第19話 病室での出来事。
ピ…ピ…
機械的な電子音が一定間隔で病室に鳴り響く。
スー…スー…
ユミーさんの息をする音だけがユミーさんの生きている証拠だった。
「絶対…置いてかないでください…!!」
何十本もの管がユミーさんに繋がり、集中治療室の中には私一人だけ。
ユミーさんに掛けられている布団に染みを作る。
起眞市総合病院。
「うぐぅ…どぉうして……」
こうなったことは、なんとなくなんでこうなったか何となく分かる。
それは、多分、ヤクザの本部への突撃作戦だと思う。
そこでユミーさんはきっと、罠に掛けられたんだ…
ユミーさんがただの爆弾でこんなになるわけがない。
少なからず後ろにはMERが関わっている。
そう、多分ユミーさんを殺す為の爆弾を作ったとか。
研究者の人達の手に掛かれば、そんなの容易いし、多分、一瞬でユミーさんを殺せる技術だって持ってると思う。
でも…だからって…こんな!!!!
冷たいユミーさんの手を握る。
力が全て抜けたようで、本当に生きているのかすらら疑ってしまう。
「死なないでくださいよ…!!私…まだ貴方に…なんにもできてないじゃないですか!!!」
目から出てきた涙が、頬を走ってユミーさんの布団の上へと落ちる。
ガララララ……
すると、集中治療室の扉が突如として開いた。
「うわすっげぇ!めっちゃ管いっぱいある!」
「アクサン!病院ではお静かに、ね!」
「こんなユミーって重症扱いされてるんだね…」
「ユミーはゴキブリ並の生命力。こんなのでは死ねない。」
「この心拍数意味ないんじゃ…僕の知る限りユミーって心臓止まっても生きるはず…」
「それってゴキよりも生命力あるくない?」
『ユミー様ってそんな雑な扱いされてるんですか?』
「ユミーなんてそんなもんだろ。ほら見舞いに来てやったぞー。ってねてるか…」
私が涙目で後ろを向くとそこには、電脳特殊捜査隊第六課のメンバーが全員来ていた。
「うわ!V姉めっちゃ泣いてるじゃん!大丈夫?」
そう言いながら私の元へ来たのは、まつちゃんだった。
まつちゃんの手元にはハンカチが。
「これ使って!」
私はそのハンカチを取ると、「ありがとう…」と言いながら涙を拭う。
「ユミー良いなぁ…あんな美女と研究所からの幼馴染だろ?」
「これはなにか生まれるね!!いや、生まれてもなにかおかしくないぞ!!」
「そのー…あー、なんというか…すまんな。うちのユミーが世話になって。」
ユミーさんのベッドの前でアズキさんが落ち着いた声で言った。
「いいえ…世話になってるのはこっちの方で…ユミーさんには何度も救っていただきましたよ…」
「そうか?こいつそんな大層なことしてんのか?」
「はい…ユミーさんが居なかったら、私は今ここには居ませんし…」
アズキさんが、関心したのか、「ふーん」と声を漏らす。
「まぁ、とりあえずこいつは大丈夫そうだな。それよりも、俺がちゃんとユミー無しで任務できるかだよなぁ…」
『ユミーさんの代わりは私がします。私、超エリートAIなので。』
アイの声がした。
実際、今回ユミーさんを救ってくれたのは、アイが救援を要請したから。
じゃなければ、多分ユミーさんは死んでいたかもしれない…
「そんじゃ、大丈夫か…」
私はずっと下を向いていたから、アズキさんの表情がわからなかったけど、ふん。と鼻を鳴らして、アズキさんは踵を返すと、私に。
「まぁ、ユミーは、目玉一つになっても回復復活するような奴だ。俺らの中で唯一DEAD MODEのフェーズ6まである奴だし、そう簡単には死なねぇよ。心配すんな。」
そういうと、アズキさん率いる電六のメンバーは、「そんじゃ」と言って病室を出ていった。
「私あんな管の量初めてみたわー」
「本当、ドラマみたいだったね!!」
ツヴァイさんとまつちゃんの声が廊下で響いた。
