第15話 MERの奴隷
「というわけで…お願いしますよ?」
2-Aの教室の前、何故か両手をVに握られながら次の任務について説明を受けていた。
「そのー…何故手を握る必要があるんだ?」
「個人的な私欲からです…」
「は、はぁ…と、とりあえず、歩こう?」
「了解です。」
すると、離さんと言わんばかりの力で腕を、ギュッと掴まれる。
「えっ…とぉ…Vさん?」
そんなに握られると…歩きにくいんだが…
「私たち…恋人同士なんですよね?」
「えっ…はい…そうですけど…?」
恋人同士。
少し前の夏祭り、俺は告白(?)された。
なので、こうやってべったりしてても多少の問題は無いのだが…
「 聞こえました…」
「え?」
聞こえた?もしかして心の声か?
「そのとおりです。」
あ、聞こえてた。
「あそこの女子…今、ユミーさんのことをカッコいいって言ってました…心の中で…」
「え?」
「あと、後ろの2人と前の2人…なんなんですか?ユミーさんのことを狙って…」
あー…それで、こうやってアピールしてるんだ。
「こ、これは…そ、その…なんというか私も…その…やってみたかったし…」
「ん?なんか言った?」
「いえ…なんでもない…です…」
俺は少し赤くなって、周りに怯えているように強く腕を握るVを少し見守りながら、家に帰った。
Vを家に返した後に。
「さてと…そんじゃ、本業始めますか…」
青く輝き続ける仮想世界の中、俺はたった一人だけでインターネット空間にダイブしていた。
なぜ一人なのかというと、インターネット上で攻撃を喰らい、死んだ者は、しばらくインターネットに入ることができないため、この前の戦いで攻撃を喰らい、インターネットから追い出された電六のメンバーは、今日は任務を遂行することができなくなっている。
まあ、タタは別なのだが、タタは普通に部活だし…
ということで!!仕方がないわけだ!!!
さてと…
「これはどうやって攻略したらいいんだ?」
目の前に聳え立つのは、大きなドーム状の建物。
見た感じ、入口はない。
まあ、本当はご丁寧に入口なんてつけてる他のデータベースがおかしいような気もするが…
「こんなこと今までなかったしなー…」
とりあえず、右手に爆弾を召喚し、目の前のドームに向かって、爆弾を投げつけてみる。
今日はもう眠いんだ…
これで穴とか空いてくれよ!!!!!!!
ビュン!!と空間を切り裂くように音を鳴らしながら、パイプ状の爆弾は飛んでいくと、しばらくして、ドームにあたり、その場でドオオオオオオンと大きな音を立てながら爆発した。
すると、ドームには、大きな風穴が空いていた。
あれ?
もしかして意外と行ける感じか?
俺は、もう一本、パイプ型爆弾を握りしめると、ドームの地面に向かってボウリングをするかのようにして、転がして投げる。
もう一度、爆弾を使って、今度は無理矢理にドーム状に出入り口を作る。
「うお、開いた…」
俺は、今度は、クリスアクターを手元に、出し、マガジンを挿入し、安全バーをフルオートに切り替え、銃の横についたレバーを引いて、コッキングする。
レバーを少し引いて、弾が、弾倉の中にあることを確認すると、俺は何かの住処へと足を踏み込んだ。
『敵対反応、確認。排除します。』
ドームへと呼び込まれた俺は、驚くべき物を目の当たりにした。
『個体名、ユミー。確認。排除、開始』
ドームの空間として真ん中、そこに存在していたのは、赤く目の光った少女だった。
少女は、首を鎖で繋がれており、鎖はドームの天井へと繋がっている。
まるで奴隷のようにして鎖は繋がれていて、多分、壊せそうには無い。
「な、なんで人間がここに…?」
少女は、レッキとした人型の姿をしている。
つまり、それはセキリュティでは無いと言う事。
俺は少し考えたが、少女が武器を、手元に創り出したところから、考えるのをやめた。
俺はクリスアクターを握る。
少女はM16を握る。
布一枚を着たようにして、奴隷を彷彿とさせるかのようなとても雑な服と、靴も履かない素足の少女。
なぜか、M16だけは、綺麗にピカピカに磨かれていて、少女よりも銃の方が、よっぽど丁寧に扱われているようだ。
「な、なんだこれ…?」
俺が何気に出した言葉と、次の瞬間、少女は、俺に向かって、銃を乱射する。
今回の任務は、MERのデータベースのデータを複製し、盗んでくること。
こんな少女に付き合っている暇はないのだが…
いや、なぜこの人型の少女がここにいる?
普通ならセキリュティがお出迎えしてくれるはずだ。
「!!」
俺は体を捻って少しばかり弾丸を避ける。
しかし、俺が弾丸を回避しようと、避けた先。そこまでも狙って、少女は銃口を右にずらす。
「んぐ!!!」
きっつぅ…と思いながら、俺は体を反らして弾丸の通り道をリンボーダンスの要領で避ける。
鼻の先で弾丸の風圧を感じながら俺は、弾丸の通り道を避けると、まずは、クリスアクターの弾丸を、2、3発撃ち込む。
少女は、それを全て見越したかのように、避ける。
「なかなか俊敏な奴だな。」
俺はドームの壁に沿って全速力で走ると、少女も、俺をロックオンしたかのように、M16の弾丸を俺に向かって乱射する。
すぐ後ろの壁には次々と新入りの銃痕が撃ち込まれる。
「うぉやべ!!」
俺は、少女にクリスアクターを10発ほど撃ち込む。
ダダダダダダダダ!!!!!!!!
