逃げた幸福
「なんでこういう大切なことを黙っているのかしら?」
結果、怒られた。
レティシアに聞かれたので、めんどくさいと思いながらも真面目に返事をする。
「魔法でも治らないものが、誰かに言ったら治るんですか?ただ迷惑が増えるだけなら言わなくても良くないですか?」
「なんでまたそういう風に言うかなぁ」
私が口を閉ざしていれば、何事もなく過ごせるでしょう?私が我慢をしていれば、みんなが笑っていられるならそれでよくない?めんどくさくなくて。
当然でしょう?とレティシアを見上げる。
「相変わらず自分を卑下したものの考え方をしますね」
アレンがあきれ顔で会話に入る。
いちいち細かく説明するのはがらじゃないんだ。
「わかってはいましたがね」
苦笑いと共にため息をつかれる。
「ため息をつくと幸せが逃げるらしいですよ。私は、幸せが逃げたからため息をつくと思うのですが、どうでしょう?」
「話をすり替えないで下さい」
ばれた。
「ってか、レティは何を確認したかったわけ?」
こうなったら正面切って話題を変えよう。
「あ、それ説明してなかったわね。えーっとね。実は例の不思議な事件を調べていたら、一人不安の種を潰したっていう人が出てきたの」
私以外に?
「あなた以外に。その人は、不安をとられた時に喜びのあまりジャンプしたら、服の裾を踏んで転んだらしいの。不安の種の上にね」
うわー、どんくさいなぁ。
人のこと言えるほどの運動神経はないけど。
「で、その時の怪我が回復魔法も効かなければ、治りも遅かったという情報を聞いたのよ」
さいで。
「あなたもそうなのよね?」
「まぁ、そうですね」
プラプラと手を振ると直ぐにアレンに腕を掴まれて止められる。
「そういうことは止めて下さい」
「もう!!ほら、手当てしに行くわよ」
いや、あなたが包帯を取れって言たからこうなっているんじゃん。
結局息抜きにと外に出たのに、引き抜きにあってしまった。
「図書室での調べものが固めてはありますが出しっぱなしなしのそのままじゃ不味くないですか?」
「わかりました。アイナはレティシアについていってください。私は図書室に戻ります」
えー。ずるくない?
「狡くありません。手当てしたら戻ってきていいですよ」
その言い方、なんか腹立つ。
私はひっそりとため息をついた。
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