第8話 小さな巫女さんはどうやら強いらしい
「痛てててて…」
熊田芽依による、パワードブーツにより、一気に頂上付近までぶっ飛んだ俺。
多分安全装置があったおかげなのか、少し頭からの出血だけで済んだ。
これならDEAD MODEですぐに治せるだろう。
それよりも、本当にまだ残っていたとは…
山の頂上。
腐敗したような木の匂いと、微かに香る土の匂い。
山の奥から吹いてくる風は、肌に少し纏わりついたあと、麓へと向かっていく。
「と、ここに巫女さんが居るって聞いたけど…」
俺はとりあえず、神社に近づくとなるべく大きな声で、「誰か居ませんか〜」と言おうとした。
言おうとした、というのは「誰か」といった所で
バァァン!!!!!!!!!と正面から大きな銃声が鳴り響き、俺の頬の肉が切れる。
というより、焼ける。
「あ、あっぶねぇ〜」
「さて…、誰ですか。貴方」
俺は、頬の血を拭うと、目の前にしゃがみながら、シールドの付いた馬鹿でかい対物ライフルの様な銃をこちらへと向ける巫女さんの姿があった。
神社の後ろにどうやら隠れていたらしく、壁際に堂々と銃を構えていた。
後ろからは、爆発の様な銃弾の着弾音が鳴り響く。
「まぁ、答えは聞いてないですけどね。」
そう言うと巫女さんは、手に持っていた手榴弾のピンを取り、こちらへと投げてきた。
「ッき!!聞く気ねぇじゃん!!!」
手榴弾は、すぐさま破裂すると、爆発の中で散りばめられる手榴弾の破片が俺の体を貫いてく。
「ぐは!!!」
身体中が、手榴弾の破片で蜂の巣の様になってしまった。
とりあえず、一旦距離を取らなければ!!!!!
俺は腕時計から20キロのバリスティックシールドを取り出した。
「どうだ?何もないところから盾を出すなんて、俺しかできない芸当だろ?」
と息を切らしながら言う。
デッドモードに移行していた俺はちょっとずつ傷が回復していく。
そして傷が治り切る、と言うところで、正面に居た巫女さんの銃が火を吹き、バリスティックシールドごと、体を貫く。
「ぐは!!!!!」
俺はその場に倒れる前に、すぐに、山の斜面を転がり、なるべく下の方へ落ちていく。
数十m、下に転がったら、一度、足で踏み切って、転がりを止めた。
仕方ない…
「DEBT MOED フェーズ2!!」
目の色が再び赤く染まり始めると、20センチほどの腹に空いた風穴を塞ぎ始める。
「あの形状…シールドが付いてるせいで少し見えなかったが、M107CQぽかったな…そりゃあ、バリスティックシールドも貫くわ…」
バアアアアアン!!!!!!
すぐ横に聳え立っていた木が大きな音を立てて爆発し、斜面に沿って倒れる。
後ろから撃たれている!!!!
「仕方ねぇ…こうなった以上は戦闘しかないな…」
なるべくVとの約束を守るようにしていかないと。
俺は腕時計からクリスベクターを取り出す。
安全装置を解除して、マガジンを装填。
コッキングをして、準備完了。
行くか!!!!
俺は物陰を飛び出し、いくつもの木が連なる山の斜面を横方向に駆けていく。
頂上には、先ほど居た巫女さんがM107CQを持って、こちらへと銃口を向けている。
「推定距離は300mってとこか…こっから撃っても当たらねえな」
すると、頂上の巫女さんあたりがピカリと光る。
「ッつ!!!」
俺は言葉にするよりも先に、足に思いっきし力を入れて前方へと飛び出す。
次の瞬間、さっきまで俺が居たとこの地面が爆発し、土を撒き散らす。
「やば!!!」
そして、爆発を気にする暇もなく、もう1発、銃弾は音を置いて、地面に着弾する。
着弾した時の爆発による風と、その風に押されて、前からくる風を切る俺は、一か八か、頂上を起点として回っていた所から、角度を切り替え、山の頂上に向かって勢いよく駆けていく。
頂上が光ると0.3秒も経たないうちに頭の少し上を光よりも早く飛んでくる弾丸が通る。
「推定距離200m!!!!」
と、俺が少し油断した時、山のてっぺんから灯台の様に再び、光と共に弾丸が放たれた。
「ぐあ!!!!」
弾丸は俺の踏んでいた地面の近くに着弾し、地雷を踏んだ時の様に爆発して、片足を持っていった。
「ゼロイン無しかよ!!!!」
すぐさま、足を再生させると、今度は着弾音がすぐ耳元から聞こえる。
今度は左手を腕ごとごっそりと持っていかれ、左手から蛇口の水が勢いよく出ていくように大量の血が溢れる。
「くっそ!!!!」
俺は急いで、木の陰に隠れるが、弾丸は木を貫き心臓へと突き刺さる。
「ぐは!!!!」
抑えろ…抑えろ…
木が前方に倒れ、上の盾もできたことによって、少しの余裕が加わる。
抑えろ…大丈夫だ…まだいける…
