47:神の御尊顔


「遅れて申し訳ありません、人混みが多くて……。大丈夫ですか、アカリさん。」


「し、師匠~~!!!」


「元気そうで何より。皆さんも来てますよ?」



そう言いながら後ろを指差すと、リッカさんたちがこちらに向かって走ってきているのが見える。


ふぅ、いやマジに間に合ってよかったよ。ある程度“あちらさん”が何を考えてどう動いているのか配下の蜘蛛ちゃんたちのおかげで解ってたけど、今現在どうしてるのかは完全に把握できてなかったんだよね……。いくらこの地にいた蜘蛛と家から連れて来た子たちがいるとはいえ、ここは私のホームみたいに蜘蛛が大量にいるわけじゃない。つまり絶賛人手不足、いや蜘蛛手不足ってわけだ。


何せ今は全て終わった後に予定している“大掃除”の準備で大半が出張っているからねぇ。何かあった時の為に私直属? でいいのかな? 透明化部隊はきりんさんやアカリさんの警護に当てていたけど、セミ男が自力で彼女を見つけ出して襲い掛かろうとするとは……。



(まぁきりんさんに付けていたのは部隊のリーダー。彼はそれ相応の力量はある。やろうと思えばあそこにいた全員をコロコロするぐらいは簡単だけど、その場合スプラッタパーティになっちゃうからねぇ。私が介入出来て良かったよ。)



もしそんなことが起きていればアカリさんから“蜘蛛”への好感度がまた下がっちゃうだろうし、色々と慣れていないであろうきりんは絶叫からのトラウマ確定だ。確かに私は悪よりの存在だけど、誰かを怖がらせちゃうのは本意じゃないからねぇ。調べた感じ、きりんさんも結構可哀想な境遇だし、これ以上嫌な記憶を増やす必要もないだろう。


っと、ちょうど来たね。


後ろを振り返ってみれば、ちょうどリッカさんたち3人が到着。状況を聞き出すよりもまずは何よりも戦闘準備を整えるべき、以前私が指導した言葉を覚えていてくれたのか、全員がプルポの持っていたジュエルボックスから宝石を呼び出し、飛翔したソレを受け止めている。


そこでようやくお話をする準備が整ったのだが……。



「アカリ! 大丈夫……、って転売ヤーッ!」



きりんさんの顔を見るなり、そう叫びながらキレ始めるリッカさん。流石に何度も羽交い締めにされて止められたせいか飛び掛かることはない様だったが、明らかに憤怒の形相になっていらっしゃる。いやまぁ色々と気持ちは解りますけど落ち着いて……。いやここはちょっと怒った方が良いかな? 今後のためにも仲良くしておいた方が良いだろうし。


んじゃちょーっと怖い想いをするかもだけど……。感情を表に出しまして。



「……リッカさん?」


「ひッ! ひゃいッ!」


「どうやら何か事情があるご様子。今は収めて頂けますか?」


「す、すいません……。あ、貴女も決めつけてごめんね。」


「い、いえ! 私が悪いことしてたのは確かなので……。」



私がちょっと怒気を出したせいで、静かになり簡単な仲直りが出来たようだが、雰囲気が死んでしまう。


うぅ、この辺りの調整未だに慣れないんですよね……。子供を怒ったりなんてほんと数えるほどしかしたことないですし。というかあまり慣れたいものでもないですし……。あ、あのアカリさん? 悪いんですけど後お願いしても良いですか?


えぇ、貴女です。『わ。私ですかぁ!?』って顔しないで、ね? ほらまた今度師匠がお好きな物作ってあげますから。ほらみんなの引っ張り役なんでしょう? 今ならイメージを具現化してアカリさんだけにしか見えない土下座もしますから……。あ、要らない? そっか……。



「と、とにかく! みんな! さっきの入場者特典のストラップを見て! 中にクライナージュエルが入ってる! 多分アンコーポの仕業だよ! それで、このきりんちゃんのパパが利用されてるっぽい! 助けに行かなきゃ! あとなんかすごく怖い敵もいる!」


「あぁ、さっきエミさんに吹き飛ばされたあの人たち……。」



リッカさんがそう言った瞬間。先ほどまで私が放った雷によって帯電状態になって痺れていた彼らが、よろめきながらも立ち上がり始める。ある程度威力を弱めたとはいえ、助走をつけて蹴ったというのにまだ結構余力ありそうだな。やっぱり、デスカンパニー製の怪人は耐久力や耐性が無駄に高い。


