第12話 いつもの訓練
リスティを送った俺がガスティーク邸に帰ると、庭で家臣の魔法使い5人が攻撃魔法の訓練をしていた。
ちょうどいい。まだ日没までは時間があるし、俺も入れて貰おう。
俺が「おーい」と声をかけると彼らは手を止めこちらを向き、背筋を伸ばす。
「フォルカ様、おかえりなさいませ」
「まだ魔力残ってるようなら、俺も少しやるから付き合ってくれ」
「承知いたしました。いつものですね。お着替えはどうされますか?」
「このままでいいさ。5人コースならまず大丈夫だろう」
「分かりました。では早速」
家臣達は俺から15メートル程の位置に整列する。
「始めてくれ」
俺がそういうと、彼らは攻撃魔法を構築し、一斉に放つ。火属性、水属性、土属性派生の雷と、多様な攻撃魔法が飛んでくる。万が一直撃しても死なない程度に威力は抑えてあるが、それなりに迫力のある光景だ。
俺は足元から水を生成し攻性の聖属性魔法を付与すると、
聖属性魔法は他属性に対する阻害能力に優れる。水の鞭が唸り、第一波の攻撃魔法を全て叩き落とす。
家臣の魔法使い達は攻撃魔法を全速力で連発する。俺は鞭の数を5本に増やし、飛んでくる攻撃魔法を防いでいく。
十分余裕がある。最近少しサボり気味だったが、勘は鈍っていない。
なら、アレもやっておくか。
俺は防御を続けながら、魔法で小さな火の玉を作り出す。そして、
皮膚が焼け、激しい痛みが脳に叩き込まれる。
火傷の痛みを無視し、魔法操作を続ける。痛いのは嫌いだが、戦場において負傷時に魔法精度を落とさないことは重要だ。いざというとき死にたくないので、訓練は欠かせない。
迎撃を続ける。少しづつ脳に疲労が溜まっていく。
まだ撃ち漏らしはないが、ヒヤリハットは2回。
余裕は消えていき、必死に迎撃を続ける。そろそろ厳しいな、と思ったところで攻撃が止んだ。
「フォルカ様、そろそろ魔力が尽きます」
「わかった。終わりにしよう。皆、ありがとう」
俺は治癒魔法を使って左手の火傷を治す。痛みが消え、ふぅと息をつく。
リタが駆け寄ってきて、ハンカチで汗を拭いてくれた。晩秋ではあるが、火傷のせいで脂汗が出ていたのだ。
「フォルカ様、あまり無茶は……」
「大丈夫だよ。このぐらいよくしてるじゃん」
「そうですが、言い続けます。普通は手を焼いて訓練なんてしません……将来子供にさせたら駄目ですよ」
まぁ、それは確かに。
「子供には絶対させないよ。痛いもん」
「……フォルカ様」
リタが少し呆れてる。はい、俺は勝手に7歳からやってました。
いや、だって生まれ変わって『魔法』なんて凄い力があったら頑張りたくなるじゃん? と心の中で良い訳をする。
「フォルカ、帰ったか。ちょっと来なさい」
声に振り向くと、玄関のところで父が手招きしている。なんだか少し疲れたような顔だ。
「わかった」
俺は父の所に向かう。そのまま屋敷の中へ。
父は地下に下りていき、ドアの前で立ち止まる。ここは父の地下工房だ。
「リスティ殿下のネックレスが完成した」
おお、遂に。かなりワクワクする。
父は『確認』の日以前から時間を捻出してはリスティが結婚式で身に付けるネックレスを作っていたのだ。
新郎父の手作りと笑うなかれ。父、ヘンリク・ストラ・ガスティークは金属や宝石の魔法加工において国内随一の使い手なのだ。
父がドアを開ける。工房の机の上に台座が置かれ、ネックレスが飾ってあった。
プラチナと大量のダイヤモンドで作った見事な品だ。父が軽くネックレスの飾られた台座をつつくと、30個以上はあると思われるダイヤがゆらゆらと揺れ、煌めきを撒く。
凄い。たぶんダイヤがそれぞれ小さな
「父さんありがとう。絶対似合うと思う」
「なに、当然のことだ。あいつの娘がフォルカの妻になるのだからな。労力も金も惜しむ筈がない」
父はそう言って、目の下に少し隈のできた顔で笑った。
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