第4話 ヤバっ、先生じゃないっすかあれ! と、とりあえず隠れないと!

SE:セミの鳴く声

(リラックスした声で)

「……ふぃ~! さて、と。アイスも食べたし、ストレッチもしたし……戻りますか」

(悩むように)

「あ~……っ。うーん……すぅ~はぁ~……よしっ! ……それじゃ、戻……戻りま……。戻ります……戻りますぅ? ……あ~! うぁ~! め、めんどいぃ……! やっぱ戻りたくな~っ!」


SE:衣擦れの音

(駄々をこねながら)

「おぁ~っ! イヤだぁ~っ! 戻りたくない戻りたくない戻りたくない! ずっとここにいるっす! いやじゃ! あ~もうすげぇイヤじゃ! 今日はセンパイとここにいることとします!」

「うぉぉお! 今更あんな暑いとこに戻れるかぁ! 稽古とかあり得ん! 無理無理無理! ……あっ! 良いこと思いついたっす! センパイセンパイ! プール行きましょプール! ……いや、やっぱ海! 海が良い! 海に泳ぎに行きましょセンパイ!」


(キレ散らかして叫びながら)

「あぁんっ!? こんな時間から出発しても良いでしょうが! 着くころには夜でも良いでしょうが! 入れなかったら波打ち際でパチャパチャしながら二人で追いかけっこすりゃ良いでしょうが!!」

「そんで上手いこと帰りのバスが無くなって、近くのちょっと良い雰囲気の民宿に泊まる事になるけど、何故か部屋が一つしか空いてなくて! しょうがないかぁ……って泊まることにするんだけど、お互いドキドキしながら部屋に入ったらなぜか布団一つに枕が二つおいてあって! お互い顔真っ赤にしながらも意識しちゃって目も合わせられないけど、センパイがそこで私の手をぎゅっと握れば良いでしょうが!」


「うぉおぉぉお! 夏ぅぅうう! そんな夏でも良いでしょうが! なぁにが悲しくて冷房も無い稽古場で叫び声あげながら、投げたり投げられたり組んずほぐれつしなきゃいかんのじゃ!」

「ぐぉおぉ! センパイ助けて! 助けて欲しいっす! 私を夏に放り込んでノスタルジーと甘い陶酔に肩まで沈めて二度と現実に戻れないように……ぃい!?」


(息をのむ)

「ひゅっ……! ちょっ、こっちっ! センパイこっち来て!」


(ひそひそ声で)

「……あ、あっちにいるの、もしかして先生じゃないっすか?」

「……いや、絶対そうっすよ! やっば……流石にここで見つかるのはまずいっす!」

「し、しかもこっち来るし! ちょ、何やってんすかセンパイ! センパイが騒ぐからっすよ!」

「はん? 騒いでたの私だけ? ……いまそんな責任のなすりつけあいみたいなコトしなくていいでしょ! と、とにかく隠れないと……」

「あっ、あっちの方! あそこのカーテンのとこに隠れましょ! 物陰だからわかんないっすよ! ……ほら、こっちきてください、センパイ!」


SE:二人分の駆け足

SE:大きな布をかぶる音

SE:衣擦れの音

(耳元で囁くように)

「……センパイ、静かにしてなきゃだめっすよ? ……大丈夫っす、どうせすぐどっか行きますし。現行犯で見つかるのはヤバいっすけど、そうじゃなきゃそこまで怒られないでしょ……多分」

「あっ! きたきた、きましたよ! ……ちょ、何やってんすか、もっとくっついて……バレちゃうじゃないっすか! ほら、ぎゅっとこっちに寄ってください!」


SE:衣擦れの音

「……しゃべっちゃだめっすよ。しー……っす。静かに……」

「(耳元に、ゆっくりとした呼吸音)」


SE:靴音。次第に遠ざかる

(耳元近く 小声で)

「……ぷはっ。い、行きましたかね……。いや、もうちょっとだけ、このままにしましょっか。戻ってくるかもしれないし」

「あー……、ガチでビビったぁ……。……ていうか、私すごくないっすか? 向こうに見つかる前に見つけたの、めっちゃすげくないっすか? ……ね、ねっ! すごかったっすよね! 我ながらめっちゃファインプレー! ふふんっ、もっと褒めてくれてもいいんすよぉ?」


