第2話 一緒にアイス、最高っすね、センパイっ!
SE:セミの鳴く声
(嬉しそうな声で)
「いえーい、脱出成功! ま、普通にバレてましたけど。でも皆見逃してくれましたね。私の言ったとーりっすよ。先生いなければよゆーっす」
(照れている声で)
「で、でも抜け出す時、流石にちょっと恥ずかしかったっすね。……え? いや、皆に、その……あ、「アツいね~、お二人さん」とか言われてたじゃないっすか」
(少し緩んだニヤニヤ声で)
「いや、確かに? 確かに状況だけ見ればそんなこと言われてもしょうがないんすけど? しょうがないんすけどぉ?」
「はっ、はぁ~? 別にニヤけてなんて無いすけど? い、いつも通りですし!? て、ていうか……センパイこそどうなんすか?」
(段々声が小さくなりながら)
「な、何がって……ッ。だ、だからそのぉ……私たちが二人で一緒に抜け出したら、「アツいね」とか、からかわれたじゃないっすか。それで、センパイはどう思ったのかなぁって。……ち、ちなみに私は、別に……イヤ、とかはなかったっていうか……むしろ……」
(慌てたように)
「な、なんでもないっす! 今はセンパイに聞いてんすよ! そ、それで? どう、思いました……?」
(間を開けてから、怒りを隠すような低い声で)
「……は? なに? もっかい言ってもらっていいっすか?」
「……いや。アツいって、気温の話なんかしてないんすわ。そういう暑さの話じゃないんすけど? わかりますよね、先輩」
「え、もう選挙権もある年齢っすよね? そういうの、どうなんすか? 鈍感系気取ってんすか? ……いやいや、マジでマジで。こっちはマジの話してんすけど」
(呆れたように、大きな声で)
「っはぁ~~~っ! 萎えたぁ~~っ! こーれは萎えました! もう駄目です! 時間切れ。おしまいです。もーおしまい。ありえねーやらかしっすね、これは」
「あーあ。あーあ! どうすんすか、先輩? これどうすれば良いと思いますか? 今もう、可愛い可愛い後輩の可愛い可愛い堪忍袋は爆破寸前です。こっから大事ですよこれ」
(真剣な低い声で)
「……ちなみに、ここで変にからかうとか鈍感気取るとかは、ホントのマジでおしまいですからね? よく考えた方が良いっすよ。……これ、先輩のために言ってますからね? 良いですか? 本当によく考えて……この後の行動、決めてくださいね?」
「……あ、ちなみに。全然、これっぽっちも関係ない事なんですけど。あそこに、アイスの自販機がありますね。……いやいや、これなんも関係ないっすよ。ヒントとかじゃ無いっす。……ただ、アイスの自販機あるな~って。ほら、私らアイス食べにきたわけじゃないっすか」
「……だから、ね? 流石にこれは、ね? わかりますよね?」
「可愛い後輩が、センパイに裏切られて傷心なんすよ。……いや、裏切りでしょ。かけて欲しい言葉とか、あるじゃないすか、女の子には。それを汲み取れなかったんすから、そりゃもう裏切りっすよ。一番信頼してるセンパイからの不義理ですもん。そりゃもうめちゃくちゃ傷ついてるっすよ、およよ」
SE:自販機のボタンを押す音の後、アイスが落ちてくる音。2回続く。
SE:自販機からアイスを取り出す音。
(棒読みで)
「……え? なんすかこれ? え~? もしかして、先輩おごってくれるんすか~? やった~! ありがとうございます~、先輩」
(楽しそうなしゃべり方に戻る)
「……へへへっ。ありがとうございます、先輩。まぁまぁ、正解の行動を取ったと言っていいでしょう。これなら。ほらほら、あっちで食べましょ? ほら早く!」
(楽しそうに)
「アイスっ、アイス~っ」
SE:包装を破く音。
(アイスを舐めるような咀嚼音を混ぜながら)
「(ぺろっ、ちゅばっ)……ん~っまっ! いやぁ、やっぱり夏はアイスっすねぇ。冷たくて美味しぃ~っ!」
「センパイ、おごってくれてありがとうございます……ってか、なんでそんなに離れてるんすか? ほら、もっとこっち来てください!」
「(ぺろっ)え? 暑い~ぃ? はっ、なぁに当たり前の事いってんすか。夏ですよいま。そんで私ら、サボリとはいえさっきまで稽古っすよ。暑いに決まってんじゃないっすか」
(少し早口で)
「で? それとセンパイが私と離れてること、なんか関係あるんすか? ていうか、暑いのは我慢できますよね? アイスも食べてるんすから。だから離れる理由無くないすか? そもそも、さっきまで組み手でもっと密着してましたよね? だからなんも問題無いと思うんすけど。私、なんか間違った事言ってます?」
(少しむくれて)
「……だから、ほらっ! 早くこっちにすわってください! いいから、さっさと。ほ~ら~」
SE:布地の椅子に座る音
(少しだけ近くから)
「んふふ~それでいいんすよ、それで」
SE:セミの声
(アイスを食べる音が少し続く)
(フラットな声で)
「……夏っすねぇ……」
「落ち着きますね、こういう時間……。まったりするっていうか。センパイとだからなんすけど……」
「……え? そりゃそうでしょ。私、センパイ以外とこんなことしませんし。センパイなら、別にお互い喋らなくても、なんか……安心するっすね。同じ時間共有デキるだけで、嬉しいっていうか、楽しいっていうか。なんか、胸のあたりがぽわぽわする感じ?」
(耳元近くで囁くように)
「多分、そばにいてくれるだけで、幸せなんすよね。……一緒にいる時間が、好き」
(アイスを食べる音)
「……あれ?」
(少し慌てるように)
「わ、私、今なんか恥ずかしいこと言いました?」
「……そうっすよね、そうっすよね! なんかキャラじゃないこと言いましたよね!」
(恥ずかしさを堪えるように)
「ぐぁ~っ! わ、忘れてください! なんか、なんかセンチメンタル入ったっていうか!」
「違うんす! これは違くて! その~っ! あの~っ! い、いや! 思ってもないこと言ったわけじゃないっすよ! 違う! そうじゃないんすけど!」
「……へ? べ、別に顔、赤くなってないっすから! ちょ、こっち見ないでください!」
(密着した距離で 照れながら)
「ちょ、もぉお! ……は、恥ずかしいっす……。せ、センパイ。……本当に、近い……。か、顔が……うぅ~」
(だんだんと消え入るような声で)
「い、いや、謝らなくても……いいんすけど……。イヤとかじゃないし……。ただ、その……」
「……は、はずかしぃ、から……」
SE:セミの声
(少しだけ無言のあと、気を取り直したように)
「……よっし! 忘れましょう! 変な空気になっちゃったし、さっきの無しで! ほら、アイス食べましょ、センパイ! 溶けちゃうから! ね!?」
(アイスを食べる音の後、小さな声で)
「でも、さっきのは私の本音っすからね、センパイ。本当にそう思ってるんです。……そばにいるだけで、幸せだって」
(楽しそうに)
「クスっ。なんでもないっすよ、なんでも」
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