第13話 救いの騎士様

俺が来たことにより、安心したVはそっと目を瞑って眠りについた。

俺は、手足に縛られていた縄をほどくと、Vの頬に触れ、「それじゃ、待っててね。」と呟く。


「あ、青の騎士…ど、どうしてお前がここに!?」

「どうしてって…どうやってここを突き止めたかって話か?それなら簡単だ。Vのスマホが落ちてたところの近くにあったら監視カメラから見覚えのある顔の乗っている車のナンバーを覚えて運輸支局って所とかでデータバンク行って、車のナビハッキングしてルートを見れば、すぐに解ることだ。」

「な、何だと!?そ、そんな直ぐに!?」

俺は購入して間もないベレッタ92を腕時計の中から取り出すと、直ぐに、厳柳ガンリュウに向かって引き金を引く。

バンバンバンバンバンバン!!!!!!!

弾丸は、厳柳の心臓、肝臓、腎臓、肺、脳、喉、両足、両手、脾臓、膵臓、大動脈につき刺さる。

ぐぱッ!!!!!!

液体が大量に漏れる酷い音が響く。

煙を巻き上げるベレッタ92のマガジンを抜き、新たなマガジンを腕時計から出し、差し込む。

そして、コッキング。

俺は残ったロン毛男の奏人ソウジンにベレッタ92の銃口を向ける。

「俺にとっては。その銃口よりも青の騎士さんの顔の方が怖いぞ。」

「うるせぇ!!!!楽に死にたきゃ、MERの情報を吐け!!!!」

奏人は、片眉を、ピクリと動かすと、「運が悪かったな…」と呟いた。

バアン!!!!!!!!

俺は脇腹を狙ってベレッタ92の弾丸を放つ。

奏人の男は脇を抱えて、壁際にもたれ掛かった。

「はぁ…はぁ…一つ教えてくれ…」

俺は奏人に歩み寄り、ベレッタ92を脳天に突きつける。

「なんだ?」

「厳柳に土産話にしてぇ。MERってなんだ?」

「お前…天国とか信じるタイプか?」

「良いだろ…教えてくれ…」


MERってのは、第二次世界大戦に創設された連合国を中心とした研究組織のことを言うんだ。

第二次世界大戦に、日本を陥とすために、色々な新兵器を開発しようと、設立されたシベリアに位置する研究所。

しかし、第二次世界大戦が終わると同時にそのMERは不必要とされた。

でも、来る時のことを思って、MERは独自に新兵器の開発を進めた。

そして、遂にその作成した新兵器が使われるときが来た。

それが、湾岸戦争。

イラクがクウェートに侵攻した戦争だ。

その時、生物兵器として導入されたのが、この俺。

YUMという生物兵器だ。

「あ…?どういうこと…だ?」


俺は研究所で弄くり回されたんだよ。

体の至る所をいじくりまわされ、人間を超えた生物にさせられる。

それで、俺は俺自身が生きるために、何百人もの人間を殺した。

湾岸戦争でフリーの研究所として雇われたMERは、俺を湾岸戦争に派遣したんだ。

目の中に映った戦車は全部壊して、イラクは湾岸戦争では負けたが、幾つもの戦車を壊した。

それも、銃も何も使わないで素手でな。

「す、素手…だと?」

あの時の記憶は少し覚えてないが、沢山の断末魔を聞いたよ。

俺はその時、ひたすら殺しを尽くす怪物だった。

俺の湾岸戦争の功績もあって、今となってはMERはヤクザやらマフィアやらの戦力を支える重要な柱の一つだよ

「まぁ…俺らも超能力を使える薬は使ったことがある…エグい気持ち悪くなったがな…」

そんで、昔は連合国によって支えられていた研究所が、今となっては、裏社会を支えて、一人歩きしている状態だ。

「こんなんで良いか?」

「……最後に一つ、教えてくれ。青の騎士…ってのは、要するに、人智を超えた化け物ってことか?」

俺は少し間を開けて言った。

「………ああ。あいつは世界を滅ぼしかねないとんでもない化け物だ。」

「……そうか。俺が次に生き返る時には人類がまだ存在していることを願うよ」

バアン!!!!!!!


