第5話


 プラネットアースの人類世界に、謎の「不確定要素」、一種の宿痾のごとき”邪悪な組織”が蔓延はびこっていることは寧ろ「公然の秘密」で、人類の未来や現状を憂える善良でまともな人々はこのことに頭を悩ませていた。


 光と影、表と裏、陰と陽。白と黒、善と悪。

 物事の二面性、二律背反という原理は、どうしようもない本来の運命…「摂理」だったが、そのせめぎあいにも、いずれ終止符が打たれる時が来る。


 それが「ミネルヴァのふくろうは夕暮れに飛ぶ」と箴言を遺した愛知学者の思想の根幹だった。


 そうした弁証法的な統一、止揚アウフヘーベンは、スタティックな知性の産物というより、絶対的な”力”、戦いに勝つ、強力な”強さ”、ダイナミックなポジティヴなベクトルなのだ…


 その、未曽有の”金剛力”の化身。つまり”力と強さと正義”の権化ごんげ。すべての邪悪を凌駕するスーパーアストロン。


 何の前触れもなしに、”それ”は降臨した。

 不意に出現して、たちまち、地球全体ににその威容を知らしめた。

 

 ”それ”は一目見て、”絶対神”としか思えない、絶大な説得力、潜在力を有する外観だったのだ。

 


 

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掌編・『強さ=力』 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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