雪といえば sideノア

 たいぶ冷え込むようになったある日。

 今日辺り雪が降るのではないかと思われるような寒さだった。


 今うちの班は北の森に行く事になったため、事前準備を着々と進めている。

 ちやみに今日は執務室での仕事は書類整理だった。


「あ」


 静かな部屋のなかにアイナの声が上がった。

 なんだろう、と顔を上げると既にアイナは窓から外を見ていた。


「あ、雪が降ってきたっす」


 ウォルターも一緒に窓にへばりついている。

 そんなにはしゃぐものなのかと隣に並んでみる。

 若干、目をキラキラさせて雪をみているアイナがいた。


「雪ってそんなに珍しい?アイナちゃんの世界は雪が降らないの?」


 珍しいアイナの顔を見ながら質問してみる。


「降りますよ。降る場所は1m超えで降ります。私の住んでたところは年に一、二回しか降らないし、10㎝も積もったら大変ですよ」

「へー。じゃあ、積もったのを見たらびっくりするよ」

「えー」


 嬉しいのか嫌なのか微妙な顔をしている。


「雪って言えば、何を思い浮かべるっすか?俺は雪だるまっす!!」


 アホなことを言い出したウォルターを見ながら考えてみる。


「寒いから女の子と自然に手を繋げるよね。で、そのままポケットに入れるんだよ~」


 全力で引いているアイナとウォルターがこちらを見ている。


 だめ?


「アレンは?」

「……雪グマ」


 その単語を聞いたアイナ以外が遠い目をする。


「雪グマ?」

「雪グマは、冬に活動するクマで凶暴なんです。出ると討伐しにいかないといけないんです」

「へー?」


 雪グマにたいして、良い思い出が何もない。

 早く話題をそらさなくては。


「リアムは?」


 ウォルターが聞いている。

 ナイス!


「みかん」

「みかん?」

「あぁ、リアム、みかん好きだよね。冬になると指が黄色くなるぐらい食べてるもんね」

「あー、そうそう。じゃぁ、アイナちゃんは?」

「うーん?ホワイトクリスマス?」

「なんすか?そのホワイトクリスマスって」

「クリスマスは神様の息子の誕生を祝う日、だったかな」

「え、なんか情報量が多くて良くわかんないっす」

「その日に雪が降るとホワイトクリスマス」

「へー。なんか素敵だね」


 しかし、アイナは全然素敵な顔をしていない。

 最近はちょっとずつ表情を出してくれるのに、嬉しいとか悲しいとかの素直な感じじゃなくて複雑なんだよな。


「どうしたの?」

「いえ、クリスマスと私の誕生日が近いんです。だからいつも合同だったなぁって」

「お誕生日会が?」

「会もプレゼントも全て。プレゼントはお金を渡されて好きなものを買って来なさいだったから。プレゼント感があまりなかったというか……ちなみに横領はご法度でした。自分のお金をプラスして高いものを買うのはオッケーですが、領収書は提出しなさいでした」

「それは……」


 なんとも言えないでいるのに事も無げに続けるアイナ。


「冬休み入っちゃってるから基本私は家にいて、そんなんだから誰かからプレゼントもらうなんて最近してないなーって。まぁ、友達いないけど」


 今年は僕がプレゼントあげるからね。

 そう心に決めたノアだった。

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