古代魔王は規格外〜存在しない魔法で過ごしていく〜

ゴブスラ

第1話 転生と謎の正体

 俺・闇光蒼やみこうそうは、どこにでもいるごく普通の高校生。

 現在、自転車で家の近くの河川敷を立ち去ろうとしている。

 今でも思う。なぜ、のかと。


 いつも早めに学校に来てしまう。鍵を開けて、誰もいないことを確認してから居眠りをする毎日。だが、今日はなぜかしたいとは思わなかった。

 そのため、ラノベを読み始めることにした。


「おやおや、元気がないようだけど大丈夫か?」

 どこからか学年1位の天才からの声が聞こえる。

「しんどいのか?それとも寝てないのか?」

「……」

 クラスメートではあるが、関係性はない。1度も話したことがないからだ。

 気のせいだと思いたい。

「何、無視しての?……僕がいやなのか?」

 いやではないが、君みたいなメインキャラとは関係性を持ちたくないだけだ。

「……」

「なんだよ。何か言いたいのか?無視されると分からないではないか」

 反応がほしいのだろう。天才は読んでいるラノベを取り上げ、ずっと見てくる。

「なんなんだよ!!本を返せ!!」

 ラノベを取られたことにムカついて怒鳴ってしまった。

 冷静に考えれば、俺がわるいのだろう。

「やっと、喋ってくれた!闇光君の声を聞けて、僕は嬉しいよ!」

 ニコッと微笑みながら、本を返して、立ち去った。

 天才は俺を友達と思うのだろうか。思うか思わないかはどうでもいいな。

 その後、天才は俺に喋りかけることはなくなった。


 今日の出来事を振り返りながら、自転車で河川敷を立ち去ろうとした。だが、帰宅中めまいを起こし、自転車の下敷きになるように倒れ込んだ。その後、彼は動かなくなった。


「……」

「……」

 気がつけば、白黒の異空間にいた。

「気がついたようだな」

 目の前に悪魔のツノ、天使の羽みたいなものを付けた幽霊みたいな存在が現れた。

 この幽霊を神悪かみあくと呼ばせていただこう。

「ここは?」

「天地。天国と地獄の混合境こんごうせかい。分かりやすく説明すると、黄泉の国みたいなところかな」

「黄泉の国……か」

 黄泉の国と聞いて、予想は的中した。

「もしかして、俺は死んでいますか?」

「うーん。そうだね……言いたくはなかったけど、死んだね」

 やはり、死んでいた。今後どのように生きていけばいいんだ。

「どのようにして生きていけばいいのだろう。と思っているようだね」

 心が読まれた!?

「なぜ、そう思うのですか?」

「顔に出てたよ!」

 顔に出てた!?心を読むことがなくてよかった。

「……やっと、完成した……」

 小声でボソッと小風のように言った。

 完成?何を作ってるというのだ。

 突然、足下に魔法陣が展開して、光が俺を包み込んだ。逃げないようにしっかりと。

「……じゃーね!異世界ウルガトハルザに行ってらっー」

「ーしゃい……」

 神悪の声が最後に聞こえた気がした。

 そして、神悪だけがその場に残された。

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