第18話 対ユミー武装隊長
「んぁぁ…」
うっすらと目の中に光が入ってきて、俺は瞼を開ける。
視界の中に飛び込んできたのは、2つの頭だった。
2つの頭のそばには、ぐちゃぐちゃになった肉塊を置いている押台が、一つ。
「なんともグロい…一体何があったんだ…」
俺の中に残る記憶は一つ。
それは、色々な武器で体を引き裂かれ、この押台に乗せられたので、強制的にDEAD MODEフェーズ4になり、そしてこいつらを食ったという記憶。
「これ俺がやったんか〜…」
まぁ、良いか。
どうせヤクザの人間なんだし。
俺は中華風に彩られた廊下の奥へと歩を進める。
「とりあえず武器確保しようかな…」
俺は右手をグー、パーと動かすと、血管一つ一つを意識する。
DEAD MODEにはそれぞれに特性がある。
フェーズ1 身体能力向上。
フェーズ2 回復能力、耐久力、身体能力向上。
フェーズ3 耐久力、身体能力、回復能力向上。
そしてフェーズ4。
それは、体の変形だ。
手の先を尖らせると、壁に向かって文字通りの手刀を斬りつける。
「よし!今日も良好だ!」
とりあえず、廊下を一直線に駆け抜ける。
「うわ!なんd…」
グシャァ!!!!!
廊下に出てきた人間は運が悪い。
すぐさま俺の手に作られた刃によって真っ二つにされる。
「可哀想な奴だ。」
「んぁ?敵k…」
ブシャア!!!!!!
そろそろ他の敵が来ても良いんじゃないか?
すると、少し離れた所から、銃を持った敵なのか、拳銃の銃口をこちらへと向ける。
「まじか!じゃあ、デップー行きま〜す!」
バン!バン!バン!
廊下に銃声が、響き渡り直後弾丸が目の前に来る。
そして俺は、避けもせず刀のように、強靭で鋭い手の刃を突き出し、弾丸を真っ二つにする。
「まぁ、もちろん弾丸って真っ二つにしたからって威力が落ちるわけないし、真っ二つになって俺に直撃するんだよね」
真っ二つになった弾丸は、俺の胸に突き刺さる。
体の2箇所が痛い。
「やめよ!」
俺は足を鳥のように鋭い爪と、自由自在に動く指に変化させると、天井を足の鋭い爪で掴み取り、コウモリのように逆さま状態になる。
相手との距離、残り30m
バン!!バン!!バン!!
一度、左手を普通の五本指の手に戻すと、そこから、一本の針のように変化させる。
「よいしょ!」
次の瞬間、俺は一本の針のような左手を拳銃の相手に向かって伸ばす。
30mほど伸びると、その針のような左手は、相手の腹を貫通し、俺はその左手を急に縮ませて、左手の刺さった男を引き寄せる。
0.1秒ほどで、30mを移動した男に向かって俺は右手の刃を振り下ろす。
「討伐完了!」
まさに人間から離れた化け物の戦い方。
まぁ、それが俺の戦闘スタイルなんだけどね。
俺は死んだ男の、拳銃を取る。
機種は…
「ハイポットC9…」
ハイポットC9。
価格が2万円という低価格が売りの銃。
9mm弾を放ちそこそこ強いのだが、素材がプラスチックやら、なんやらのおかげで、イジられキャラとして地位を確立している銃だ。
「まじか…こんなの使ってんのかよ…」
とりあえず俺はハイポットC9をポケットの中に仕舞う。
とりあえず、周りには何も感じない…
とりあえず、真っ直ぐ進んでみるか…
しばらく走っていると、目の前に大きな扉が見えた。
周り同様、中華風に彩られた扉。
ラーメン屋の器に描かれていそうな、金色の幾何学模様。
俺はその扉を蹴破って扉の中に入る。
扉の中には先程の玄関よりも、大きな空間が広がって居た。
縦横100mほどはありそうな空間には、所々に柱が建てられており、一本の道を除いて、至る所に柱が建てられていた。
この光景はまさに西区総合物流センターを思い出させる。
「やあ。やっぱり来たんだね。」
目の前に現れた男は上半身をシャツのような服でまとい、下半身を竜の模様が通った服装を付けている。
まるで男版チャイナドレスのようだ。
「お前がボス?」
「正解。MERにお前を殺せと言われてるからね。そんじゃ、僕はMERの指示通りに動かさせてもらうよ。」
男は、両手にSIG556を握ると、俺に向かって引き金を引いた。
「死ね!!!!」
ダダダダダダダダダ!!!!!!!!
