顔が良いって誰の事?
夏休みだって部活は有る。
先輩いわく、夏休みは卒部してかららしい。
特に県代表ともなれば、なおさら夏休みなんてない。
*
日々代わり映えのしない。そんな夏休みの朝。
登校した途端、先に教室にいた男友だちが話しかけてきた。
「さっき他校の友達からメール来たんだけど、昨日のコンクールでめっちゃ可愛い子がいたらしいぜ」
ほほう
「そんなに可愛い子なら会ってみたいものだね」
「どこの学校だと思う?なんとうちの学校らしいんだ」
「それじゃ、うちの吹奏楽部の誰かがその可愛い子なんだ」
誰だろう 沙希ちゃんかな
「そいつが言うには、コンクール中みんな緊張してて顔が怖かったのに、そいつだけ終始ヘラヘラ笑ってたんだと」
・・・ん?
ヘラヘラ
・・・なんか嫌な予感がする
「そんで、その子のパートは確か最前列に左端らしい」
ふーん、ならフルートがクラリネット
あー変な冷や汗が垂れてきた。
風邪かな
そうに違いない
「その子めっちゃ可愛かったらしくて」
「うんうん、イイネー」
「で、何故かヘアスタイルが物凄くダサかったって」
「ダサいだと!そいつ連れてこい!」
「なんでお前が怒るんだ」
えーっと。
「・・・その子の名前とか知らないの?」
「わかんないって。でも写真撮れていたから送るとか言ってたんだけど。あ、メール来たわ」
「えええ」
「何でも恥ずかしくて遠くから撮ったらしくて。しかも後ろ向き。でもこの髪がとはその子しかいないからわかるはずだって」
そう言いながらスマホを素早く操作して、画像を拡大させる。
「ほら。拡大してもこれが限界みたい。演奏が終わって玄関から出てきた時の写真だって・・・あれこの髪型・・」
うわー盗撮されてたよ
そこにはもうすぐ18にもなろう女子生徒がぱっつんでニヤニヤした画像だった。
「なあ、この写真お前に似てない?」
「ニテナイヨ」
「いやこれ完全にお前だろ!この変な髪型!」
「変な言うな!コレは従姉妹のお姉さんがやってくれたんだぞ!しかもなんと無料で!」
「あーうん。無料はいいよな。で、返事はどうする?そいつオレから言うのもあれだけど、向こうの学校で一番もてるぞ」
モテる盗撮くんか
「と、とりあえずお友達からということで」
せっかく食いついたお魚は逃さないように。
ふふっ、これで彼氏いない暦年齢ともおさらばだな。
「わかった!じゃあセッティングしてくぞ」
「よろしく!」
そして俺は盗撮ヤローに会うことになった。
「どんなかっこいいやつが来るのかな♪」
「盗撮相手にノリノリって、ちょっと友達やめたくなるんだけど」
「なんとでも言え」
「それから俺ってやめろよ。ドン引きされるから」
「オッケー。あたしな。さあ、ついに彼氏いない歴年齢の俺に彼氏が出来るのかぁ」
「言ってなかったけど、そいつ女だから」
は?
「吹部だからそいつも」
・・・はい、吹部の女子率は限りなく100%でした。
「はは。ですよねー」
「そうそう、吹部だし」
「あはは」
知ってたよ、くすん。
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