顔が良いって誰の事?

夏休みだって部活は有る。

先輩いわく、夏休みは卒部してかららしい。

特に県代表ともなれば、なおさら夏休みなんてない。



日々代わり映えのしない。そんな夏休みの朝。

登校した途端、先に教室にいた男友だちが話しかけてきた。


「さっき他校の友達からメール来たんだけど、昨日のコンクールでめっちゃ可愛い子がいたらしいぜ」


ほほう


「そんなに可愛い子なら会ってみたいものだね」


「どこの学校だと思う?なんとうちの学校らしいんだ」


「それじゃ、うちの吹奏楽部の誰かがその可愛い子なんだ」


誰だろう 沙希ちゃんかな


「そいつが言うには、コンクール中みんな緊張してて顔が怖かったのに、そいつだけ終始ヘラヘラ笑ってたんだと」


・・・ん?

ヘラヘラ


・・・なんか嫌な予感がする


「そんで、その子のパートは確か最前列に左端らしい」


ふーん、ならフルートがクラリネット


あー変な冷や汗が垂れてきた。

風邪かな


そうに違いない


「その子めっちゃ可愛かったらしくて」


「うんうん、イイネー」


「で、何故かヘアスタイルが物凄くダサかったって」


「ダサいだと!そいつ連れてこい!」


「なんでお前が怒るんだ」


えーっと。


「・・・その子の名前とか知らないの?」


「わかんないって。でも写真撮れていたから送るとか言ってたんだけど。あ、メール来たわ」


「えええ」


「何でも恥ずかしくて遠くから撮ったらしくて。しかも後ろ向き。でもこの髪がとはその子しかいないからわかるはずだって」


そう言いながらスマホを素早く操作して、画像を拡大させる。


「ほら。拡大してもこれが限界みたい。演奏が終わって玄関から出てきた時の写真だって・・・あれこの髪型・・」


うわー盗撮されてたよ

そこにはもうすぐ18にもなろう女子生徒がぱっつんでニヤニヤした画像だった。


「なあ、この写真お前に似てない?」


「ニテナイヨ」


「いやこれ完全にお前だろ!この変な髪型!」


「変な言うな!コレは従姉妹のお姉さんがやってくれたんだぞ!しかもなんと無料で!」


「あーうん。無料はいいよな。で、返事はどうする?そいつオレから言うのもあれだけど、向こうの学校で一番もてるぞ」


モテる盗撮くんか


「と、とりあえずお友達からということで」


せっかく食いついたお魚は逃さないように。

ふふっ、これで彼氏いない暦年齢ともおさらばだな。


「わかった!じゃあセッティングしてくぞ」


「よろしく!」


そして俺は盗撮ヤローに会うことになった。


「どんなかっこいいやつが来るのかな♪」


「盗撮相手にノリノリって、ちょっと友達やめたくなるんだけど」


「なんとでも言え」


「それから俺ってやめろよ。ドン引きされるから」


「オッケー。あたしな。さあ、ついに彼氏いない歴年齢の俺に彼氏が出来るのかぁ」


「言ってなかったけど、そいつ女だから」


は?

「吹部だからそいつも」


・・・はい、吹部の女子率は限りなく100%でした。


「はは。ですよねー」


「そうそう、吹部だし」


「あはは」


知ってたよ、くすん。



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