激しい発砲音が鳴り響き、俺の腹に数弾の弾丸が腹を貫通する。
「いっでぇ!!!!」
「まあ、アサルトライフルだからね。」
男は、接近戦に持ち込むつもりなのか急接近してくる。
俺はコンクリートの影に隠れると、背中から触手を一本生やして、天井へと張り付く。
「へ〜君も能力者なのか?」
「君もってことは…お前もなのか?」
俺は、両手を針のように尖らせると、地べたに足をつけている、そいつへ針を一気に突き刺そうと、発射する。
バアン!!!と床が割れる音が響くことから、命中はしていないようだ。
そして、次の瞬間、SIG556の銃弾が鳴り響いた。
銃口から発せられる光に気づき、俺は、急いで両手を引っ張り戻すが、完全に戻る前にSIG556の弾丸が俺の体に着弾する。
「まあ、鉄も大切な資源か…」
俺は、腕を石の物質で纏うと、床に向かって、その重たい物質で固められた拳を振り下ろした。
「君の能力は体を変形させたり、物質変化させたりってところかな?」
「ご名答。」
「ふーん…じゃあ、やっぱり接近戦の方が良さそうだね。」
柱の影から話しかける男。
俺は先ほどからそいつの能力が気になってしょうがない。
いまだに使ったような素振りも見せないし、一体何だと言うんだ?
「僕の能力、気になる?」
そういうと、男は無防備に、柱の影からのそのそと出てきた。
「ああ。気になるな。」
「僕の能力はね…」
そういうと、SIG556のマガジンを落とした。
マガジンは自重で落下したよ☆
次の瞬間、男の後ろあたりから、マガジンが浮きながら出てくると、見えない黒子がSIG556にマガジンを入れるように、マガジンは誰の手も借りず、一人でSIG556に装填され、おまけに誰も手をつけていないのに、自動的にコッキングもされた。
「え?今のって?」
「SIG556を両手に持ってるとさぁ、手が塞がってリロードができないんだよね。だから、念力でリロードしてるんだ。」
「念力…ってそれがお前の能力?」
「うん。ちなみに人は浮かせないんだよね。重量オーバーでさ。それ以外だったら何個でも行けるんだよね。だから例えばこんなこともできるんだよね。」
男は手榴弾を右手に握るとピンを外し、そっと手から離した。
「えい!」
すると、手榴弾は地面に落ちることなく、空中を浮遊した後、俺の方に真っ直ぐに向かっていった。
「ん?」
と俺が気づいた瞬間、俺の顔の目の前で手榴弾が爆発した。
破片が頭に刺さり、視界が暗闇に染まる。
「んああああああ!!!!!!」
どうやら目が潰れたらしい。
次の瞬間、頭から下の感覚がなくなった。
「どう?頭だけにさせられた感覚は?」
「油断したみてぇだな。」
俺は首から下の体を再生するべく、まずは骨を生やして、多分だけど、空中に舞わせる。
「感覚がねぇからわかんねぇ〜」
すると一瞬で全ての感覚が戻ってくる。
視界も暗闇から解放された。
「やっぱりほぼ不死身なんだね。」
「まあな。死ねないことも困りもんではあるけどさ。」
次に俺は全裸だったので、糸を体中から出して作る。
一瞬で、緑のパーカーと黒い半ズボンが皮膚を覆うと、俺は地面に着地。
「そういえば、その能力って銃とかも作れるの?」
「いや、火薬は作れるかもだが、銃みたいな複雑な機構のやつは作れねぇ。でも、こんなのだったら作れるぜ。」
俺は手のひらから、剣を生成する。
「おお。青の騎士様じゃんか。」
「まあな。」
背中のパーカーの布を突き破って、触手を生成させると、俺は壁に触手を刺して、空中へと飛ぶ。
触手が蜘蛛の足の様に壁を突き刺しながら移動するところを、SIG556の弾丸が触手を狙って撃ち込まれる。
「猛獣狩りってわけね。」
ダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!!!!!!!!!
