『逆』


アレから、何日が経っただろうか。

少なくとも一週間は過ぎたかな。



「しゃっせ〜」



学校終わり、今日も元気にアルバイト!

コンビニの生野菜は、結構買う人が居るらしい。


スーパーで買わないのかと思うけれど、夜が遅い人からしたらありがたいモノなのか。



「じゃがいも、ニンジン、ネギと……」



何にせよ単品野菜の補充は必須。

袋に入ったそれを、せっせせっせと新鮮野菜市コーナーへ。



「……これ大丈夫か?」



そんな中、めちゃくちゃ形が変なニンジンを発見。

なんだこれ。二股になってる。



「まあ良いか」



調べたけど、別に大丈夫らしい。

むしろトータルで見たら量多いし?


形は変だが、使う分にはむしろプラス。

というか、見れば見るほど面白いなコイツ。

帰るとき余ってたら俺が買おう。


こういう“普通じゃない”やつ、見てたら放っておけないんだよね。

……もしかして俺、ニンジンに仲間意識抱いてる?



「――佐藤君、レジヘルプー!」

「あっすぐ行きます」



見れば、団体の小学生がご来店。

しかも3グループ!


これは忙しくなりそうだ。





「ありがとうございました!」

「あざしたー」



店長と共に、小学生グループを捌ききる。

ウッキウキでお菓子いっぱい買ってたよ。春の遠足かな?

若いってのは良いね(高校生並感)。



「お待たせいたしましたー商品お預かり――」



そしてその後ろに並んでいた、最後の客を対応……しようとした時。



「!」

「よ、よう」

「東瀬じゃん。びっくりした、というかめっちゃ買ってんじゃん」



彼女も、カゴの中にいっぱいの商品。

大量のお菓子……そしてお菓子はお菓子でも、少し高めの菓子折りも入っている。


これって自分用じゃなくて誰かに渡す様なやつだけど。



「あ……明日、ちょっとな」

「へぇ。お友達の家にでも遊びに行くの?」


「……なんで分かるんだよ。いや、アレだ。勉強会だから」

「ははっ女の子の勉強会は遊びと一緒だって」



たくさんのそれを、ピッピピッピと会計しながら話す。

今、店に客は居ない。


ならほんの少し、ゆっくりめにしても良いだろう。



「そういうもんか?」

「そうそう。かといってコレは買いすぎだけど」


「……う」

「俺と話したいなら、素直に話したいって言えばいいのに」


「ち、ちげえよ。何持っていけば良いか分かんねぇから大量に買ってんだ」

「そっか。でもこの菓子折りは最高」


「え?」

「東瀬からこんな上品なの出て来たら、ギャップでめちゃくちゃ面白い」


「オイ喧嘩売ってんのか?」

「ポイントカードはお持ちですか?」

「無視すんな!」

「はは」



価格の3割はこの菓子折り。

美味しいけど高いんだよなこれ。



「おお逆エナドリも入ってんじゃん」

「疲れたときに飲んでる」

「良いねー。はい、全部で3100円」


「現金で。袋つけてくれ」

「かしこまりましたー! はいピッタリ」

「……なあ、佐藤」

「ん」



俺が現金をレジに入れていると、掛かる声。



「どうして、アタシにここまでしてくれたんだ?」



商品を袋に詰め終わり。

彼女にそれを手に渡して。


続く言葉は、決まっている。



「俺が男で、君が女の子だから」



目を丸くする彼女。

逆転世界。俺だけが意味を理解するそれ。



「……フッ、なんだそれ! 普通“逆”だろ!」

「はは。そうだな」



呆気あっけにとられた後、彼女は笑う。

そして俺も。



「ちなみに、その。今彼女とか募集して――」

「作る気ないね」

「! あっアタシも別に、男になんか興味ねぇ、し……」

「無理あるだろ」

「……ぐ」



相変わらず素直じゃないな。

それもまた面白いけど。



「ちなみに……東瀬さんじゃ俺は相手にならないかな」

「んだとコラ」

「出た! 久々に聞きたかったんだよねそれ」

「はあ?」

「はは、またのご利用をお待ちしております」

「……ったく。もう来ねーよ!」

「そりゃ残念」



袋を持って、東瀬はレシートを受け取る。



「——ホント、色々ありがとな。全部佐藤のおかげだよ」



それだけ言って、レジを離れていく彼女。

あの様子だったらきっと惹かれる男は出てくるだろう。


見た目もカッコいいし。

そもそもヤンキーがモテるのは前の世界と一緒だし。

しかも照れ屋さんで、世間知らずのギャップと来て。


トドメにあの“笑顔”。

正直ドキッとしちゃったよ。

良い顔するようになりやがって!



《――「ちなみに……東瀬さんじゃ俺は相手にならないかな」――》



まあ、つまり。

さっき俺はそう言ったが――





「――“逆”だよ、バーカ」





もうお前は、すっごく魅力的な女の子だ。


俺じゃあ相手にならないぐらいね。




――『男になんて興味ねぇ(大嘘)』 終――








△作者あとがき


これにて第二章完。

思っていたより長くなってしまいました。

男といえば格闘漫画にヤンキー漫画! じゃあ逆にしよう! そんなノリでしたが、楽しんで頂けていたらすごく嬉しいです。

次回は少し推敲行ってから投稿します。

箸休めに近い、短めの章になる予定。


たくさんの応援、本当にありがとうございます!

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