「いや、別に調子乗ってないすけどぉ? あのまま私が気付かんかったら、二人ともゲームオーバーだったことを考えれば、ね。当然の権利だと思いますよ、これは」

「ほら、センパイ。褒めて称えて頭を撫でてください? そんで今日の帰りはラーメンおごってください? ……なんつって」


SE:髪を撫でる音

(耳元で甘えるように)

「わぷっ。……えへへ。いや、本当に撫でてくれるとは思わず……。ちょっとびっくりしただけっす。……ん? 全然いやなんかじゃないっすよ? センパイなら。むしろ嬉しいっす……恥ずかしいのもありますけど」

「えへぇ……気持ちいいっすね……。んぅ? いや、確かに髪触られんのは好きじゃないっすけど……それは、なんていうか……センパイ以外の場合ですし。……友だち、も。ちょっと嫌っすね。……いや、男とか無しすぎ。マジでありえんっすわ。サイアク」

「でも、その……。……センパイは別。……うん。……特別っす」


「(耳元にしばらく吐息)」


(我に返って慌てるように)

「あっ、いやっ、その……違うっ。今のは違う……わけでもないんすけど……。その……べっ、別に今はセットしてる訳じゃないし。そもそも、組み手の後に髪の乱れとか正味気にする意味もないし……だから、気にならないっていうか……。うぅ~……あんま見ないでください! はずい……」

「っていうか……ちょ、ちょっと、センパイ。くっつきすぎじゃないっすか? ……えっ、いやここに引き込んだのは私っすけど……な、なんか冷静になったら……これ、抱き合ってる、みたいですし」

「……い、いやじゃないっす。稽古の時とかもっと密着してる事もあるし、全然イヤじゃないっすよ。……だから、止めろとは、言ってないじゃないっすか。もうちょっとだけ、このまま……」


SE:衣擦れの音

(恥ずかしそうな小声)

「あ、あはは……でもやっぱちょっとは恥ずかしい、かも……。あ、汗の匂いとか……私、臭くないっすか? ……え? いや、さっきのストレッチも密着してましたけど。顔はそこまで近くなかったし……今は、だって……完全に、ハグだし……。……えへへ、そっすか。よかったっす。……私? 私は……センパイの匂い、嫌いじゃないので。このままで……」


(耳元で甘えるように)

「……ん? 暑いっすよ? ま、センパイもめっちゃ暑いと思いますけど。私、体温高めだし。……でも、いいんです。……これが、いいんすよ。……センパイが近くにいるから……このままが、いいっす」


SE:衣擦れの音

「(耳元にしばらく吐息)」


(少し緊張した様子で耳元に囁く)

「……ね、センパイ。センパイは、どうっすか? 私、こんなに近くにいても……イヤじゃ、ないっすか?」

「そっすか。えへへ。……えっと。それ、じゃあ……。その……。私、ずっと思ってた事があるんすけど。……はい、センパイについてのことっす。……それで、センパイ。私がこれだけくっついてて、イヤじゃないなら……センパイも、私と同じ気持ちだって……私、勘違いしても……」


SE:靴音

(息を飲む)

「ひゅっ……」


SE:靴音。次第に離れていく

「(耳元に呼吸音)」


「……ぷはっ!」

SE:大きな布をばさっと外す音


「びっっっ……くりしたぁ……っ! い、今先生もどってきてましたよね!? あっぶな! あっぶなぁっ!」

「うひぃ~。いや、危うく先生の真横で突っ込んでいくとこでしたよ! あっぶなぁ……え? さっき言おうとしたことっすか?」


(呆れたように)

「はぁ~。やれやれ。わかってるくせに。……ま、いいと思うっすよ。私らはこんな感じで」

「……とはいえ、ね。先生も道場に戻って行っちゃいましたし」


(真剣な声で)

「あと、ちょっとだけ……サボってから行きませんか? センパイ」

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