柱の間と間の隙間からでも正確に射撃してくるそれを避けるが、少しばかり被弾した。
クソ!!!!!!
目の前の風を切り、柱と柱の間を飛び抜け、弾丸の雨を見切りながら、高速移動をする。
手に持っている剣を手のひらの中でくるりと回すと、柱の一つに両足をつけ、襲いかかるG圧力を打ち破りって、一気に方向転換し、空中から地面スレスレへと移動する。
「ちょっとした妖怪みたいだね。」
地面スレスレにまで接近し、目の前の柱を蹴って壊しながら移動する。
「ちょっとやばそう。」
男のそいつはそんなことを言いながら、手榴弾を投げた。
もちろん自動追尾弾。しかし、それでも一直線に男に向かって接近する。
SIG556の弾丸を足に被弾すると、追い討ちを掛ける様に横に並んでいた手榴弾が爆発した。
尖った痛みが身体中に広がったが、それは相手も同じ。
先ほどは相手との推定距離は大体15mくらいだったはず。
それなら、相手も被弾している可能性が高い
が、しかし、再び、弾丸が突き刺さる痛みが、腕に広がる。
銃弾のせいで筋力が弱くなり、左腕の剣を落としてしまったことだけわかると、今度は、右の腕が包丁の様なもので切り落とされる感覚が通った。
「な、なんだ!?」
「やっほ」
すぐ側であの男の声がした。
触手が切り取られる感覚が脳に伝わり、触手全部がなくなった感覚がした。
目を素早く回復!!!!
血液を循環させ、目の回復速度だけ上げると、次の瞬間、首に向かって剣の刃を走らせる男の姿が映った。
「ぐ!」
右手を高速で生やす。
「こ、こんなに近づいて良いのか?」
俺はすぐさま触手を背中から生やして、男の上半身と下半身を分離させる。
次に右手を刃のように変形させると、男の両腕を落とした。
下半身に支えられていた男の上半身はバランスが崩れて、地面に叩きつけられた。
「ぐはっ!!!な、なかなかやるじゃん」
「まぁな」
触手を普通の背中に戻すと、左手も再生させる。
「君…まだ余力残してたでしょ?」
「え?どういう事だ?」
「聞いてたんだ…DEAD MODEはフェーズ6まであるってさ…」
「知ってたのか…」
「今のは…見たところ4ってかんじ?すごいじゃん…」
「何のことかさっぱりだな。」
目の前の男は、顔を上げるようにして、上を向こうとする。
「それじゃあ…そろそろお別れか…」
「ま、そうだな。」
「全く…相打ちは嫌だったな〜…」
「え?」
「サイコキネシス…」
次の瞬間、床下からカチッと何かが起動する音がした。
「見えてなくても…念力は発動出来るんだ…MERからもらった特性の爆弾…喰らってもらうよ…」
バァァァァァァァァァン!!!!!!!!!!
「はぁ…はぁ…はぁ…な、んだこれ…」
皮膚が焼け、肉が溶ける。
何故か回復できない…
痛みがずっと体の中に鳴り響く。
「どういう事だ…とりあえず帰らねぇと…」
中華街の奥に停めていたランボルギーニに向かう。
ドクン…
ドクン…
今までに感じたことのない苦痛。
そして心臓の音。
ドクン…
ドクン…
「見えた…」
ランボルギーニのドアを開け、座席の中に座り込む。
ドクン…
ドクン…
近付いて来る死の足音。
『おかえりなさいませ。ユミー様』
不味い…意識が…
『ん?ユミー様…?ユ…さ!…ミさ…ま…!!』
意識が遠のく。
海の中に沈むように暖かい感じがした。
ああ…死んでいくのか…
死ぬ時は気持ち良いって、聞いたことあるけど…本当なのかな…?
でも…悪い…気は…しないな…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます