冬が来る前に

 結局押しきられた形でレティシアに手当てをされ、包帯でぐるぐる巻きにされた。

 手当てが終わり図書室に戻ろうとするとビュッと冷たい風が吹く。


「さぶっ」


 ぶるぶるっと身震いをする。

 ちょっと前まで朝晩が涼しくなってきたと思っていたのに、最近は冷え込むの表現に変わりつつある。


「日本でいうと冬かなぁ。何月ぐらいだろう?」


 向こうと同じように12ヶ月で一年、一日が24時間だが、実際に向こうと一緒かどうかなんてわからない。

 季節的には11月ぐらいかなぁ?12月初旬?ぐらいか?

 ちなみにこちらの月の呼び方は、向こうの誕生石と一緒だった。

 つまり、12月1日だったとしたら、ラピスラズリの1日となるらしい。


 こっちって雪が降るのかなぁ、なんてのんきに思いながらも図書室に行くと事は全て終わっていた。


「場所を特定できましたよ」


 アレンがさらりとぶちかましてきた。


 がーん。

 私がいない方が効率が良かったなんて……

 私、無能すぎて笑える。

 ははは、はぁ。


「ヨカッタデス」


 まぁ、わかったならいいよ。

 わからないよりいいよ。うん。

 ちょっと落ち込み気味になりながらも会話を続ける。


「で、どこだったんですか?」

「ざっくり言うと北の方の森ですね」

「いきますか?」

「誰かが現状確認に行かないといけませんが、行きたいんですか?」


 まさか本気で言ってます?という顔で見返される。


「まぁ、外に出るって言っても街だけしか行ったことないので、行ってみたいという気持ちは正直ありますね」

「そう、ですか」


 あー、考え込んでしまった。

 ムリに行こうとは思ってないので、どうやってでも行こうとは言いませんよー。

 そんなに考え込まなくても大丈夫ですよー。


「それもそうですね。行ってみますか?」


 あれれぇ?

 考えの結果、どうやら行く方向で考えがまとまったらしい。


 てか、いいの?


「……結構な当事者ですから」


 会っちゃったから?


「では、それで予定を調整しましょう。あと、準備が要りますからね」

「準備?」

「先程も言いましたが、『北の森』なので、それなりの準備がいりますよ。いまからの時期、冷えますからね」


 え、まさか。


「雪とかって……」

「まぁ、それなりに?」

「ちなみにここら辺は?」

「北よりかは降りませんが、まあまあ降りますね」


 まじか。

 うぅ。私の足と耳よ。

 これからの時期、霜焼けに耐えてくれ。

(なる前提でお送りしております)


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