『DEBT MOED、フェーズ
頭の中で機械音のような、心の空っぽな声が響いた。
まだ…まだだ…まだそのレベルじゃない…
心臓の出血が止まり、左腕もトカゲの尻尾の様に生えてくる。
俺はニヤリと口元を曲げると
「よし…お兄さんを怒らせたらどんなに怖いか…見せてやろうじゃないか!!」
と言ってみる。
俺は倒れかかっている木を持ち上げ、その場へひょいと捨てると、一気に頂上へと一直線に走っていく。
雨の様に降ってくる弾丸は、やはり、ゼロイン調整をしていないせいか、少しブレて見える。
俺は途中途中に木を挟んで、できるだけ遮蔽物の多い所を通っていく。
「推定距離100m!!!!今だ!!!!」
俺は木と木の影から弾丸を避けながら、クリスベクターの引き金を引く。
「身晒せ毎分1200発の発射速度!!!!!」
俺は1秒間ほど長押し、全ての弾を無造作に引き出す。
弾は木と木の隙間を通り抜け、山を飛び上がり、風を切り、頂上の巫女へといくつもヒットした。
その証拠に数秒は弾丸が止む。
まあ、本当に数秒だけの話だったが。
再び、ぴかりと頂上から光が放たれ、銃弾がすぐ真横の空間を貫いた。
「まあ、M107CQを立ちながら撃ってる時点で只者ではないことくらいわかってたけど…」
空を飛ぶ勢いで、足に力を入れ、地面を蹴り上げる。
足は40センチほど、地面に埋まった後、すぐに、地面の土を取り払い、体を上空へと引き剥がす。
重力に打ち勝った俺は、鳥の様に天空へと舞い上がり、銃弾を再装填して巫女さんの所へと指切りをしながら銃弾を放つ。
放った銃弾は、真っ直ぐ巫女さんの所へと向かっていき、巫女さんのM107CQの手荒に溶接されたシールドへ何発か当たった。
「しぶといですね…!!」
しかし、それだけの猛攻では弾丸を撃つことを止めることはなく、ここで一気にカタをつけるつもりなのか、M107CQの弾丸を今までにないほどの間隔で連続で放つ。
「マジかよ!!!これで決めるつもりかよ!?」
バン!!!!!!
バン!!!!!!
と激しい金属のぶつかり合う発射音と同時に放たれる弾丸を、空中で勢いよく身を捻り、空気抵抗を利用して避ける。
「おりゃあ!!!!」
そして俺は頂上に着地すると、目の前には弾丸を詰め換えて、M107CQの横についているレバーを引きコッキングをする、巫女さんの姿があった。
「そして、指を構え、引き金を引く…で、俺はその瞬間に銃弾の軌道を読み、避ければいいと!」
俺は頬の空気を掠める弾丸を目で見送りながら、弾丸を避ける。
すると、巫女さんは、銃を一度、片手で持ちながら、左手で地面に殴りつけ、地形を盛り上がらせ、塹壕の様な盾を作る。
「パワードアーム!?」
確かに見えた!!!今、うっすらとサテングローブを左手にしていた気がする!!!
俺がそんなことを考えていると、今度は巫女さんは、キラリと銀色に輝く
「あれは、M500!?」
と、次の瞬間、M500は一気に火を吹き、俺の左腕と左腕に握っていたクリスベクターを持っていく。
「まずい!!!時計が!!!」
俺は続けて、心臓に追撃を喰らい、斜面を転がっていた左腕を慌てて、掴み取る。
「くそ!!もろに喰らった!!!」
俺は左腕を、肩に押し込み、再生させると、腕時計からあるものを取り出した。
「仕方ねえ!!あれで行くか!!!」
俺はクリスベクターを腕時計の中に仕舞うと、グロック17を出した。
グロック17をコッキングすると、ガチャ!!と砂混じりの音が聞こえる。
「山鹿…あいつ、やりやがって…」
どうやらこれもそろそろ潮時みたいだな…
帰ったら新しいのを買うとするか…
「よし!!!行くか!!!」
盛り上がられた地面を縦にして、俺が落ちた方向へと銃を構える巫女さん。
どうやら獲物を狩る勢いで銃を構えているのか、だいぶ鋭い目つきをしていた。
だからなのか、ある物体が宙を舞うのを見逃さなかった。
俺が落ちた方向から手榴弾が投げられたのだ。
手榴弾は巫女さんの射撃によって撃ち落とされ、爆発する。
破片が散り、それは巫女さんの作った土の塹壕によって受け止められ、ほぼノーダメ。
意味のない攻撃となった。
まあ、攻撃としては意味は無いんだけどね。
「やっほー巫女さん。」
「ひ!?」
俺は巫女さんが集中して構えている所の後ろから、巫女さんを驚かせる。
巫女さんは慌てて、M500を俺に向けたが、そこから発砲されることは無かった。
「え、あれ?リロードしたはずなんですけど…!?」
「弾は抜いておいた。気づかなかった?後ろに居たの。」
今度は、巫女さんは先ほどまで持っていたM107CQを取り出す。
もちろん、それもマガジンは抜いておいた。
バン!!!!!!!!
