【四章】 生死の回廊

暗い廊下を進んでいくと、地下に繋がる階段を見つけた。

この階段は確か、牢獄に繋がっていたはず…。

王国誌の最後にあった「反乱」が滅亡した原因だとしたら、きっと「反逆罪」で囚われた人々が大勢いるはず…

そんなことを考えながら階段を降りると、異様な不気味さがふたりの行手を阻んだ。

「ペルラ…ここ…暗すぎない…?」

「大丈夫だよ、ほら…」

そう言って左手を挙げ、指先に魔法の光を灯す。

照らし出された無数に広がる牢獄と、その下には数多の血溜まりがある。

「…っ!!!」

アルマはペルラの後ろに隠れ、そっと様子を伺う。

「アルマ……手でも、繋ぐか…?」


アルマは置いてあったランタンに火をつけて右手に持ち、反対の手でペルラの手をぎゅっと強く握る。

恐る恐る進んだ先に、「処刑室」と書かれた部屋の扉がぽつんとあった。

「この扉…って、まさか…」

ペルラに、この扉を開ける勇気はなかった。

「ペルラ?どうかしたの?」

「………」

動かないペルラを不思議に思いながらアルマは扉に手をかけた。

キィと音を立てながら扉が開く。

そこに広がった景色を見て、ペルラは確信した。

「…やっぱり」


******


「うぁっ…!」


気絶した⬛︎⬛︎⬛︎は反⬛︎⬛︎に乱暴に腕を掴まれ、⬛︎刑⬛︎へと連れて行かれた。


やっと意識が戻って目を開けると、そこは⬛︎⬛︎室。


「…王族だからって⬛︎⬛︎しやがって———」

「俺たち⬛︎⬛︎軍の同胞を何処にやっ———」

「やっとだ……貴様⬛︎ルラ……お前が最後の———」


耳を塞ぎたくなるような罵声ばかり。

「…やめろ、僕はそんなつもりじゃな——」

「うるさい!」

そう言って目の前に突きつけられたのは、鋭い剣。

ボルデカーラの有名な鍛治職人家である「ランサー家」の紋章が刀身に刻まれている。

「え…ボルデカーラの…?なぜ…?」

「なぜって…そりゃあ、メドゥシャーダ王国を⬛︎⬛︎⬛︎る為ですよ。」

「あとは言わなくてもお分かりでしょう…ねぇ、“⬛︎ルラ様”?」

後ろ手に縛られ拘束されているペ⬛︎⬛︎は、抵抗することができない。

「うっ…………かはっ…」

血の赤が目に飛び込んで、初めて悟った「死」。

体温がじんわりと溢れ出て、ぽとりと地面に落ちていく。

「………」


…痛みと、死の怖さと、絶望。

恐怖の感情が、⬛︎⬛︎⬛︎を襲った———


******


ここはきっと、僕が目覚めた場所だ。

そしてきっとここは、僕が⬛︎された場所———

ゾッとするような恐怖が、ペルラを襲う。


「アルマ…」

アルマはペルラの尋常じゃない汗の量を見てなにかを察したのか、「うん…」と小さく頷いた。


地下を後にしたペルラは、そっと自分の首後ろに手を当てる。

…確かにある、一直線の…傷跡。

「…っ」


僕は、一度死にかけたというのか?

それにあの剣に刻まれていた紋章…、アルマのつけているアクセサリーと同じ…?


ボルデカーラの戦争に、ボルデカーラの鍛治師?

妙に偶然じゃない気がしてならない。


信じたくなかった。

アルマも、僕を殺そうとしたんじゃ…?

怖がってた割には処刑室の扉に迷いなく手をかけたのも、手をぎゅっと強く握っていたのも、僕が出てきた時に待ってたかのようにそこにいたのも———

どれも、辻褄が合ってしまう。


「ねぇアルマ———」

「…どうしたの?」


メドゥシャーダを破滅に導いた。

「反乱軍」を率いて、僕らをみんな殺した。

僕らは騙されて、罪のない人々を———


アルマにも、ボルデカーラの血が流れてる。


「…人殺し」

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