第7話 アポカリプス
…………長かったセレナの独り舞台が終わった。本当に長かった。
俺は仁王立ちで一部始終を鑑賞していた。鑑賞していることしかできなかった……。謎の敗北感があるんですが?
「はぁ~~っ♡ ……いかがでしたでしょうか♡」
堪能したと言いたげな満足顔で俺にニコリと笑いかける美少女。先ほどまでたっぷり楽しんでいなければ見惚れてしまっていただろう。
「よ、よかったんじゃないか?」
「汗顔の至りですぅ♡」
てれてれと頬に手を添えながら清楚に笑った。そしてセレナは立ち上がると、スカートの裾をぱさりと直し、流れるような動作で自然に跪いた。
「改めまして、セレナと申します。矮小で愚鈍なわたくしですが、主の下僕として誠心誠意、真摯にお仕えして参りますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します♡ ……そ、それといつでも催しましたらおっしゃってくださいね?」
「お、おう……」
目の中にハートマークが見えそうなくらいのねっとりとした視線で俺を上目遣いで見ながら微笑むと、俺の腰巻きを持ち上げている息子を見ながら何か言いたそうな顔をしている。そう言えば俺、原始人スタイルだったね。
「セレナさんを捕えていたのはファシルース教の男だろう?」
「はい。その通りです。お言葉ですが主よ、私のことはどうぞお前やゴミ、雌豚などお気軽にお呼びくださいますようにお願い致しますぅ♡」
「あっ、はい……」
媚びるようにそう言うセレナの視線は俺の股間に向いていたのだった。
◇────────────────◇
それからセレナに現状の説明をして、これからこの洞窟を出ることを話した。
セレナは俺の……というかヴァイスラウプの力によって、やはり使徒というか眷属のようなものになっているらしい。これからは今までのレオニウス教の教義を捨て、俺に同行したいとのことだった。
そう言えばセレナを眷属にしたことで新たなスキルを1つ得られた。
それは≪生命の魔法1≫。これは周囲の土地を浄化する魔法の≪浄化≫とアンデッドや悪魔を祓う≪祓魔≫を使えるようになるスキルだ。
うーん…両方とも微妙な魔法だ。生命の魔法はレベル2からが本番みたいなところあったもんな。
DOTVでは魔法スキル1つにつき、使える魔法は基本的には2種類しかなかった。
≪浄化≫は悪霊、死霊、アンデッドなどなどに汚染された土地を浄化する魔法だ。DOTVではそれらに汚染された土地からは確率で不浄な者たちが発生するようになっていた。
≪祓魔≫は先ほど述べた不浄な者たちを祓うための魔法だ。それほど威力のある魔法ではなく、複数人で行使しないとあまり意味がないような魔法だった。二人で使えば低級のアンデッド程度なら倒せるかもしれないが。
来た道を戻りおっさんのドロップアイテムの入った袋を回収するとそれを背負う。荷物を持っても俺が上半身裸のままなので、セレナが荷物を持つと言い出したり、私も服を脱ぐと騒ぎ出すなどの些細なトラブルはあったものの、俺たちは無事に洞窟を出口に到着した。
洞窟を抜けるとそこは……俺たちは抜けられなかった。
そこには出口らしき穴はあるものの、その先が真っ暗で何も見えなかった。しかもその穴は何やら渦巻いており、いかにもワープします! と言う見た目をしている。
不思議と危険だとは感じなかった。しかしどこに繋がっているかもわからない穴に入るのは
「どうしたものかな」
「主の御心のままに」
何気なく呟いた俺の独り言にセレナが反応する。眷属となったセレナは、完全なイエスマンになってしまった。
俺が腕を組んで悩んでいると、ゴゴゴと地鳴りがして、震度3くらいの地震が起きた。日本で慣れている俺は静かに揺れが収まるのを待っていたが、セレナは違ったようだ。
「キャアッ!」
セレナは可愛らしい悲鳴を上げながら、俺の腕を掴んだ。そのひんやりとした手の感触に驚いていると、俺の頭の中に声が響いた。
『破滅度が100になりました。アポカリプスが世界を襲い、生命の大半が死滅することでしょう。世界は地獄と化します』
頭に響く無機質な声。
俺はセレナの腕を引き、穴に飛び込んだ。
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