第39話 夜明け前(リタ視点)
何だかふわふわした気持ちで、リタは目を覚ました。楽しい夢を見ていた気がする。部屋の中は暗い、まだ夜明け前のようだ。
隣にはフォルカが寝ていた。
昨夜何があったのかを思い出し、顔が熱くなった。恥ずかしいけど、幸せな気持ちだった。
リタは夢かもしれないと、心配になって自分の右頬を抓る。痛かった。だが、それでも不安で左頬も抓る。やっぱり痛い。
感覚はクリアで、夢ではなさそうだった。
ひとまず服を着ようと、体を起こして、立ち上がる。すると内腿を液体が流れていった。何が起きたのかすぐに理解し、慌ててベッドの横にかけてあった服のポケットからハンカチを出して拭く。
ハンカチを上手くこっそり洗わなくてはと思いつつ、いそいそと服を着込む。
リタは鏡の前に移動して、襟を引っ張って服の崩れを整え、髪を上げて止める。これでいつも通り、そう思って、でもすぐに首を横に振る。
もう、昨日までとは違う。格好は同じで、仕事も同じだけど、フォルカとの関係は変わった。
ベッドの端に腰掛ける。フォルカはまだ寝ているようだった。どこかあどけない、可愛い寝顔だった。キスしたいなとリタは思った。寝ている主にそんなことして良いかなと、少し躊躇ったが、昨日あれだけしたのだから構わないだろうと、頬に軽く口付けた。フォルカの頬はすべすべで心地よかった。
「フォルカさま、好き」
口に出すと頬が緩む。これからは、フォルカに気持ちを隠さなくてもいい。
時と場所は選ぶけど、好きな人に好きと言ってもいいのだ。それがとても嬉しかった。
いつの間にか頬を涙が伝っていたのを、指で拭う。
日の出が近いのか、鳥が鳴いた。その音でだろうか、フォルカが身動ぎして、目を開ける。
「おはようございます。フォルカ様、大好きです」
全力の笑顔で、リタはそう言った。
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非常に短くて恐縮ですが、前の話とページ分けたかったので。
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