第5話 いつも通りたたき起こされたんだが?

「お嬢様。おはようございます。朝ですよ」


 アレからなんやかんや7年がたった朝。俺はレーヴェに叩き起こされていた。


「ん。あと2年だけ……」


「冬眠してんですか貴方は!!」


 激しいツッコミとともに布団をふっとばされた。

 ……ダジャレを言おうとして言ったんじゃないぞ。偶然。ただ偶然に実際に起きたことを書いたらこうなっただけだ。うん。そうだ。


「全く。今日も部屋を魔法の『氷壁』で固められていたせいで解凍にただでさえ時間がかかったんですから……早く起きてください。今日から学校じゃないですか」


 あー……そうだった。昨日まで淡々とレーヴァと剣術の訓練をしてたから覚えていなかったけど今日から王都の名門校『アップグルトン』に通うことになったのだった。

 恐らくそこにはこの世界を救わんとする勇者(主人公)も俺以外のヒロインもいることだろう。うん。そう思ったら少し楽しみになってきた。


「仕方ないなぁレーヴェは……それにしても、今日から学校かぁ……友達できるかな……」


「それは多分大丈夫です。お嬢様見た目だけは天使みたいな美少女なので」


「ん? 見た目だけはって言った?」


「部屋を20回以上破壊して屋敷の畑をすべて灰にして焼畑農業に変えた人が何言ってるんですか。殺しますよ?」


 ぐっ、確かに……毎年レーヴェが楽しみにしていた苺を全滅させたのは何を隠そうこの俺だ。


「で、でも……そんな事をする気はなかったんだよ! ただ屋敷のみんなを楽しませようとして3ヶ月研究した『魔法花火』を放っただけじゃないか! 悪意はなかったんだ!」


「魔力の調整おかしいでしょ! 1000坪の畑を丸々全部燃やす花火なんて聞いたこと無いですよ! あともう10メートルでも位置がずれてたら屋敷は火に包まれていましたよ!」


「ご、ごめんなさい……それは本当にごめんなさい……」


 レーヴェは、はぁ。と大きなため息をついてこっちを一瞥した。


「まあ、良いです。どうせ今日からも迷惑をかけられるんですし今どうこう言ったって無駄です死ね」


「最後なんか殺意こもってなかった⁉ き、気のせいだよね」


「さぁ、どうでしょうね」


 にひひ。と不敵な笑みを見せている。

 いつか寝首を掻かれるんじゃないかな。気をつけよう……レーヴェにはもう少しだけやさしくしよう……。


「ま、とりあえずちゃっちゃと準備しますよ。服脱いでください」


 かなり殺意のこもった声で言われた。怖い。


「わかったよー ごめんって……そんな怖い声で言わないで」


 ん? なんだろう。レーヴェからやけに視線を感じる。それも胸辺りに。


「……………………なんなんですかっっっっっ!!!!!」


 大きな声で叫ばれた。部屋を崩壊させた時によく聞くレーヴァの叫び声よりも大きな声で。ど、どうしたんだ……。


「うわぁ、急に叫ばないでよ。びっくりした」


「なんで……なんで、お嬢様はこんなにデカいんですか!」


 ガシッ――と俺の胸を鷲掴みにしてきた。何してるんだこいつっ。


「ちょ、ちょっと、レーヴェ、アッ……そんな……激しく触んなっ」


「あえいでるんじゃないですよ! 7歳の時までぺったんこだったのに翌年からみるみるうちにデカくなりやがりましたね。今となったら私なんて見る影もないじゃないですか! お嬢様の体系は私と同じ幼女体型なのに! 140センチ台でしょ!」


「そ、ソンナコトナイヨ……153はあるもん……」


 まだ、レーヴァは俺(きーたん)の胸を乱暴に扱っている。


「嘘つかないでくださいッ! 私で147ですよ! それと同じかそれ以下のお嬢様がそんなデカいわけ無い!」


「も、もういいでしょ! その手をはなしなさい!」


「嫌です! 私よりデカくなった罰です。あと5分は触ります! なんですかこの胸は将来絶対、ぜーたい、垂れますよ」


「変なこと言うなよ!」


「……細いくせに出るとこしっかり出てて……理想の美少女体型しやがって!!」


「それはもうけなしてるというより褒めてない⁉」


「まるで吸い付くように指が肌についてくる……私の胸じゃ起きない現象です!」


「感想言ってるんじゃない」


 ベシッとレーヴェの頭にチョップをかました。


「痛たたた……はあ、なんだか疲れました。今日はもう仕事辞めたいです。自分の胸に絶望しました」


「おうおう……急にどうした」


「お嬢様の胸そうですね。恐らくDですね」


「何予想してるんだよ!」


 咄嗟に俺は自分の胸を隠した。なんかもう7年も女子でやっていると自然と動作も女子っぽくなってしまった。まあ、自分で自分の胸はもんだことしか無いのだけどね。きーたんの胸を触ってるのと同じことだしね☆ 仕方ないよね☆

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