【二章】 曖昧な記憶

「ねぇ…記憶喪失ならさ、この建物…調べてみようよ!」

アルマは立ち上がり、さっきペルラが出てきた石扉を指差す。

「なんか光ってるし、まるで僕らを呼んでるみたいじゃん!」

ペルラは立ち上がり、再び扉に手を当てる。

「———」

すると、扉にぼんやりと光る何かの模様が浮かびあがった。

それがペルラの身体に施されているものと同じ模様であることに気づくのに、時間はそれほどかからなかった。

「これは…?」

ペルラは自分の腕に目線を落とした。

腕の模様が、ぼんやり光っている…。

「え?え…!?」

アルマは不思議そうに、石扉と僕を見ていた。

「アルマが言ったようにさ…、僕はメドゥシャーダ人…?なのかもな…」

さっき覚えてないと言い切ったくせに、とんでもなく矛盾している…

しかしアルマはあまり気にしていないようで、ひとり盛り上がっていた。

「え!じゃあこれが、メドゥシャーダの魔法…!?」

しばらく黙ってから、ペルラは静かに頷いた。

「…たぶんね」


えぇー!すごーい!とはしゃぐアルマを制しながら、「そうでもない」と呟く。

「そろそろ、入ろっか…」

ペルラとアルマは、静かに中に入った。

先程まで照りつけるような暑さだったのに今度は少し涼しくて、どこか入ってはいけないような雰囲気さえ感じられる。

だけど…なぜこんなにも懐かしさが………?


「ねぇ見て!あの部屋!」

アルマが指差した先には、本棚がずらりと並んでいる大広間があった。


「あそこは…確か、王立図書館…」

貸し出し受付のカウンターを見たペルラは、無意識に呟く。


「あれ…エスター…?いないのか…?」

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