どうすんだよこれ
気付けば夕方だった。
ゲーセンの中の時間経過は、まるで魔法が掛かった様に早い。
金が溶けるのもね()。
「すごい楽しかったぁー!」
「そりゃ良かった」
「女の子ずるいよぉ、こんな事いつもしてるの?」
「俺の知ってる限りは」
「良いなぁ……」
格ゲーとかは流石に練習がいるからさせてないけど。
登場キャラが
……ちなみに、女性キャラはムキムキorデブorイカレサイコが多い。非常に残念。
あと投げキャラが多い。
なんで? あの魅力的なふともも格闘女キャラは?
本当に、狂った世界に来てしまった。
「満足した?」
「一回味わっちゃうと、もっとシたくなっちゃうね」
「そんなセリフ、アイドルが言っちゃ駄目だろ」
「??」
「せ、清楚……(敗北)」
「なんなのー!」ポカポカ
いちいちこっちの汚さが露見する。
ホントに
いや――だからか。
清楚な男じゃないとそれは務まらないだろうから。
本当に、俺と真逆だな。
「帰る?」
「……おなかすいちゃった、かも」
「そうか。何食いたい?」
「へ」
「高級なもんはないが、大体のものはココには揃ってるよ」
一応この世界は、男をエスコートするのが女の子ってもんだ。
俺は今、女の子の代わりとしてここに居るからな。
田中とか高橋は全くそんなの出来てないけど! 大丈夫かお前ら!
「ハンバーガー、食べてみたいな……」
「えっ食ったことないの」
どこのテンプレお嬢様だよ。
ああいや違う、この世界じゃテンプレお坊ちゃんか。
「ファーストフード店って、一人じゃ入りにくくて」
「別にサッと食ってサッと出れば良いじゃん」
「……んもー!」ポカポカ
「出た」
「でたってなにー!」ポカポカ
相変わらず痛くないポカポカ(技名)を食らいながら、お望みのそこへ入る。
この時間ということもあって混んでるな。
けど、空いてないわけではない。
「人多いけど大丈夫?」
「うん、そのためのコレだから」
「なら良い。先席取るか」
アイドルが店内で身バレなんてしたらヤバい。コンサート会場ならともかく。
そう思ったが……変装衣装を指さしながら、彼は笑った。
肝座ってるよな。君本当は女の子?
1階が注文エリア。
2~3階が座席。
3階の窓際席が空いてたのでそこに移動。
「今日ポテト半額じゃん。ラッキー」
「……何にしよう……」
「好きなだけ悩め。決まったら教えてね」
ポチポチとクーポンを選択。
スマホの向こう側の、面白いぐらい悩む彼は見ていて結構面白い。
「ぐぬぬぬぬぬぅ」
いちいちあざといな……。
ファーストフードでそんな考える事あんまないし新鮮だ。
というか大体のメニュー制覇したし、“いつもの”になっちゃうんだよね。
「そら豆コーン!」
「考え直せ」
「逆に気になって」
「いや普通に美味そうなの頼めよ……」
「……じゃあハンバーガーと、てりてりバーガー……」
「了解。買ってくるから席座っててくれ」
カバンから財布を取って席を立つ。
運が良かった。周りはもう満席だ。
この調子じゃ二階もそうだろう。
「……い、行っちゃうの?」
「そりゃ席取っててもらわないとね」
「あ、そっか」
「別にかなたに行ってもらってもいいけど、最悪その天使みたいな声でバレる」
「!!」
「じゃ」
「う、うん……」
全く。
たかがファーストフードなのに、そんな犬みたいな目すんなって。
☆
「ねーお兄さん、いま暇?」
「エロくない? それまさかキスマじゃないよね? 一人ならあそぼーよー」
「いや連れ居るんで……」
結果。
俺はナンパにあった。
よりにもよって、注文してそれを受け取るまでの待機時間で。策士か?
なんでこのタイミング!
前の世界でなら逆ナンとかまず遭わなかったが、この世界じゃ普通ナンパ(?)。
まあよく遭う。やはり現役DKとなると価値が高いらしい。
経験人数教えてやろうか? ドン引くぞコラ。
「良いじゃん良いじゃん」
「連れって男の子? 一緒に遊んじゃおうよ」
「いやぁ、その子結構女の人苦手なんで」
「大丈夫だってー。アタシ達オトコには優しいよー」
「ねー」
「えっと……あ、番号表示されたんで取ってきます」
しかも結構ねちっこいタイプ(絶望)。ネバネバ!
俺が一人だったら喜んで一緒に遊んでたんだけど、今は彼が居る。
トレーに載せられていくハンバーガー達。
コレさえ無ければ振りほどけたんだが。
仕方ない。
プランAで行こう!
「721番のお客様ですね」
「あー、すんません持ち帰り用の袋ってもらえます?」
「? かしこまりました」
彼の初ファーストフード、ナンパ女の子達に囲まれながらではもったいない。
プランA――まずはかなたを逃がしてそのあと適当に理由つけて俺も離脱。
これで行こう。
彼女達には申し訳ないけどね。
「お待たせしましたー。連れ三階で待ってるんで」
「おっ乗り気?」
「行こ行こー」
持ち帰り用袋にバーガーたちを仕舞って、鞄に入れる。
空のトレーにはポテトだけ載せて。
……作戦としては完璧なはず。
たださっきから、猛烈な嫌な予感が収まらない。
いや大丈夫、俺だってこの世界に来てナンパには慣れて――
――「ねえ良いじゃん。名前なんていうの?」「結構良いサングラスじゃね?」
「ぁ。えっと、その……」
三階。
そこには、女の子二人からナンパを受けているかなたの姿があった。
「……お前もかよ!!」
どうすんだよこれ!
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