前世で吹奏楽部だった俺は、TSしてもやっぱり吹部だった。日常は変わらず淡々と過ぎてく

水都suito5656

朝から忙しすぎて

「慌てないように急げよ!」


いや先生そんな無茶な!


駐車場に立つ顧問に心の中で返事をしながら、車から荷物を下ろし集合場所へと急いだ。


「あ、来た!」


「遅いよ!」


既に集合してるとも皐月さつきに駆け寄ると、軽く頭を下げた。

いつから待ってるんだよ君達。汗だくじゃない。


「ねぇ、なんでこんなに早いの?」


まだ集合まで30分以上あるよね


「いやーなんだか落ち着かなくってさ」


うん、それは同感。


「だから見て、ほらココ」


あー


「あるねー」


うっすらと目の下にくまが。


それを嬉しそうに話す彼女たちを見てると、自然と笑みがこぼれる。


「・・・もう」


中学生になってから事ある度に


”子供じゃないんだよ“


そう言ってたよね。


「まだまだ子供だよね」


笑いながらそう言った。


「あんたに言われるとはね」


皐月さつきは私の頭を軽くぽんぽんと叩く。


「今いくつ?」


んー


「たぶん140は有るよ」


「ホントかなあ」


「あ、あたし146あるよ!」


「いやそこで張り合わなくても」


智は納得出来ないなーと首をひねる。

そんなたわいも無い事を話してると、少し落ち着いてきた。


やっぱ緊張してたんだ。


辺りがガヤガヤと人の声よりも楽器の音がノイズとなって流れてる。


「この緊張感良いよね」


「そうだね」


「うん、良いね」



それから暫くして集合場所に顧問が来た。

注意事項をしっかり頭に叩き込む。


音を出して良い場所

駄目な場所


そうは言えど、頭の中では音は出しっぱなしだ。

絶えず音が流れてる。

楽器を持つと、自然と指が音符を追う。


「さあ、行きましょうか」

「はい!」


そうして私達の長い夏が始まった。

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