第4話 剣術は弱すぎるんだが?

「ほ、本当にやるんですか?」


 訓練場で模造刀を選びながらメイド少女が話しかけてきた。


「やるよ。やっぱり、剣術も覚えていないとね」


「どういう心の変化ですか……昨日まで誘っても『私には魔法があるのー だからちまちまと近くで戦わなくても遠くからドッカーン!って撃つだけで終わるの。だから剣なんて必要ないっ!』って言ってたじゃないですか」


「すごくきーたんが言いそうなことだ……」


「んー お嬢様でも使えそうな奴だと……これとかどうです? 『霊剣』昔旦那様が幽霊を切った時に落としたものらしいです」


 おぞましいオーラを漂わせる変な形をした剣を俺に渡してこようとした。


「なんでそんな恐ろしいのを渡してくるの? 普通のないのかよ普通の」


「ちぇ……この剣気持ち悪いからお嬢様に渡してここからなくそうと思っていたのに」


「心の声ダダ漏れだぞー」


 全く何なのだこのメイドは俺の事嫌いなのか? 俺が何をしたというのだ。ただ魔法で部屋を崩壊させただけじゃないか。


「それじゃあ、普通の訓練用の木刀を渡します。これならいいですよね?」


 どこからどう見ても修学旅行で調子に乗ったガキが買うアレと同じやつだな。ん? 俺かい? 持ってるに決まってるだろ。


「どうします? お嬢様。私が本気で行ったらお嬢様多分死にますよ」


「そんなに強いの!?」


「はい。なんて言ったって私『魔剣のレーヴェ』と巷で言われていますから」


 新情報2回目だ。ついにこのメイド少女の名前が判明した。レーヴェというらしい。


「はへー 掃除魔法しか使えないメイドだと思ってた」


「そんなポンコツメイドじゃないですよ!」


 ぷくー。と頬を膨らませるレーヴェ。


「とりあえずお嬢様は訓練初めてですし私に打ち込むだけで今日は終わりにしますか」


「それだけでいいのか?」


「はい。私に一撃でも当てられたら訓練場で魔法少しなら撃っていいですよ」


「いいの!?」


「当てられたら……ですけどね」


 レーヴェは意味深に笑みを浮かべた。


「ふっふっふ、餌を渡されたきーたんは無敵だぞ……舐めるな!」


「さあ、どこからでもかかってきなさい!」


 俺は思いっきり木刀をレーヴェに向けて放った。

 しかし、その一撃を難なく避けて1,2歩バックした。


「適当に剣を振っているだけでは私に当たりませんよー」


 すかさず次の斬撃を顔面に飛ばした。かなりいい線を言っていた気がする……がまた難なくかわされた。


「だめだめー 少しいい線の斬撃を出せていますがそれじゃあコボルトも倒せませんよ」


 ぐっ。負けじと怒涛のラッシュを放ったが攻撃をすべて既のところで防いできた。

 俺の猛攻が、ルーヴェを追い詰める……しかしどれも当たらない。

 木刀は意外と重さがあり、振っている時についふっ飛ばしてしまいそうになる。


「まだまだですね。ド素人です」


「う、うるさいな! 仕方ないだろ」


「おっ、今のは惜しかったですよ」


「軽々と避けてるくせによく言うよ……」


「まあ、モンスターと戦ってるほうが緊張感がありますけどね」


「ぐぬぬ……とりゃ!」


「不意打ちですか! でも、当たらなければどうということはないッ!」


「赤い彗星のシ◯アみたいなこと言ってるんじゃない!」


 その後も俺達は怒涛(ルーヴェはそんな事なさそうだが)の戦いは終わった。


「終了!」


 少し離れたところにいた髭面のおっさんに止められた。少しイケオジらしい顔つきをしている。


「お嬢様。わかりましたか? この7年間訓練を一日もしなかったツケが回ってきたって」


「ぐぬぬ……訓練しなかったのは俺じゃないし……きーたんだし」


「理由のわからないこと言ってないで部屋に戻りますよ」


「部屋ってどこに?」


「……そうでした。朝っぱらから部屋を一つ無にしたんでした……この人」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る