第17話 ミッションV

「は?お前…もう一回言ってくれるか?」

俺はコーヒーを啜るDに対して、先ほどの発言をもう一度言ってくれるように、頼む。

「だから、あなたが今日、ヤクザ達の巣窟に行くことはヤクザ達に伝えてありますからね」

「オイオイオイ?待て待て…それって、つまり、俺が行くことを言ったっていうことか?」

「はい。そういうことになりますね。」

Dは当然のことのように淡々と話し、コーヒーを啜る。

「な、なんでお前そんなふざけたことを…?」

「そりゃあ、私は情報屋ですので。情報屋αとして職務を務めただけです。」

「ま…まじか…」

情報が漏れた…ということは、ヤクザ達が逃走したという可能性が高いということ…

「お前…やってくれたな…!?」

また一からかよ…

「いえ。先ほども言いましたが、私は所詮、情報屋。金があれば、なんでも情報を売ると言う事です。」

「まじか…少し信用がなくなったぞ…」

俺が頭を抱え、ため息をつくと、次の瞬間、Dは「ですが!!!」と言って、人差し指を立てる。

「ですが…?なんだ?」

「ですが、私は今、情報を売ったという情報をあなたに無料で渡しました。そこからヤクザ達の動向がどうなるのか…ですよね。」

「まあ…確かに…?」

「これはワンアクションヤクザに入れただけです。これからどうなるのかは、私はわかりませんが、ヤクザ達は動いている。それだけは覚悟しておいた方が良いですよ。」

「は、はぁ…まあ、確かにDが売ったという情報が無いよりはあったほうがマシか…」

でも…今ヤクザ達が、前の場所に居るのか…せめて確認はしないとだよな…

もしかしたら、新薬の何か手がかりが掴めるかもしれないしな…

「まあ、ありがとう、とだけは言っておくわ…念のためにな。」

俺は席を立つと、自分のオレンジジュース代をその場に置いた。

「それと…」

そう言ってDは俺の足を止める。

俺は踵を返す。

「それと、ヤクザ達の中に、新薬の使用者…まあ、異能力者がいることは確実です。気をつけてください。」

新薬の使用者!?まさか、適合者が居るとは…

「わかった。気をつける。」

そういうと、俺は森崎喫茶を後にした。





起眞市キマシ咲森区サキモリク起眞中華街キマチュウカガイ

「ここか…」

黒い壁と金色の線で彩られていた、古い中華風の店だったもの。

今は壁が燻んだように濁った汚れが目立ち、古びた大きな二つの扉が目の前にどんと構える。

あたりを見回すと、俺以外にこの古びた店の前にいる人は居ない。

というか、この通りにいる人自体がそもそも少ない。

「さてと…それじゃあ突撃しますか…」

3mはありそうな扉の取っ手を握る。

とても重く、この先に何かを封印しているような重さを前にずらし、扉の奥の方へと、進む。


店の中に入ると、中華風に彩られ、とても賑わっていた名残があった。

エントランスのように、広い大空間。

扉の目の前には大きな階段があり、壁際で二つに分かれている。

床には提灯が転がり、色々な所から埃の蔓延した匂いが湧き出る。

「だれかいませんか〜」

とりあえず、誰かいるか、奥の方へと進んでみる。









二、三歩足を動かすと、唐突に埃では無い他の匂いがした。

「ん?なんだこれ?」

料理や甘味などの、食べ物の匂いでもなく、血のような生臭った匂いでもない…

だが、少し鉄の匂いに似ているような…似ていないような…


「ん?火薬の匂い…?」


「撃てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!」

エントランスに怒号が響くと、物陰から、何人かの人間がひょっこりと顔を出した。


バアン!!!!!!!!!


