やるならば全力で

「それで今、第三とレティシア班が調査しているが、お前さんも身のまわりに気を付けたほうがいいだろうと思ってな。なるべく一人でうろちょろしないようにしろ」


 うろちょろしないよ。引きこもりだからね。

 なにその、信用ならないみたいな目は。


「こういう言葉があります。『いかのおすし』という言葉を知っていますか?」


 ルーカスの言葉に、なんだか、ん?となる。

『いかのおすし』?なんか聞いたことあるような。


「説明しますと、『いか』は、変な人にはついて『いか』ない。『の』は、怪しい話には『の』らない。『お』は、危ないときは『お』おごえを出す。『す』は、『す』ぐ逃げる。『し』は、大人に『し』らせる。ですよ。」


 にこにことしながら説明をされて、思い出した。

 小学生の時に防犯教室で習った言葉だ。

 その時に聞いたものとは、ちょっと違うけどほぼそれだった。

 こちらにもその考え方があることに驚いた。


「あー。ルーカスは、語呂合せみたいなのを考えるのが好きなんだ。変なことを言い出すが気にすんな」


 気にすんな、と言われても向こうじゃそういったものが一般的だったからな。

 ぼんやりと考えているときに、ひらめいた。


「あ!私が囮になれば良いのでは?」


 すごく言い案がひらめいた!!と思い、発言するのに、二人がはぁ?みたいな顔をしている。

 説明をしてしんぜよう。


「まだ、見つかってないものをひたすら探すのにも人手がいるじゃないですか?だったら、使えるものはなんでも利用すればいい」


 これの大前提としては、「私が狙っているのなら」が一番大事だけどね。まさかの自意識過剰だったら、恥ずかしすぎるけど。


「またお前は……」


 ぽそっとこぼしたオリバーの呟きはよく聞こえず、首を傾げる。


「だって、こっちから探すより、効率的です。まぁ、のってきてくれないと意味ないけど」

「しかしなぁ」

「いや、渋る理由は何処にある……」

「先日怪我したばっかりだろ。怖いとかそういった気持ちはないのか?」

「ありますよ?でも出会い頭に出会ってしまうより、対策していた方のがいいですよね?私も周りも」


 こんだけのスパンで命を狙われていますと言われて不安になるのは当たり前だ。

 しかし、動き出してしまったものは仕方がない。こうなったら止めるより乗っかった方のがいいだろう。


 グチグチ悩むのは、めんどくさいじゃん。


「思いきりが、よすぎるだろ」


 オリバーが頭を抱えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る