今後の“大掃除”のためにも現状彼らを殺すことはしたくない。けれどこの怪人をジュエルナイトたちに任せるには荷が重すぎる。ま、私案件だね。



「さて、“きりん”さんでしたか?」


「あ、はい!」


「私は九条恵美、この方たちの指導役を務めさせて頂いております。そしてこの中で、一番強いのが私です。どうやら少々厄介なものが紛れ込んでいるようですし、そちらの対処は私に任せて頂き、貴女のお父様。黄龍氏のことに関してはアカリさんたちに任せようと思います。よろしいですか?」


「え、あ、で、でも……。」



一瞬、巻き込んではならないという言葉が出かけたのだろう。けれどそれを口にする前にアカリさんが彼女の肩に手を置き、笑顔を見せる。リッカさん、ヒマさん、ユイナさんも、同様に力強い笑みを。多少厳しい戦いになるだろうが、彼女達なら乗り越えてくれると信じさせてくれる強い意志を感じられる。


うんうん、そうでなくっちゃ。ま、乗り越えられない壁が出てきてもこっちが台座をいくつでも用意するからね。通る道、通った道の舗装は大人がするものだ。この子たちは乗り越え、前を進むことだけ考えていればいい。



「大丈夫だよきりんちゃん! 私達こう見えてもちょーっと強い方なんだから!」

「さっきは決めつけちゃったし、そのお詫びくらいさせて、ね?」

「初対面で信じられないかもだけど。たとえ手を伸ばしていなくても、絶対にボクたちが掴むから。」

「大船に乗った気持ちで、頼んでくださいませ。」



「…………お願い、します! パパを助けてください!」



「「「「もちろん!」」」」



彼女の願いに対し、即座にそう返す彼女たち。


あ~! 善性の可愛い少女たちが輝いてるこの光景! すごくいい! この前作った応援用の団扇持ってくれば良かった……! あ、あの時はパールまでだったけど、ちゃんと今はダークパールとエメラルドの分も作ってるからね? 安心しておいて! あ、それと透明化部隊! 隠れて写真撮った? 撮ってる? OK!? ならヨシ!


うんうん、子供たちがこんなに頑張ってるんだ! おばさん……、は自分で言ってて悲しくなるからお姉さん! お姉さんも頑張っちゃうよ!



「では、僭越ながら師が少々手助けをして差し上げましょう。皆さん? 着地はしっかりしてくださいね?」


「「「「え?」」」」



そう言いながら両手でつかむのは、アカリさんたちときりんさん。合計5人の手。


何かあった時の為にウチの蜘蛛たちも背中に引っ付いてるし、ちょっと危ないことしても安心だ。けれど彼女達ならば蜘蛛の補助を受けずとも大丈夫なはず。というか私が鍛えているのだ。これぐらい何とかしてくれないと困る。



「どうやらきりんさんのお父様は中央部にあるあの城にいるご様子。ですが少々距離があるようです。ショートカットと致しましょう。」


「……あ、あの。師匠?」

「と、とんでもなく嫌な予感がするんですけど……!」

「あー、なんか“蜘蛛”さんもこんな感じだったけ。」

「ひ、ヒマさん!? そんな達観した目をしないでくださいな!?」

「ふぇ?」


「では、空の旅を楽しんで。」



そう言った瞬間。全員の肩が外れぬように細心の注意を払いながら……。中央部の城目掛けて、天高く彼女たちを放り投げる。



「「「「や、やっぱりッ~~~!?!?!?」」」」


「ふぇぇぇぇぇ!?!?!?」


「いってらっしゃ~い。」



大空に放物線を描いて飛んでいく彼女たちを見送りながら、軽く手を振る。うんうん、良い力加減。私も成長してるなぁ……。っと、仕事しなきゃ。


悲鳴に近い叫び声を上げている彼女たちだが、すでに変身時の発光が空を照らしている。後は彼女たち、そしてお守りに付けた私の配下たちに任せて大丈夫だろう。私は私の仕事を。視線の端でようやく立ち上がり、全身の筋肉を肥大化させることで先ほどの電気を全て吹き飛ばした彼の方を、見やる。



「ふんッ! ……ふぃ~、良いキックだったぜ。だがこの俺を倒すにはちと力不足だったようだなァ、レディ?」


「手加減しましたからね。むしろ思ったよりダメージを受けたようで驚いております。」


「はッ! まぁちょうどいい、子供相手に手を出すのってのはポリシーに反するんだ。あの子たちをどっかにやってくれたのは感謝してやるよ。だが上の命令は絶対だ、あのお姫様を追うには……。お前を倒さねぇといけねぇみたいだな。」



ご明察、そう答えながら、ほんの少しだけ構える。普段であれば即殺、私の姿を視認させるよりも早く彼らを消し飛ばすのがセオリーなのだが、今回は“別”だ。後のことを考えると殺さない方がいい。それに、昨日見た映像を見る限りこいつは量産型だがそれなりに腕が立つようだった。スペックこそ一般的な怪人程度だが、それ以外を高めて埋めようとするタイプ。ジュエルナイトたちの指導によって手に入れた戦闘技術、それが実戦でどれだけ通用するのか、ちょっとそれを確認するためにも遊んでやるとしよう。



「先手は譲りましょう。ぜひ全力で。足掻くことを期待します。」


「レディ? 残念ながら俺は子供には優しくても、男女差別はしねぇ主義なんだ。全力で排除させてもらうッ!」



彼がそう言った瞬間、先ほど私がキャンセルした変身の時と同様に、全身に緑色の血管が浮き上がり、それが膨張していく。そしてその瞬間、弾けるように現れたのは、セミの体を持つ化け物。怪人セミ男、だ。出力こそそこそこだが、量産型としての最大の利点、“数”という利点を活用するために非常に高い防御力及び耐性を持つ存在。数がいたとしても、すぐに撃破されれば意味がない。つまり利点を生かすために、全員がそれ相応に固い。


それゆえに単体での戦闘も十二分に行えるのが、彼ら。



「セミ男、上からの命令でな。それ以外は明かせねぇ。行くぞッ!」



彼がそう言った瞬間、着ていた上着が弾け飛び、その中から飛び出してくる大きな昆虫の羽。常人では視認できない速度で動き始めたそれは、すぐに彼を大空へと飛び立たせ私に向かって突貫して来る。私からすれば欠伸が出るほどに遅いが、ここにいたのがジュエルナイトたちであれば欠片も反応できなかっただろう。やっぱり相対させなくてよかった、なんて思いながら拳に電気を集中させる。


狙うのは、その脳天。



「甘いぞ、レディッ!」



いつの間に用意したのだろう。おそらく彼らの標準武装の一つなのであろうグローブが彼の手に嵌められており、それで私の拳を受け止めようとするセミ男。拳から伸びていく電気の線がグローブに当たった瞬間、弾かれていることからおそらく絶縁体。本気で電気を流し込めば吹き飛ばすことなど容易だし、そのまま殴りぬけばまぁこいつは死ぬだろう。けれど今は、技術のチェックだ。


ちょうど彼の動きは組織の戦闘データで見たことがあるし、ちょっとアレをしてみようか。


思い出すのはデスカンパニー幹部の一人、“兜将軍”の動き。彼は武芸百般と名高い男で、どんな武器でも華麗に扱うことが出来ていた。そんな将軍が最も得意だったのが、素手での戦闘。まぁ結局ピレスジェットに負けた奴ではあるんだけど、極めた技術に善悪はない。使わせてもらうとしよう。



「よい、しょ。」


「なにッ!?」



彼の腕を弾き、同時にその胴体に軽く手を当てながら態勢を崩す。同時に彼の腹部、丹田に右手を当てながら、先ほど弾き後ろへと吹き飛ばされそうになっている彼の腕を、もう片方の腕でつかむ。後は右手を押し出す様に前へと押し出しながら、左手を後ろに引くだけ。さすれば敵は半円を描きながら地面に叩きつけられ、死亡するって寸法だ。まぁそこまではしないけどさ。


とりあえずこの技術を使えば相手の突進を受け止めながらついでに大ダメージを与えられるって寸法ね。うんうん、兜将軍しか出来ないって聞いてたけどやってみれば案外できるじゃん。



(あとは殺さない程度に……。)



地面に叩きつける瞬間に、彼の手を離すことでその衝撃を和らげてやる。けれどいくら弱めていると言えど、完全に0になったわけではない。地面に叩きつけられた衝撃と腹部を押し込んだせいで内臓が破裂したのだろう。口から緑色の液体を吐き出しながら後ろに吹き飛ばされるセミ男。


血から若干酸の匂いがしたが、まぁこれぐらいなら別に体や服に掛かっても問題はない。私の糸すら溶かせないそれに意味はないのだから。っと、これ以上痛めつける必要はないし、“次のステップ”に進みましょうねぇ。