薬室にある一個を除いて。
俺はその弾丸を避けると、優しく、巫女さんの方に視線を向ける。
「さてと。これで武器は全部ないないしたんじゃないか?」
「あ、あなたの目的は!?わ、私を殺すことですか…!?」
「まさか?俺はただ単にここは私有地だから出て行って欲しいって言うように言われただけ。まさか、戦闘になるだなんて思ってもいなかったよ。」
「さっきどうやって急に後ろに…?手榴弾を投げたのはあなたじゃないんですか!?」
「もちろん俺だよ?でも俺は実はインターネットに入り込める能力があってさ、手榴弾と一緒にスマホも一緒に投げたんだよね。俺はそこから出てきたわけ。どう言うことかわかるかな?」
まあ、要するに、スマホに一旦入り、インターネットを通じ、LINEやらの通信手段で他のスマホに入り、一瞬でそのスマホから外に出て、巫女さんの上空を舞っているスマホから出て瞬間移動的なことをする。
これが俺の目眩し技だ。
頑張ればスマホの中から手榴弾だって投げれたんだけど、それは攻撃的だし
一旦まずはこうやって話をするのが目的なんだ。
「それで、なんで、君は俺のことを攻撃したのかな?」
「え、えっと…それは研究所の方々だと思って…」
研究所?MERのことか?
「とりあえず、俺はその研究所の奴らとは違うと思うぞ?だからその、武器をまず置いてくれないか?俺も一応、丸腰なわけだし」
「………」
巫女さんはそっと武器を置く。
「良かった。まあ、俺は敵じゃないわけで、もうこんな不毛な争いはやめにしようぜ?弾丸の出費が痛いだけだ。」
「……仕方ないですね…」
「良かった!じゃあ、仲直りとして握手しようぜ?国の長って条約結ぶ時必ず握手するらしいしな!」
「はぁ…まあ、いいですけど…」
と、俺が握手しようと、巫女さんに近ずくと、足場が悪かったせいか、俺は地面に出ていた岩に足をつまずき
「うわあ!?」
そのまま、巫女さんを巻き込んで転んでしまう。
「痛てて…すまんかった…って、あ」
俺は起きあがろうとすると、不覚にも、俺の手はまあ、女性の中でも大変大事な方…というか多分、触ったら殴られるであろう、胸部に手が当たってしまった。
どうやら俺は巫女さんの上に乗ってしまっているらしい。
「ご、ごめんなさ…」
「ひ、ひゃあ!!!!!!」
と、言う超音波の様な叫び声と共に、俺は体の芯にえげつない振動が響き渡った。
何か拳見たいなものが当たったような感覚だ。
なんとなく新幹線が横から体当たりしてきたような感覚に近い。
意識が朦朧とする中、俺はなぜか、地面と俺の視線から離れていく使山神社が見えた。
多分、今俺は殴られて上空を飛んでいるようだ。
そういえば…あの巫女さん…武器全部外せって言ったのにパワードアームだけは脱いで無かったな…
どんだけ警戒心強いんだ…よ…
とここで俺は意識が途切れた後、なぜか巫女さんに介護されて、響き渡る痛さと共に朦朧とした状況の中、山を降り、足が地雷によって吹っ飛ばされたのは、言うまでも無かった。
あとがき
今回はな、な、な、なんと!!!!
さんぱん煎じさんとのコラボとなっております!!!
起眞市に主人公が2人も居るとこういう風なコラボレーションが出来るんですね。
この企画を開催してみてよかったと思います。
さんぱん煎じさんの方でも巫女さんの視点が書かれていると思うんで、そちらの方も見てみてください!!
明日の自分への道しるべっ - カクヨム https://kakuyomu.jp/works/16818093082429632606
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