暗闇を一つの光が灯す。

そして俺の視点は真っ暗に閉じる。



ユミーに降り注いだ弾丸は、12.7mm弾。

使用銃器は、M82A1。

外で使用する用の対物ライフル。

湾岸戦争時に使われ、2キロ先に居る人間の上半身と下半身を真っ二つにしたと言われる、超強力銃。

対して、ノーマル状態のユミー。

そのユミーの頭に対物ライフルの弾丸をモロに直撃。


もちろん。ユミーの頭の中身がその場に撒き散らされた。


「撃て撃て撃て撃て撃てぇ!!!!!!!!」


次に、物影に隠れていたミニガン、M134の発砲を開始する。

周りを明るくし、埃一つ一つの影を映し出す、M134は、武装ヘリに積まれる、いわゆる、機関銃だ。

階段の両サイドに備えられたM134はユミーの体をこれでもかという風に撃ちまくる。

もちろん。ユミーの今の体に放たれた弾丸を止める術はなく、毎分6000発のフルスピードで弾丸は発射される。

そして、階段の奥から、対戦車擲弾発射器のRPG-7を持った人間が8人ほど、やってくると、すぐ様、RPG-7。いわゆる、ロケットランチャーを、交代ずつにして、ユミーに向かって、発射する。

すぐ様、その場にいる物たちは、遮蔽物の中に隠れ、被害を避ける。

それを繰り返し、爆発音が、8回、小さなエントランスの中に響く。

RPG-7の猛攻が終わると、再び、熱を冷ましたM134の死の弾丸の雨が降るかかる。

「撃ち方止め!!!!!!!」

その言葉とともに、ミニガンの弾丸の雨が、ピタリと止まる。

もちろん。ユミーが居た場に残っているのは、弾丸によって焦げ付いた肉塊と、それによって、絞り出された血液。

そこにはユミーが居た形跡などは一切無く、ただの肉と、血液、そして粉々になった骨の屑だけ。

「どうやら死んだようだな。血液を採取し、MER本部に輸送しろ。死体処理班!!変な匂いが付く前にさっさと片付けろ!!!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




俺の名前は、高村朝陽タカムラアサヒ

紀眞市に拠点を置く、ヤクザグループ。

津来京ツライキョウの一人だ。

そして、俺は新たに死体処理班に配属され、先輩の井川さんと、銀色のトレーに盛られ、葬式などで使う、銀色の押台に死体の肉塊を乗せて、運んでいる最中だ。

「この死体…なんなんですか?こんなに酷いやられ方して。」

俺は先輩の井川さんにこの死体の正体について聞いてみる。

「この死体?この死体はな、話によると世界最強の殺し屋と言われた青の騎士の死体らしいぜ。」

「世界最強の殺し屋?なんですか?それ」

「話に聞くと、なんでも、湾岸戦争の時のクウェート侵攻に大いなる力を与えたって言われてる、雇兵の殺し屋だってさ。めちゃ強いんだってよ。」

「そ、そうなんですか…」

「それと、こいつ本当はうちのボスみたいに能力付きだったらしいけど…まぁ、なんの能力か、今になっちゃ関係ない話だな。」

「まぁ、そうですね…ってあれ?これなんですか?」

俺は今まで見かけたことのない、一つのビー玉のような物を指差す。

「ん?なんだコレ?目玉…じゃないよな…」

「なんでしょうか…こんなの体の中にありましたかね…?」

「いや…俺は見覚えないな…まぁ、とりあえずこれ全部焼いて、骨だけ海に捨てか。」

「了解っす。にしても。こんな血生臭くさい仕事。僕らじゃなきゃやってませんよね…」

「まぁ、仕方ねぇだろ。まともに銃器も扱えない」

そこから後ろからついてきた筈の先輩の声が途切れる。

「ん?先輩?」

俺は後ろを振り向くと、そこには、歪な形をした先輩の頭だけが残されており、体は無くなっていた。

「え…先輩?」

グシャ!!!!!

次の瞬間、頭が地に落ちた。

そして、一番最初に瞳の中に映ったのは、首がない俺の体。

そして、天井に逆さになって立っている男の姿があった。

そして、男は緑色のパーカーを着ている。

「DEAD MODEフェーズ4に移行します。」

男は機械のような感情の籠もっていない声を発した瞬間、俺の頭は真っ二つに割れた。





裏設定 DEAD MODEのレベル変化表

レベル1 身体能力向上

レベル2 回復能力向上

レベル3 身体能力、回復能力、更に向上


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