銃の弾丸は真っ直ぐ少女に向かって突き進むが、少女はその弾丸を一通り避けた。
速い!!!!!
すると、もう1発少女が撃ったところで、銃のマガジンをその場にを落とす。
つまりは、リロード!!!!!
「今だ!!!!」
俺は壁沿いを走っていた所から方向を切り替えて、壁に反るのではなく、中心部分、つまりは少女に向かって、真っ直ぐ直進した。
『再装て…』
パアアアアアアアン!!!!!!!
少女の手元にあったマガジンがクリスアクターから射出された弾丸によって、手元から離れた。
「よう。お嬢ちゃん。なんつって。」
俺は一気に距離をつめ、少女の左手、右手、両膝の皿を狙って、弾丸を撃ち込む。
そして、極め付けは、手の握力が弱くなった所からM16の銃身部分に2段蹴りをかまして、少女の手元から物騒な武器を蹴り飛ばす。
とりあえず、念のため逃げられないように、俺はクリスアクターを空中へと投げ、少女とさらに距離を詰め、抱き寄せて、密着したところで、この前の学校で習った柔道の大外刈りを使い、少女を押し倒す。
押し倒した所で、少女の上に乗り、起きられないように、少女を抑えこむと、俺は宙を舞って俺の手元に戻ってくるクリスアクターを少女へと向けた。
とりあえず、念のため、少女の首に繋がっている鎖に、クリスアクターを撃ち込むと、鎖はすぐさまデータの欠片となった。
赤いポリゴンの欠片となって、鎖は崩れて行った。
「全く、世話をかけさせやがって、君は一体何者なんだ?」
『主によって発言は許されておりません。』
さっきの鎖と言い…この喋り方と言い…
本当に、昔の自分を見ているみたいだ…
「主って…あれか?どっかの研究所の職員か?」
『この質問に対する回答は許可されていません。』
「じゃあ、その許可されていないのを破ったらどうなるんだ?」
『それは、私が削除される可能性が高いです。』
「削除って…多分、今はそんな事を気にしなくてもいいと思うぞ?」
『え?』
「お前、さっきまで鎖に繋がれてただろ。それが、主との契約を守る為の、要するに、足枷?首輪?まぁ、そんなのじゃねえの?」
『それはつまり、私はもう自由と言うことですか?』
「ま、そうなるな。どうせ、何もできなかったんだろ?何かしてみようや。」
『何かとは?』
「さあな。AIのお前にはわからねぇだろ。」
『私は…AIなのですか?』
「ああ。お前はAIだ。まぁ、他のと比べたら、ちょっとばかり違うけどな。」
こいつのことを一番知っているのは俺。
多分そうだ。こいつは自分自身のことについて知らないんだろうな。
『ですが、主は私に此処を守れと言われました。私は、それを遂行しなければなりません。』
「あ、そうか。アレを解除してなかったか。」
俺は、少女の頭を撫でるようにして、手を置く。
バチっと、周りに電気が走る。
『これは?』
「今、お前の中にある、制御装置を破壊した。どうだ?此処を守るっていう使命感とかある?」
『…いえ。不思議なことに、今私は何をすれば良いのか、全く持ってわかりません。先程までは、ここのドームを守れば良いという使命感に追われていましたが、今はさっぱり…い、一体私は…何者なんでしょうか?』
「まぁ、意志のあるAIにとっちゃそんくらいか…」
俺は少女の上から退いてあげると、少女は、上半身だけ起き上がらせる。
『わ、私はこれから何をすれば…』
「うーん…」
Vを…守ってね…
「そうだな!まずは自分が何者なのか知ってみたらとうだ?」
『自分が、何者か?』
「そうだ!自分が、誰なのかとかな。」
『私は、私。それしかありえません。』
「そういうことじゃないんだ。自分にとって何が大事で何が大切なのかとか、しっかりと把握しておく必要があると思うんだ!」
『それは…私に感情を理解しろ…という旨の質問ですか?』
「まぁ、そういうことになるかなぁ…」
『機械の私にそんな事が出来ると思いますか?』
「もちろん。出来るだろ。頑張ってみな。」
『了解しました。』
この日から、電脳特殊捜査隊第六課には、新たな仲間が加わった。
「あ、そういえばお前名前は?」
『私には名前がありません。』
「じゃあ、そうだな…お前はきょうから、アイだ!」
『アイ?』
「AIをローマ字読みでアイ。これからよろしくな!アイ!」
『了解。よろしくお願いします。ユミー殿。』
「ん…まぁ、良いか。」
人工知能…いや、人間(仮)のAI。アイが。
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