『逆』
アレから、何日が経っただろうか。
少なくとも一週間は過ぎたかな。
「しゃっせ〜」
学校終わり、今日も元気にアルバイト!
コンビニの生野菜は、結構買う人が居るらしい。
スーパーで買わないのかと思うけれど、夜が遅い人からしたらありがたいモノなのか。
「じゃがいも、ニンジン、ネギと……」
何にせよ単品野菜の補充は必須。
袋に入ったそれを、せっせせっせと新鮮野菜市コーナーへ。
「……これ大丈夫か?」
そんな中、めちゃくちゃ形が変なニンジンを発見。
なんだこれ。二股になってる。
「まあ良いか」
調べたけど、別に大丈夫らしい。
むしろトータルで見たら量多いし?
形は変だが、使う分にはむしろプラス。
というか、見れば見るほど面白いなコイツ。
帰るとき余ってたら俺が買おう。
こういう“普通じゃない”やつ、見てたら放っておけないんだよね。
……もしかして俺、ニンジンに仲間意識抱いてる?
「――佐藤君、レジヘルプー!」
「あっすぐ行きます」
見れば、団体の小学生がご来店。
しかも3グループ!
これは忙しくなりそうだ。
☆
「ありがとうございました!」
「あざしたー」
店長と共に、小学生グループを捌ききる。
ウッキウキでお菓子いっぱい買ってたよ。春の遠足かな?
若いってのは良いね(高校生並感)。
「お待たせいたしましたー商品お預かり――」
そしてその後ろに並んでいた、最後の客を対応……しようとした時。
「!」
「よ、よう」
「東瀬じゃん。びっくりした、というかめっちゃ買ってんじゃん」
彼女も、カゴの中にいっぱいの商品。
大量のお菓子……そしてお菓子はお菓子でも、少し高めの菓子折りも入っている。
これって自分用じゃなくて誰かに渡す様なやつだけど。
「あ……明日、ちょっとな」
「へぇ。お友達の家にでも遊びに行くの?」
「……なんで分かるんだよ。いや、アレだ。勉強会だから」
「ははっ女の子の勉強会は遊びと一緒だって」
たくさんのそれを、ピッピピッピと会計しながら話す。
今、店に客は居ない。
ならほんの少し、ゆっくりめにしても良いだろう。
「そういうもんか?」
「そうそう。かといってコレは買いすぎだけど」
「……う」
「俺と話したいなら、素直に話したいって言えばいいのに」
「ち、ちげえよ。何持っていけば良いか分かんねぇから大量に買ってんだ」
「そっか。でもこの菓子折りは最高」
「え?」
「東瀬からこんな上品なの出て来たら、ギャップでめちゃくちゃ面白い」
「オイ喧嘩売ってんのか?」
「ポイントカードはお持ちですか?」
「無視すんな!」
「はは」
価格の3割はこの菓子折り。
美味しいけど高いんだよなこれ。
「おお逆エナドリも入ってんじゃん」
「疲れたときに飲んでる」
「良いねー。はい、全部で3100円」
「現金で。袋つけてくれ」
「かしこまりましたー! はいピッタリ」
「……なあ、佐藤」
「ん」
俺が現金をレジに入れていると、掛かる声。
「どうして、アタシにここまでしてくれたんだ?」
商品を袋に詰め終わり。
彼女にそれを手に渡して。
続く言葉は、決まっている。
「俺が男で、君が女の子だから」
目を丸くする彼女。
逆転世界。俺だけが意味を理解するそれ。
「……フッ、なんだそれ! 普通“逆”だろ!」
「はは。そうだな」
そして俺も。
「ちなみに、その。今彼女とか募集して――」
「作る気ないね」
「! あっアタシも別に、男になんか興味ねぇ、し……」
「無理あるだろ」
「……ぐ」
相変わらず素直じゃないな。
それもまた面白いけど。
「ちなみに……東瀬さんじゃ俺は相手にならないかな」
「んだとコラ」
「出た! 久々に聞きたかったんだよねそれ」
「はあ?」
「はは、またのご利用をお待ちしております」
「……ったく。もう来ねーよ!」
「そりゃ残念」
袋を持って、東瀬はレシートを受け取る。
「——ホント、色々ありがとな。全部佐藤のおかげだよ」
それだけ言って、レジを離れていく彼女。
あの様子だったらきっと惹かれる男は出てくるだろう。
見た目もカッコいいし。
そもそもヤンキーがモテるのは前の世界と一緒だし。
しかも照れ屋さんで、世間知らずのギャップと来て。
トドメにあの“笑顔”。
正直ドキッとしちゃったよ。
良い顔するようになりやがって!
《――「ちなみに……東瀬さんじゃ俺は相手にならないかな」――》
まあ、つまり。
さっき俺はそう言ったが――
「――“逆”だよ、バーカ」
もうお前は、すっごく魅力的な女の子だ。
俺じゃあ相手にならないぐらいね。
――『男になんて興味ねぇ(大嘘)』 終――
△作者あとがき
これにて第二章完。
思っていたより長くなってしまいました。
男といえば格闘漫画にヤンキー漫画! じゃあ逆にしよう! そんなノリでしたが、楽しんで頂けていたらすごく嬉しいです。
次回は少し推敲行ってから投稿します。
箸休めに近い、短めの章になる予定。
たくさんの応援、本当にありがとうございます!
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