本当にユミーさんのことは気にしてないようだ。
絶対大丈夫という自信がどこかにあるのだろう…
「ユミーさん…信頼されてるんですね…」
コンコン、と今度は部屋の中に扉の叩かれた音が響く。
「入るぞ。」
そう言いながら入ってきたのは、小さな少女のように背の小さい人で、何故か白衣を着ているが、白衣の後ろ布分は少しだけ引きずっていて、衛生面的に気になった。
「あ…貴方は?」
「ええっと…ユミー?の担当医の
鋭い目付きで見る女の子は、髪の毛をショートヘアーにして、プラスチックの板に紙を貼ったものを持っている。
「はい…一応…」
「貴女はなんて呼べば?」
「ええっと…Vでお願いします…」
「あ〜…了解。」
何か理解したのか、少し間を空けた後に、ペンをカチッと一回鳴らした。
「それで?一体このユミーってのはどういう奴なんだ?確かに今までに何回か、人間じゃないやつは診察した経験があるが…」
あるんだ…
「こいつは飛び抜けている…人間の回復能力とは細胞を複製することで皮膚組織を構成し、治癒するというのが普通なんだが、こいつはまず違う。新しい細胞を作っている…どこから湧いてで来るんだか、わからないが、なぜかこいつは新しい細胞を作ることによって回復する。これは人間に追加で能力を与えるようなもんじゃない…もっと他の何か…根本的に違う気がするんだ…何か知ってるか?」
「ユミーさんは…研究所で育ちました…」
「え?」
「研究所MERって知ってますか?」
「え?ああ…聞いたことがあるな…とち狂った研究をしてるとかって…」
「私たちは、その研究所で生まれました。」
「は?どういうことだ?」
私たちは第二次世界大戦時、研究所MERの研究員。
シンという男に研究所の被験体として連れていかれました。
私たちはそこで脳や体を弄くり回され、ある特殊な能力を身につけました。
それは、新たな生物兵器を作り出すため。
そして、ユミーさんは私とは違う、特殊な研究をしていると聞きました。
「特殊な研究…?それは…?」
「魂を生成する研究です。」
「た、魂を!?」
はい。ユミーさんの媒体こそは人間だったのですが、運ぶ際に、その魂は殺したらしく、研究所に運ばれてきたのは魂の無い、空っぽの状態の死体でした。
研究所MERはその死体を蘇生するべく、まずは体に異常がないように、健康状態にしました。
ですが、それでも死体の瞳に魂が宿ることはなく、まずは、その死体の細胞組織を変換し、そして、人間ではなくなった死体に、あらかじめ凝縮しておいたエネルギーの塊を死体に入れる。
そうすると、ロボットのように無慈悲な人間が出来上がりました。
それがユミーさんです。
MERは、ユミーさんを作る目的は新たな生物兵器を作り、それを戦争に活躍させるという事が目的だったため、ユミーさんは人間の感情を理解できないような無慈悲な人間になるように脳を改造されました。
そして、主人と言われた人たちのためにひたすら働く、操り人形。
それが、昔のユミーさんでした。
「ええっと?つまりこのユミーという人間は戦争のために作られた生物兵器で…?そして、ユミーは昔はロボットのように無慈悲な人間だったと?」
「はい…そういう事です。」
「まあ、つまりユミーは研究所によって作り出された殺しの兵器というわけか…」
「で、でも!!!!今はちゃんと人間として生きていて!!!!それでもって、ちゃんとやりたいことをやって!!!!!」
「つまり…MERはAIのような存在を作り出したわけか…」
「は、はい…そうです…」
「そして、人間を殺すことによって新たな生命を作り出す。MERもやるもんだ。っと話していたら、時間になってしまった…すまん。私はここらで。そんじゃあ」
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