第5章:真相への接近

 早朝の職員室。

 紬と柚子は、昨夜の出来事を振り返りながら、これまでに集めた証拠を突き合わせていた。


「ほな、整理しよか」


 紬が言う。


「理事長の三島が怪奇現象の黒幕。でも、なんでそんなことしとったんかが問題や」


 柚子はメモを取りながら答える。


「理事長の話によると、学校に隠された"秘密の財宝"を守るためだそうです。でも、その財宝の正体については言葉を濁していましたね」


「ふむ……」


 紬は煙草に火をつけようとしたが、柚子にあっさり取り上げられる。


「紬さん! 学校内は禁煙です!」

「へえへえ……」


 紬は不満そうな表情を浮かべる。


「ま、でも理事長の証言もとれたし、やっと『証拠』が揃うたな。これで case closed やろ?」


 英語教師らしく無駄に発音良く紬が言う。

 柚子は首を振る。


「いいえ、まだです。『財宝』の正体を突き止めないと」

「えー。理事長がげろったんやからもうええやないか」


 紬はだるそうに椅子に寄りかかる。

 そこへ、生徒会長の綾乃がやってきた。


「先生、佐々峰さん。大変です!」


「どないしたん?」


 紬が尋ねる。


「理事長先生が……姿を消したんです!」


 紬と柚子は驚いた表情を見せる。

 自首すると言っていたので見逃してやった理事長が逃亡したのだ。


「チッ、あの古だぬき!」


 紬が立ち上がる。


(心の声では完全に自首するって言うてたけどな……ワシをたばかるとはええ度胸や!)


 柚子も急いで荷物をまとめる。


「綾乃さん、他に何か情報は?」


 綾乃は少し躊躇してから答えた。


「実は……私、理事長先生が最後に向かった場所を知っています」


「ほう?」


 紬が興味深そうに綾乃を見る。


「どこや?」

「学園の裏山にある、古い神社です。でも、そこは……」

「なんや?」

「伝説では、学園の呪いの源だと言われているんです」


 紬はニヤリと笑う。


「ほう、最後の最後で面白うなってきたわ」


 柚子は心配そうな表情を浮かべる。


「紬さん、危険です」

「大丈夫や」


 紬は自信満々に答える。


「ワシらなら、どんな呪いでも解けるって」


 綾乃は真剣な表情で二人を見つめる。


「私も一緒に行きます」


 紬は少し考えてから頷いた。


「ええよ。けど危なくなったらすぐ逃げるんやで」


 三人は急いで裏山へと向かう。

 古びた鳥居をくぐり、石段を上っていくと、荒れ果てた神社が見えてきた。


「お?」


 紬が立ち止まる。


「おったで!」


 神社の境内に、一人の人影が。振り返ったその顔は……


「古だぬき!」


 三島だった。彼女の手には、古びた巻物が握られている。


「やはりいらっしゃいましたか……」


 三島の声が震える。


「でも、ご安心ください。わたくしは最後の祈りを捧げにきただけです……逃げるつもりなど毛頭ありませんから……」


 紬は一歩前に出る。


「もう観念せえよ。こっちは全部わかっとんねんから」


 三島は苦笑いを浮かべる。


「そうですね……もう逃げられません」


 彼女はゆっくりと巻物を開く。


「これが……聖マリア女学院の真の姿です」


 紬、柚子、綾乃の三人は、その巻物に描かれた衝撃の真実を目の当たりにする。学園の秘密、そして"呪い"の正体が、今まさに明らかになろうとしていた。


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