討伐完了?

「死、んだ?」


 じわじわと広がっていく黒い血溜まりの中にいるそれは、ピクリとも動かない。

 そして、まるで生気が吸いとられて行くようにそれは、ミイラのような枯れ木の枝のようになものになってしまった。


 流れていく血が赤色じゃなくて良かった。

 大量の血をみたら、卒倒していたかも知れない。

 大量の流血なんてドラマとかでテレビを通して見慣れていても、流石に目の前の出来事は理解に及ばないだろう。


 ボーッと眺めていると路地の入り口からバタバタと足音が聞こえてくる。


 何人もの人たちがどやどやと現れた。

 普通の服を着ているが、緑のラインの入った腕章をしている。


 とりあえず、気配を消して様子を見ることにする。

 隅っこにいって体育座りで見学する。


 第三の人たちなのだろう。

 そりゃ、街中で警邏するのに抑止力としては団服のほうが役に立つだろうが、目立ち過ぎるのだろう。


 腕章なら仕舞っておけるし、便利だよな。


 多分この中で一番偉い人だろうおじさんが、アレンに話しかけている。

 他の人たちは入り口に黄色いテープを張ったり、検分したりている。


 こっちにも規制線とかあるんだ。


 一気にざわざわとしだし、人があちこちをいったりきたりする。

 一人の青年が私に気づき、何故か慌てた様子で、もう一人を連れてやって来た。


「失礼します。怪我の手当てをさせていただいても?こちらの彼は回復魔法が使えます。」


 言われて、自分の姿を確認する。

 無意識に左腕の傷を押さえていた右手の指の間からはだらだらと血が流れているし、無数の小さい擦り傷、切傷がたくさんある。


 認識をしてしまうと痛みがやって来る。


「ありがとうございます」


 ありがたく申し入れを受ける。

 すみに置かれていた木箱に移動し、座る。


 直ぐに回復魔法をかけてくれる。

 と、同時に青年が一番ひどい左腕に傷薬やら包帯やらで手当てをしてくれる。


 見ていると転んだ傷はすぐ治っていくのに対し、闇落ちからの傷は血が止まったり、少し傷が小さくはなるがなかなか治っていかない。


「闇落ちから受けた傷は治りが通常の傷より遅いのです」


 回復担当が説明してくれる。


「傷薬を渡しておくので使ってくださいね」


 青年も優しい。

 傷薬をおいて「お大事に」と去っていく。


 入れ替わるようにアレンがやって来る。


「すみません。直ぐに来れなくて。怪我の様子はどうですか?」

「大丈夫です」

「本当に大丈夫ですか?我慢しないで言ってください」

「大丈夫です」


 痛くないと言えば嘘になるが、耐性のおかげか我慢の範疇に入っている。手当てしてもらったし。


 なのにため息をつかれる。何故に?


「……では、説明をお願いします。何故、あのような行動をしたのですか?危険な相手に飛び込んでいくなんて!今回は怪我ですみましたが、一歩間違えば死んでいたんですよ!!」

「……ごめんなさい」

「理由を説明してください」


 前も思ったけど、正直に言わないと許してくれないよね。

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