMOEDフェーズ6!!!!!!」











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