「ん…んぐぅ…っは!!!!」

夜の街を走る車の中、助手席に眠らせていたVは突如として目を覚ます。

「あ、起きたかV。」

信号が赤から青に変わり、俺はブレーキを踏んだ。

「こ、ここは…?」

Vはシートから起き上がると、俺の方向を向く。

「俺の車の中。」

「………」

再び、眠くなったのか、Vは力を抜いて、車のシートに身を預ける。

「…あなたランボルギーニなんか乗り回して…本当に学生ですか…?」

「……さあな。」

信号が赤から青へと変わると、俺はブレーキを離し、アクセルを踏んだ。

そして、高速道路へと乗り込む。

「………怪我は無い?とか言わないんですか?」

「さっき確認した限り無かったから、大丈夫だと思うけど、心に傷でも負ったか?」

「え、……はい…多分…MERの連中、ユミーさんと私の事…狙ってると思います…」

「だろうな。今後、MERの刺客が送られてくるだろうな…」

夜の高速道路。

街を照らすビル群に導かれるように、俺はランボルギーニのメーターを上げる。

「私…怖いんです…その…MERでまた、体を弄られるのが…ユミーさんは…怖くないんですか?」

「…俺は怖くないな。戦闘で、何回も傷を負ってるからな。」

「そうなんですね…」

Vは何故か残念そうな顔をするが、俺は自分の言いたいことを最後まで言おうと、口を開く。

「でも…MERの実験室にVが捕らえれることは…俺は怖い。」

「え?」

「Vと会えなくなったり、Vが苦しんだり…Vが泣いたり…俺は、Vには何もないで欲しいな…」

「そ、それって…」

「俺自身がMERに連れ去られるのは怖くないさ。でも、VがMERに連れ去られるのは、めちゃくちゃ怖い…だって、Vが苦しんでる姿なんて…見たくないからな…」

俺は窓の外を眺める。

左から右へとライトの付いたビル達が川の水のように、流れていく。

「ユミーさん…」

俺はそれからVの顔は見ていないが、多分、相当赤くなっていたと思う。

「てか、怪我がないか確認したって、それ、私の体を見たってことですか!?」

「え?うん。そうだけど?」

次の瞬間、俺は殴られた。



「それじゃあ、これからV宅に行くから…」

「待ってください!!!」

俺が、Vの家の方向へと向かおうとすると、Vは俺のハンドルを握っていた手を優しく捕まえる。

「え?」

「その…今日は…もう…遅いし…一人で眠るのも怖いから…一緒に寝ませんか?ちょうど、そこにホテルもあることですし…」

Vはすぐそこにあった、少しピンク色に染まったホテルを指差す。

「あ…え、えっとぉ…あっちのホテルはどうだ?」

俺は別の方向にある、今度はまともだと思われるホテルを指差して言った。

「わ、わかりました…」




俺は、葉月さんへの連絡や、チェックインを済ませると、すでに1時近くだったので、ホテルに着いたと同時に、寝ることにした。

「それじゃあ、おやすみ〜」

「おやすみなさい…ユミーさん…」

「………」

「………」

「あの…Vさん?」

「なんですか?」

「えっと…なんで一緒のベットに居るんですか…?」

「あえて言うのであれば、気分ですね。」

「な、なるほど…気分でVさんは俺に跨って寝ると言うことですか?」

「はい。そうです」

「な、何故?」

「だってその方が、ユミーさんを近くに感じれて良いですからね」

「な、なるほど…」

その翌日、Vはよく眠れたらしいが、俺はVの柔らかい部分が当たっていた所為で全く眠れなかった。

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