「あらら、脆いですねぇ。」


「か、はッ!? そ、その。技は……!」


「技? あぁちょうどいいので使ってみたのですよ。にしてもまぁ、量産型とはいえ“デスカンパニー”に連なるものがその程度とは、恥ずかしいとは思わないのですか?」



そう言いながら、地面に転がる彼に向かってゆっくりと近づく。腹部にダメージを受け過ぎたのだろう。碌に体がを動かせない彼であったが、首だけは動かせるようだ。未だ瞳には闘志が残っているが、やはり私の口から本来出てくるはずのない単語が出て来たことに対する驚愕の方が大きいのだろう。


一部だけ人間状態から人蟲状態へと移行し、腰から1本の足を延ばしながら彼に向かって毒を打ち込む。麻酔と治癒力増強の効果がある毒だ。どうせ最後には全員殺すが、だからこそ今だけは優しくしてやろう。



「!? な、何故! 何故その名を! その、足はッ!?」


「何故って……、これで、十分でしょう?」



一瞬だけ顔を手で隠し、まるで赤子をあやす様に私“本来”の顔を見せつけてやる。


彼の顔が、まるで神を見たかのように、驚愕と歓喜に染まったのは言葉にせずとも理解できるだろう。






◇◆◇◆◇





時間は少し巻き戻り、彼女たちへ。師匠によって思いっきり大空へと放り投げられたジュエルナイトたちときりんは、ちょうどこの遊園地のシンボルとも呼べるお城、その中腹に着弾するように飛翔していた。高さにして頂点は約300m、結構な高さだ。常人なら着地と共に即死は免れないだろう。


勿論アカリたちもとても驚いた、何せ急にこんな高さにまで放り投げられたのだ。けれど師匠の規格外さは知っているし、自分たちもこれほど高くはないとはいえ、高所での戦闘は経験済みだ。最初の悲鳴こそ上げれど、すぐに冷静さを取り戻し、変なところに着弾しないよう姿勢制御を始めている。


けれどきりんからすれば……、こんなの初めて。



「ぴ、ぴぇぇぇえええええ!?!?!?」


「ほ、ほらきりんちゃん落ち着いて! 大丈夫大丈夫!」


「だ、大丈夫じゃないですぅぅぅ!!! といかあの人! ほんとに人間なんですかぁ!?!?!?」


「「「「ごめん、それはこっちが聞きたい。」」」」



アカリに声を掛けられるも、叫び声をあげながら疑問を口にしてしまうきりん。けれどその問いに関しては正直ジュエルナイトたちも常に抱いているもの。“蜘蛛”同様その善性は信用できるのだが、同じ生物であるかのどうかという確証は一切得られていないのが“九条恵美”である。正直まだ『実は違う星からやって来た戦闘民族のエイリアンだった』と言われた方が信じられるレベルだ。


『師匠だから』で電気を操ったりしていることを無理矢理納得しているが、正直あんな存在を同じ人間としてカウントしていいのかは一番九条恵美に懐いているアカリですら、疑問しか持っていない。



「まぁ、ねぇ。うん……。」


「とりあえず心の平穏のためにも、“そういう人”って感じで受け入れた方が楽だよ。うん。けどまぁ毎回私たちの予想を上回ってくるせいでユイナ先輩は大体フリーズしちゃうけどさ。」


「……正直、あの方の人体を詳しく検査して学会に発表でもすれば世界がひっくり返る気がするんですよね。」


「「「わかる。」」」


「と、と言うか! なんで皆さんそんなに冷静なんですか!? と、と言うか! お、落ち始めたぁ!?」



全く動じずいつも通りの会話をするジュエルナイトたちに、頂点へとたどり着き落下し始めたことに悲鳴を上げ始めたきりん。何故か視界に真っ赤な川が見え始め、向こう岸にいる彼女の母親がこっちに来るなと叫んでいるのが聞こえてしまう。


流石にこれ以上放置は不味いし、きりんの言う様に落ち始めた。そろそろ気合を入れなければならないと全員で顔を見合わせた彼女たちは、一斉にその手に握られていたジュエルを胸に掲げる。



「いくよ! みんな!」


「うん!」「あぁ!」「えぇ!」


「「「「変身ッ!」」」」



彼女たちがそう叫んだ瞬間、その手に握られていたナイトジュエルたちが感情に呼応。精神エネルギーを増幅させ、彼女たちに無限の可能性を与える。それぞれが適応した宝石と同じ髪色へと変化していき、その服装も鮮やかで美しい戦装束に。いくつもの戦いや不条理を乗り越えたことを宝石たちが強く評価したのか、より輝きを増したジュエルナイトが、大空にその姿を現す。



