逆転世界へ
我ながら良い妹を持ったもんだ。
そんで旧俺は最低だった。何やってんだもう一人の俺。
女の子に見た目ディスは最悪だろ。小学生でも知ってんぞ。
この脳タリン野郎(俺)。
……ただ、女の子の携帯を借りるってどうなの? そもそも人の携帯だぞ?
そう思ったけど……家族も大分俺の事心配してたっぽいしな。
「なんとなく掴めてきた」
やっぱりこの世界――“逆転”してる。
ナースさんっぽい役割の人は大体男性だし。
可愛いって言ったらあかりが機嫌悪くなるし。
父さんはなんか女性っぽいし。
母さんはなんか男っぽいし。
なにより――男が主体でやってたスポーツが全部消えてる。
「……外、どうなってんだろうな」
純粋な疑問だ。
ある意味コレも異世界だろう、興味が湧くのは当然である。
そうである。多分。
気を紛らわしたいだけか。
そのまま遥か遠くまで――なんて、やってやろうと思ったが流石にやめた。
あかりが居るからね。
「財布もある、中身もオッケー、IKOKAもあるな」
ってわけで、パラレルワールド散歩と行きますか!
☆
友達とよく遊ぶ場所は、大体家から何駅か離れたなんちゃって都会だ。
ゲーセンに映画、スポーツ施設などなど。遊ぶ場所っていったらここね。
ってわけで、in電車。
「……地名とかは一緒か」
通りがかる駅、その全ては前の世界のまま。
ちなみに財布に入ってた生徒手帳によれば【月ヶ丘高校一年 佐藤空】……高校も一緒である。
顔写真、ドヤ顔で写ってた。なんだお前ぶん殴るぞ(俺)。
――「ひーくん、ジュースいる?」「ちょっと、ひーくん嫌がってるでしょ」「あっ椅子空いたよひーくん」
「皆ありがとう♪」――
「……」
そして車内。
なにやら、身長の小さ目な男性を囲う様に居る女の子数名。
大学生だろうか?
気遣う様に、というか女の子同士で争い合ってる様にも見える。
同時に男を周囲から守っている様にも。
何か既視感あるんだよ。
まるで、性別逆転したオタサーの姫みたいな。
大学生じゃないから、ネットの知識だけどさ。
他の乗客は普通に男女同じぐらいの比率だからか、余計に目立っている。
《次は●×駅、●×駅――》
「!」
奇妙な光景を横目に見物していると、どうやら目的の駅に着いた。
うーん、暇にさせてくれないね!
☆
「……やっぱ逆だな」
通行人を観察がてら、ゲームセンターまで。
服とか見てたら分かるんだけど……シンプル、かつシックでカッコいい感じの服は女の子が。
白とかピンクとか。なんなら髪留めにアクセサリー。可愛い系の服装は、男が多い。
ポイントは、下手な男装に女装とは違う事。
“似合っている”んだ。
そりゃ最初違和感はあったけどさ。
男でいうと、前の世界で言う“小動物”系男子の服装みたいな?
ああいうのに限って性欲バカ強そう(偏見)。
「……は?」
そしてゲーセン。
なんと、プリクラにて――
《女性客のみの入場は遠慮しております》
うん、このゲーセン大丈夫?
メイン客だろ――なんて思ったけど、入っていく客は団体の男ばっかり。
というか、プリクラの機械のイラスト全部男じゃねーか。可愛い系イケメンの。
「これも“逆”ね。頭おかしくなりそ……」
プリクラなんてただの写真(暴論)。
とまでは言わないが、同じワンコインで遊ぶなら――
「あ。あった」
ゲーセン歩いて三千里。
嘘、大体歩いて三分間。
でもそれぐらいの時間が掛かった。
なんたって、辺りは知らない光景ばかりだったから。
クレーンゲーム。
バニー着たイケメン(←は?)のフィギュアに、ひたすら連コおばさん。
パンチングマシーン。
ヤバイ筋肉で、999をたたき出す女子プロレスラー(だよな?)。そして周囲、それを見て顔を紅く染める男達。異様である。
そして、俺の目的地――格闘ゲームエリア。
「……マジかよ」
ロボット系も2D系も、ほぼ全て女の子で埋まっている。や、やりにくい!!
何ココ? 実は美味しいパンケーキが出てくんの?
「まあ良いか……」
部活は無いが、部活仲間とやった格ゲー技術はまだ生きてる。
コントローラー逆とかないよね。なんだそれ。
「――うわっ。なんでアイツが」「い、行こ」
で。
多分同世代っぽい二人組の女子が、俺を見るやいなや筐体から逃げ出した。
「……(泣きそう)」
もう帰りたいけど、このまま立ち去れば何しに来たのか分からない。
彼女達が退いた筐体の格ゲーに座り、コインを入れる。
「これは変わらないんだな……」
馴染みのあるアーケードコントローラー。
逆転した世界の中でも、“そのまま”のモノ。
今まで何気なく触っていたものが、今は何だか愛おしい。
ただ、これだけで――ここに来て良かったと思う。
《キャラクターを選択してください》
ま、キャラクターは“逆”なんだけどな!
ああもうお前で良いや。
ハイレグ金髪イケメン、君に決めた!!
▲作者あとがき
長くなったので分割します。
ので、夜頃にもう一話投稿します。
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