逆転世界へ


我ながら良い妹を持ったもんだ。

そんで旧俺は最低だった。何やってんだもう一人の俺。


女の子に見た目ディスは最悪だろ。小学生でも知ってんぞ。

この脳タリン野郎(俺)。


……ただ、女の子の携帯を借りるってどうなの? そもそも人の携帯だぞ?

そう思ったけど……家族も大分俺の事心配してたっぽいしな。



「なんとなく掴めてきた」



やっぱりこの世界――“逆転”してる。


ナースさんっぽい役割の人は大体男性だし。

可愛いって言ったらあかりが機嫌悪くなるし。

父さんはなんか女性っぽいし。

母さんはなんか男っぽいし。


なにより――男が主体でやってたスポーツが全部消えてる。



「……外、どうなってんだろうな」



純粋な疑問だ。

ある意味コレも異世界だろう、興味が湧くのは当然である。

そうである。多分。


気を紛らわしたいだけか。

そのまま遥か遠くまで――なんて、やってやろうと思ったが流石にやめた。

あかりが居るからね。



「財布もある、中身もオッケー、IKOKAもあるな」



ってわけで、パラレルワールド散歩と行きますか!



友達とよく遊ぶ場所は、大体家から何駅か離れたなんちゃって都会だ。

ゲーセンに映画、スポーツ施設などなど。遊ぶ場所っていったらここね。


ってわけで、in電車。



「……地名とかは一緒か」



通りがかる駅、その全ては前の世界のまま。

ちなみに財布に入ってた生徒手帳によれば【月ヶ丘高校一年 佐藤空】……高校も一緒である。


顔写真、ドヤ顔で写ってた。なんだお前ぶん殴るぞ(俺)。



――「ひーくん、ジュースいる?」「ちょっと、ひーくん嫌がってるでしょ」「あっ椅子空いたよひーくん」


「皆ありがとう♪」――



「……」



そして車内。

なにやら、身長の小さ目な男性を囲う様に居る女の子数名。


大学生だろうか?

気遣う様に、というか女の子同士で争い合ってる様にも見える。

同時に男を周囲から守っている様にも。


何か既視感あるんだよ。

まるで、性別逆転したオタサーの姫みたいな。

大学生じゃないから、ネットの知識だけどさ。


他の乗客は普通に男女同じぐらいの比率だからか、余計に目立っている。



《次は●×駅、●×駅――》



「!」



奇妙な光景を横目に見物していると、どうやら目的の駅に着いた。

うーん、暇にさせてくれないね!





「……やっぱ逆だな」



通行人を観察がてら、ゲームセンターまで。

服とか見てたら分かるんだけど……シンプル、かつシックでカッコいい感じの服は女の子が。


白とかピンクとか。なんなら髪留めにアクセサリー。可愛い系の服装は、男が多い。


ポイントは、下手な男装に女装とは違う事。


“似合っている”んだ。

そりゃ最初違和感はあったけどさ。

男でいうと、前の世界で言う“小動物”系男子の服装みたいな? 

ああいうのに限って性欲バカ強そう(偏見)。



「……は?」



そしてゲーセン。

なんと、プリクラにて――



《女性客のみの入場は遠慮しております》



うん、このゲーセン大丈夫?

メイン客だろ――なんて思ったけど、入っていく客は団体の男ばっかり。

というか、プリクラの機械のイラスト全部男じゃねーか。可愛い系イケメンの。



「これも“逆”ね。頭おかしくなりそ……」



プリクラなんてただの写真(暴論)。

とまでは言わないが、同じワンコインで遊ぶなら――



「あ。あった」



ゲーセン歩いて三千里。

嘘、大体歩いて三分間。


でもそれぐらいの時間が掛かった。

なんたって、辺りは知らない光景ばかりだったから。



クレーンゲーム。

バニー着たイケメン(←は?)のフィギュアに、ひたすら連コおばさん。


パンチングマシーン。

ヤバイ筋肉で、999をたたき出す女子プロレスラー(だよな?)。そして周囲、それを見て顔を紅く染める男達。異様である。



そして、俺の目的地――格闘ゲームエリア。



「……マジかよ」



ロボット系も2D系も、ほぼ全て女の子で埋まっている。や、やりにくい!!


何ココ? 実は美味しいパンケーキが出てくんの?



「まあ良いか……」



部活は無いが、部活仲間とやった格ゲー技術はまだ生きてる。

コントローラー逆とかないよね。なんだそれ。



「――うわっ。なんでアイツが」「い、行こ」



で。

多分同世代っぽい二人組の女子が、俺を見るやいなや筐体から逃げ出した。



「……(泣きそう)」



もう帰りたいけど、このまま立ち去れば何しに来たのか分からない。

彼女達が退いた筐体の格ゲーに座り、コインを入れる。



「これは変わらないんだな……」



馴染みのあるアーケードコントローラー。

逆転した世界の中でも、“そのまま”のモノ。

今まで何気なく触っていたものが、今は何だか愛おしい。


ただ、これだけで――ここに来て良かったと思う。




《キャラクターを選択してください》




ま、キャラクターは“逆”なんだけどな!


ああもうお前で良いや。

ハイレグ金髪イケメン、君に決めた!!






▲作者あとがき

長くなったので分割します。

ので、夜頃にもう一話投稿します。

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