第10話 Die Welt verändert sich世界がまわる

「...ホームステイ?ふーん?」


「それで?ライネはわざわざ日本に何しにきたんだ?」


「決まってるでしょ?転校しにきたのよ」


「...はぁ?」


「既に向こうの高校レベルの勉強はとっくに終わってるしね。向こうでダラダラと1年半くらいを過ごして大学に行くのもありだけど、折角なら楽しみたいじゃない?学生生活を」


「...そのためにわざわざ日本に?てか、日本語すげー上達したな。元から普通にうまいと思ってたけど、ネイティブと遜色ないぞ」


「ふふんっ?私のこと誰だと思ってんのよ」


「そうだな。小さな天才だもんな」


「小さなは余計よ」


「...それで?あなた名前は?」


「... Mein Name ist Emilia von Dreyfuss. Wie ist Ihr Name?」


「ふーん?いい名前じゃない。私は時雨しぐれ ライネ。この男とは従兄妹関係に当たるわね。情けない話だけど」


「情けなくねーだろ」


 というより、この二人かなり気が合わなそうだ。二人ともかなりプライド高めだし、妙な競争心を抱きそうである。


「そっちの二人はどういう関係なわけ?」


「だから、ただのホームステイだっての。母さんがいきなりホームステイを受け入れ初めてだな...」


「へぇ?思春期の男女?同じクラスの男女が?ただのホームステイ?もう何か間違いが起こってもおかしなことはないでしょう?」というと、この前のことがあり二人とも顔を背けると謎のドヤ顔を披露すると、「別に?そいつのゾウさんなんて私死ぬほどあるし!!」と、言い放つ。


「なんで見たことあるんだよ!」


「小さい頃は二人で一緒にお風呂に入ってたじゃない。その時、いっつもあんたのそれ見てたのよ」


「変態じゃねーか!」


「ち、違うから!//たまたま目に入っただけだから!」


 エミーリエにゴミというかノミを見るような目で睨まれる。


「てか、マジで転校するのか?うちの高校に」


「手続きは済んでるし。それにあんたと同じクラスになることは決定事項だから」


「...何でもいいけど面倒ごとを起こすなよ」


「あんたに言われたくない。てか、この子もしかして日本語しゃべれないの?」


「聞き取りは結構できると、書いたり話したりはまだなんだよ」


「これじゃあホームステイというよりホームヘルパーね」


「私はそんな手はかからないし。むしろこいつの世話をしてるくらいだし」


 いや、俺はエミーリエに世話をされた記憶がないが。


「ふーん?てか、面倒くさがりのあんたがよく受けたわね」


「母さんが勝手にOK出したからな」


「...あのお母さんらしいわね。まぁ、それじゃあ、これからよろしくね、宗。それとエミーリエさん」


「おうよろしく」


「...こちらこそよろしくお願いします」と、仕方なく手を取るエミーリエ。


 こうして、何故か半同居みたいに居座る気ライネと、期間限定の半同居人となったエミーリエ。


 そんな2人に囲まれる俺という名の物語が少しだけ動いた気がした。

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