閑話:きっと、私だけが

ヒロイン



△作者まえがき

いつも応援ありがとうございます。

休憩(作者の)として、三話ほど閑話を挟みます。







ヒロインの一人称 あざとさランキング(私調べ)



『名前(例:「こうた、君のこと好き」)』

かなりのぶりっ子と捉えられる。

しかしながら、可愛い者であれば許される一人称。

同性から嫌われてそう。



『ボク』

可愛い者にしか許されない一人称。

読みは ぼ↑く↓

逆に言えば可愛い男の子はコレを使えばソレだけで好きになる程の破壊力。



『僕』

大和男子といえばコレ! 約半数以上はこの一人称。

実家のような安心感!



わたし

美しい。普通は女の一人称ではあるが、綺麗系の男の子から放たれるこの一人称は全然有り。



『俺』

男っぽくはなく、あまり使われない。

あざとさの欠片も無い。



『オレ』

ギャル。とにかく軽い印象。

大体派手に髪染めてる。

あまり使われない。というか怖い!



『ワイ・ワシ』

お爺さんが使う。

あと、二次元では“のじゃショタ”キャラが使う。好きな人は好き。

相当キャラが濃くないと痛い。取扱注意。




「なにこれ」

「まとめてみたよ。私のマンガの設定で使うからさ、高橋の意見ちょうだい」

「んー。名前呼びって子供はよくやらない?」

「ヒロインは高校生!」

「だったら大体合ってる……ん? 『自分』も『拙者せっしゃ』も『ちん』も無いじゃん!」

「ち、ちん……?」



うちのクラスには、変わった男子が二人いる。


一人は可愛すぎるで有名な、吾妻かなた。

もう一人は――



「朝からドしも会議かよ。元気だね」

「「わぁ!?」」


「おはよ、田中。高橋」



そう笑って、会話に混じる男の子。


佐藤空。

とにかく彼は、“男”らしくない。



「『恋彦卍無双』見たよ。面白かった、バトルシーンも良かったね」


「だろ?」

「エロくて熱いし最高なんだよ!」



今やこれが普通だけど、こんな話クラスの男子からしたら最悪だ。

それでも、佐藤だけは違う。


やけに女向けのアニメとか漫画とかが好きで、ドン引きされるようなモノでも当たり前の様に受け入れる。



「でもアレ、元の原作はゲームだったんだな。昨日帰りに買ったわ」

「「え」」

「あ、お前ら持ってないの? アレなら貸すけど」



そんな風に平気で話す彼。

アレのパッケージ、中々エロくてレジに持っていくの恥ずかしいんだけど!


……そうだ。

いつも彼は、私達より“女”らしい。


それが良い事なのかは分からないけど。



「佐藤ってさ、怖いものとかないの……?」

「確かに」


「えっ何急に」


「いや、だっていつも突っ込んでいくし……」

「この前だって、ナンパ追い返してたし……」



まあまあイカつい系の大学生だった。

“女”であるはずの、私と高橋はビビり散らかしていた。



《——「俺いま彼女達と遊んでるから。ごめんね」——》



そんな中、彼はきっぱり断って……我ながら情けなく感じたのだ。



「怖いものだらけだけど」

「た、例えば?」


「台風」


「災害じゃん……」

「モノだよモノ!」


「セロリ」


「それ嫌いな食べ物だよ!」

「……なんか違う!」


「はは、どうしろと?」



困った様に笑う彼。

これ以上は無駄だあ!



「ホント変わってるよ、佐藤は」

「ね」

「私達とこんな話する男子、佐藤だけだし」


「……ま、それはそうだな」

「でしょ?」



《——「おっ、お前らも『E×E』見てんの?」——》



男子とは無縁の私達に、彼が混ざったのは二年生になってすぐだ。

教室の隅で、このまま男子とはほぼ関わらないまま学園生活が終わる——そう思っていたのに。



「わ、私達あんまりお金もってないぞ」

「……じー」


「は? 取らねーよ馬鹿、俺を何だと思ってんだ」

「「わっ」」

「こっち見ろ」

「「!」」


「——二度とそういう事言うな。分かった?」

「ぁ……」

「ご、ごめん」



至近距離。

肩を掴んで、佐藤は私達に目配せする。


ふわっと香る“彼”の匂い。

他の男子とは違う。

どこか、大人っぽいそれが——



「うん、分かったら良いから。ジュース買ってこよ」



その後、席を立つ佐藤。

残される私達。



「「……」」



しばしの沈黙。

高橋も、私から顔を背けて黙り込んで。



「おはようございます。二人とも顔赤くないですか? 大丈夫ですか」

「あかくないし!!」

「気のせい!」


「??」



委員長の声に二人で反論。

この流れも、何回目かは分からないけど。



「「……」」



私達より度胸も筋肉もある。

性格もなんというか、女勝り……いや、もはや両方勝りだ。

そんな、漫画でも出てこない様な“おんな男”だけど。



「さ、佐藤ってホント“男”と思えない!」

「ね」



良いヤツだし、一緒に居て楽しい。

優しいし甘えたくなる……女としてどうなんだと、自分でも思うけれど。


なんというか。


“可愛い”とは思わない。“綺麗”だとも思わない。

でも――



「なんか、ちょっと、“良い”よな……」

「……なんて?」


「なんでもない!」



みんなは気付いてないだろうけど。


私だけ。

きっと私だけが、佐藤の魅力に気付いているんだ。




「そういや田中の前作のヒロイン、一人称『俺』だったよね」

「……そういうのもアリかなって」

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