【終章】 廃城の黙示録
「人殺し…?」
アルマはぽかーんとしている。
「メドゥシャーダを、返せ…」
「え…?」
ペルラは顔を上げ、アルマを睨みつける。
「返せよ、全部…!」
アルマは小さな短剣を取り出し警戒した。
皮肉にも、これが疑惑から確信へと変わるきっかけとなってしまった。
…その短剣に刻まれていたのは、あの時と同じランサー家の紋章。
「返せよ…!僕の————」
ペルラがそう叫ぶと、その叫びに呼応するように巨大なクラゲが現れ、アルマに襲いかかった。
「わぁっ!?」
アルマは短剣を使って、襲いくるクラゲを切りつける。
「ねぇ、ペルラ…?何があったの?どうしちゃったの…!?」
ペルラは何も言わず、何度も何度もクラゲをけしかける。しかし、猛攻虚しくすべてアルマに切りつけられてしまった。
「……っ」
ペルラはとうとう膝から崩れ落ち、目には涙を浮かべている。
「ねぇ、ペルラ…?」
ペルラは黙ったまま倒れ込んだ。
「ねぇ!ペルラってば!!」
アルマはぐったりしているペルラを抱き起こす。
「うぁ…っ痛い…!」
よく見るとペルラは全身傷だらけで、まるで誰かに切りつけられたかのよう…。
「アルマ…?」
ペルラは弱々しく、震えた声で言う。
「ごめん…僕………」
「ねぇ…さっきはどうしちゃったの?ペルラ———」
「僕は…メドゥシャーダの、生き残り」
ペルラは全て白状した。
自分はメドゥシャーダの王族だったこと、記憶を失う前、自分は一度ボルデカーラ人に殺されていたこと、感情と魔法の暴走のこと………
「僕はこの国をめちゃくちゃにしたボルデカーラの人が、許せないんだ。」
突然、アルマを激しい痛みが襲った。
視界が揺らぎ、呼吸が苦しくなる。
「え………?」
ペルラは、うすら笑いを浮かべて言った。
「クラゲの毒。」
アルマは抱えていたペルラをそっと下ろす。
僕が、ボルデカーラの人間だから…
しかも、あの剣を作ったのは…僕の———
朦朧とする意識の中、必死にかける言葉を探した。
「ペルラ…様…」
結局、名を呼ぶことしかできなかった。
アルマは倒れこみ、ペルラの方へ目を向ける。
「…ん」
ペルラも、ぐったりと倒れている。
「ごめん………」
ペルラはそう言うと、一言も話さなくなった。
…「ごめんね」を言いたいのは、僕の方なのに。
メドゥシャーダを、ペルラの家族を、ペルラを、傷つけた。
ボルデカーラが許せない…きっとそれは、ペルラの本心だ。
王として、人として………
自分の故郷であるメドゥシャーダをぐちゃぐちゃにされた上、2回もボルデカーラ人に殺されたペルラは、一体どれほどの苦痛を感じたのだろう。
アルマは最後の力を振り絞って立ち上がり、「メドゥシャーダ王国誌」の最終ページを開いた。
最後の王であるペルラの名を、載せよう——
『最後の王、ペルラ・メドゥーサ』
書き終わってアルマは倒れ、ペルラの元へと向かった。
廃城の黙示録 はるりぃ*。+ @harury_0315
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