「煌めく輝き! ユアルビー!」


「照らす輝き! ユアダイヤモンド!」


「移る輝き! ダークパール!」


「示す輝き! ユアエメラルド!」



「いっくよー! ジュエルナイト! お城に突撃だぁー!」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー






〇サルでも解る! ネオ・デス博士の怪人講座!(デスカンパニーの残党編)


はーはっはっ! ごきげんよう諸君! ネオ・デス博士である! 今日もサルに等しい貴様らの頭脳でも理解できるように“懇切丁寧”な説明をしてやろう! さて今回は現在裏社会に置いて活動、及び裏社会の奥底で潜伏中のデスカンパニー残党について解説してやろう! 以前から少し質問が飛んできた故にな、この機会に説明してやろうではないか! では普段通り我が最高傑作であるクモ女の基本スペックを眺め心に落ち着きを取り戻しながら話を進めて行こう! はーはっは!!!


■身長(人間形態):190.5cm

■体高(怪人形態):240.8㎝

■体重:320.5kg

■パンチ力:135.3t

■キック力:289.9t

■ジャンプ力:382.0m(ひと跳び)

■走力:0.1秒(100m)

★必殺技:スパイラルエンド


まず、デスカンパニーの残党だが、ピレスジェットに本拠地を破壊されたことにより最盛期は全世界の9割を支配していたが、現在4割ほどの支配地を保つに至っている。これはもちろん全世界を飛び回るピレスジェットが発見次第消し飛ばしていっているというのも理由の一つではあるが、組織が崩壊したことに乗じて独立したり、残っていた他組織に吸収されたりしたのが理由であるな。


だがそれでももし悪の秘密結社でランキングを付けるとすれば、以前として1位はデスカンパニーという具合になっている。保有する特殊資材量は粗方クモ女に詰め込んでしまった故そこまで多くないが、戦力技術共にトップ、という形だな。


しかしやはり首脳陣が全滅したことで分裂は避けられず、大まかに分類するとすれば現在4つの派閥が存在している。


まず1つ目は離脱した存在やそれ以外の組織を攻撃し元の支配圏を取り戻そうとしている“拡大派”。

2つ目はとにかく首領を何らかの形で復活させようとしている“首領派”。

3つ目は現在上級幹部級で唯一生き残っているクモ女に忠誠を誓い組織の維持をしながらクモ女を探しているシカーダアーミーを始めとした“クモ女派”。

そして組織の維持に重点を置き裏社会の奥の奥に潜んだり、表社会に強い基盤を築こうとしている“潜伏派”。

とこのようになっている。


内訳としては“拡大派”20%。“首領派”25%。“クモ女派”45%。“潜伏派”10%。という感じだな。拡大派及び潜伏派は首領かクモ女かのどちらが組織のトップに立てばその派閥に合流する可能性が高いため、実質首領を復活させるかクモ女を見つけるか、の勝負になっている感じよ。


ちなみに首領の支持率が低いことに関してだが、ピレスジェットとの直接対決に負けた上に本人が陣頭指揮を執った作戦の失敗率が高いこと、また人事に関しての失策が多く、首領本人よりもその肩書に忠誠が集まっていた、ということがバレたのが理由になるな。


対してクモ女の支持率が高い理由としては、半ば神格化されてるのが理由であるな。ピレスジェットが攻め込んだ本拠地にいたのにも関わらず唯一生き残り、本人がポンするせいでたまにその痕跡が裏社会に出回る。クモ女からすれば悪の組織を屠っているだけだが、デスカンパニーの残党からすればクモ女やデスカンパニーに逆らう逆賊を処分しているようにしか見えない(クモ女派閥も結構クモ女本人に消されているのだが、死人に口なし。というか会話する前に消されてる。)というわけよ。……あと私が奴に関するデータをデスカンパニーが管理するデータベースに残していたせいで結構詳細なものが残っていたというのが理由だな。写真データは“怪人クモ女”としての顔だけだが、当時の正確なスペックは残っていたようだったし。


あぁ、それと余談だが、たまにクモ女派閥が暴走して『より大きな騒ぎを起こせばクモ女様が我々を見つけてくださり、お褒めの言葉を頂けるはず!』と考えてしまい小国3つほどを吹き飛ばしてしまったことがあったのだが、直後に現れたピレスジェットによって討伐されたことがあったりするぞ!


ではな諸君! 次の講義まではもう少し真面な頭脳を手に入れておくがいい! さらばだ!

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