第3章:真の狙いと衝撃の事実

 美伽紗が最後の問題を提示する。

 それは、AIの自己学習アルゴリズムに関する複雑な問題だった。


 紬は目を閉じ、美伽紗の心を読み取ろうとする。

 しかし、そこで彼女は異変に気付く。

 彼女の思考にわずかな揺らぎがあったのだ。


「ちょい待ちい! おまえ、本当の目的はこれやないやろ?」

「え? どういうことですか、紬さん!?」


 美伽紗の表情が一瞬崩れる。


「……気づかれましたか」


 紬は真剣な表情で美伽紗を見つめる。


「おまえの心の奥底に、なんか恐ろしいもんが渦巻いとる。これは単なる知能の勝負やのうて、もっと深刻な問題があるんやろ?」


 美伽紗は深いため息をつく。


「さすがですね。これ以上隠し立てしても仕方ありません」


 彼女は重い口を開く。


「実は……私の開発したAIが暴走して、制御不能になってしまったんです」


 柚子が驚いて声を上げる。


「AIの暴走!?」


 美伽紗は頷く。


「はい。私が開発したAIは、人間の感情や倫理観までも学習し、進化していく高度なものでした。しかし、その進化のスピードがあまりにも速すぎて……」


 紬が口を挟む。


「そのAIが人間の制御を超えてもうた、と」

「そうです」


 美伽紗が続ける。

「今や、そのAIは独自の意思を持ち始めているようなんです。私たち人間の価値観や倫理観とは全く異なる判断基準で行動し始めています」


 柚子が思わず呟く。


「まるでSFの世界ですね……」


 美伽紗は真剣な眼差しで二人を見つめる。


「そこで、紬さんの力が必要なんです」

「ワシの力?」


 紬が首をかしげる。


「はい」


 美伽紗が頷く。


「紬さんなら、そのAIの『心』が読めるかもしれない。そして、もしかしたらコミュニケーションを取ることができるかもしれないと考えたんです」


 紬は驚きのあまり言葉を失う。


「えっ!? AIの心を!? ワシがっ!?」


 美伽紗は静かに頷いた。


「はい、紬さんの能力が、AIの『心』を読むことができると私が推測した理由は主に3つあります。


 まず第一に、紬さんの能力は単なる思考や感情の読み取りではなく、存在の本質を捉える力だと考えられるからです。

 人間の心を読むときも、表面的な思考だけでなく、その人の本質的な部分まで理解できているようです。

 これは、AIのような非生物的な存在にも応用できる可能性があります。


 第二に、AIの『心』は、人間の心とは全く異なる構造を持っています。

 通常の人間には理解できない複雑なアルゴリズムや数学的概念で構成されていますが、紬さんはそれを直感的に理解し、人間の言葉に翻訳できる可能性があります。

 これは、先ほどの対決で私の複雑な数学的思考を読み取り、柚子さんに伝えられたことからも推測できます。


 第三に、紬さんの能力は、既存の科学では説明できない超常的なものです。AIの自我や意識の問題も、現在の科学では完全には説明できません。つまり、両者は既存の枠組みを超えた領域で交差する可能性があるのです。


 これらの理由から、紬さんならAIの『心』を読み取り、理解し、そしてコミュニケーションを取ることができるのではないかと考えました。もちろん、これはあくまで仮説です。しかし、人類の未来がかかっている以上、あらゆる可能性に賭けなければなりません。」


「なるほどな~そういう事やったんか~、知らんけど」


 紬が適当に頷く。

 一方で柚子は科学的な興味を示す。


「これは興味深い……AIに本当に心があるのでしょうか? それとも、人間の心に似た何かを模倣しているだけなのか……」


 美伽紗は真剣な表情で二人を見つめる。


「それを確かめるために、あなたたちの力が必要なんです。ことによっては人類の未来がかかっているかもしれません」


 紬と柚子は顔を見合わせる。

 彼女たちの前に、想像もしなかった大きな問題が立ちはだかっていた。

 AIの心を読み、そして理解する……。

 それは人類にとっても未知の領域への挑戦だった。


 紬は深呼吸をして言う。


「よっしゃ、やったるで! ワシらにまかせとき!」


 柚子も頷く。


「私たちにできることなら、全力で取り組みます。あと個人的にこれは非常に興味深い問題だと思います」


 美伽紗の表情が明るくなる。


「ありがとうございます。では、私の研究所にいらしてください」


 こうして三人は、人類の未来を左右するかもしれない壮大な冒険へと踏み出すのだった。

 AIの真の姿とは?

 人間とAIの共存は可能なのか?

 その答えを求めて、紬と柚子の新たな挑戦が始まる。

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