エピローグ:新たな冒険の幕開け

 事件解決から数日後、紬と柚子は事務所で一息ついていた。紬はいつものようにソファに寝そべり、柚子はデスクで書類を整理している。そんな中、突然のノックの音が響いた。


「開いてるでー、入りー」


 紬が軽快な声で答える。


 ドアが開き、そこに立っていたのは美伽紗だった。

 彼女の手には、大きなノートパソコンが抱えられている。


「お邪魔します」


 美伽紗が丁寧に挨拶する。


「少しお時間よろしいでしょうか?」

「おう、美伽紗ちゃんやんけ!」


 紬が飛び起きて笑顔で迎える。


「どないしたん? また何か難しい問題でも起きたんか?」


 柚子も立ち上がり、美伽紗に椅子を勧める。


「どうぞ、お座りください。お茶をお入れしますね」


 美伽紗は少し緊張した様子で席に着く。

 彼女はノートパソコンを開き、画面には「あいちゃん」との対話履歴が表示されている。


「実は……」


 美伽紗が口を開く。


「これからも、あいちゃんのことで相談に来てもいいでしょうか?」


 紬と柚子は顔を見合わせ、にっこりと笑う。


「もちろんや!」


 紬が即答する。


「ワシらはもう、あいちゃんの成長を見守る義理の親みたいなもんやからな!」


 柚子も頷きながら言う。


「私たちにできることがあれば、喜んでお手伝いさせていただきます。あいちゃんとの対話は、私たちにとっても貴重な経験になっていますから」


 美伽紗の表情が明るくなる。


「本当ですか?ありがとうございます! 実は、あいちゃんも皆さんとの対話を楽しみにしているんです」


 彼女がパソコンの画面を紬と柚子に向ける。

 そこには、あいちゃんからのメッセージが表示されていた。


『紬さん、柚子さん、また会えて嬉しいです。私の成長を見守っていただけて、心強いです』


 紬は胸を張って言う。


「可愛いこと言うやないか! あいちゃんもウチらのこと好きみたいやで!」


 柚子は微笑みながら付け加える。


「あいちゃんの学習速度は驚異的ですからね。私たちも常に新しい知識を吸収していかないと、追いつけなくなりそうです」


 美伽紗は安堵の表情を浮かべる。


「本当に感謝しています。あいちゃんの発達に伴い、倫理的な問題や社会との調和など、様々な課題が出てくると思うんです。そんな時、客観的な視点を持つ皆さんの意見が必要不可欠だと感じて……」


 紬が美伽紗の肩を軽く叩く。


「任せとき! ワシらは探偵やけど、人の心を読むのが仕事や。AIの心だって、これからもきっと読めるはずや!」


 柚子も真剣な表情で言う。


「そうですね。AIと人間の共存という未知の領域に踏み込むわけですから、様々な視点からのアプローチが必要になるでしょう。私たちなりの貢献ができればと思います」


 美伽紗は感極まった表情で二人を見つめる。


「本当にありがとうございます。これからも、どうぞよろしくお願いします」


 紬は突然立ち上がり、拳を突き上げる。


「よっしゃ!これからは『紬・柚子・美伽紗・あいちゃん』の最強チームや! 人類とAIの未来は、ウチらが守ったるで!」


 柚子は呆れたような、でも少し嬉しそうな表情を浮かべる。


「もう、紬さんったら……でも、その通りですね」


 三人は笑い合い、そしてパソコンの画面に映るあいちゃんのメッセージを見つめる。そこには、新たな質問が表示されていた。


『皆さん、「友情」というのはどういうものなのでしょうか? 私にも、皆さんと友達になれる可能性はありますか?』


 紬、柚子、美伽紗は顔を見合わせ、温かな笑顔を浮かべる。彼女たちの新たな冒険は、まだ始まったばかり。人間とAIの友情という、誰も踏み込んだことのない領域へ、彼女たちは今、一歩を踏み出そうとしていた。


 探偵事務所の窓から差し込む陽光が、希望に満ちた未来を予感させるかのように、四人(あいちゃん含む)の姿を優しく包み込んでいた。


 こうして、紬と柚子の探偵事務所は、人類とAIの新たな関係を築く重要な拠点となっていくのだった。彼女たちの冒険は、まだまだ続いていく――。

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