闇落ち
いきなり突風を吹かせて逆上されても困るので、そよ風程度の風を送る。
靄に変化なし。
というか、増える一方だな。
どうする?次の選択肢!!
様子をみつつ、次の手を考えていると膨れ上がった黒い靄が一気に集束していく。
靄が晴れて相手の姿がよく見えるようになる。
上等な服を着ているのに不健康な顔色で目がくぼみ、血走っている。半開きの口からは、牙のようなものがみえる。息が白い。
そして、爪真っ黒で長く鋭い。
一言で言うなら「化けもの」である。
ヤバい気しかしない。
次の瞬間、その長い爪で攻撃してきた。
訳がわからないまま、とりあえず避ける。
運動神経が悪い割には、避けるのは得意だ。
ドッチボールをやると最後の一人になって、割りと生き残れるほうなのだ。
目の前にいるものはなんだ?
人間に見えない。
モタモタしていたら殺される。
もうちょっと有意義な殺され方をしたい。
どんなのか、説明しろと言われてもかわかんないけど。
こいつに殺されるのは、違うと言うことだけはわかる。
正当防衛で反撃をする決断を直ぐに下す。
幸いにも性格的にやるとなったらきっちりやれる子なのだ。
やるならば、全力で叩き潰す。
「キャー怖い」と言っていたら誰かがなんとかしてくれる人生など生憎送って来なかったから。
殺られる前に殺ろう。
避けながら、「ウインドカッター」や「ウォーターカッター」を繰り出していく。
お互いの攻撃は、かすりはするが当たらない。
そのなかで気付いたことは、彼それの傷から流れるのは赤い血ではなく、黒い血だった。
うわっ。きもっ。
もう、明らかに人間離れしてる。
人間離れした、元騎士に体力で勝てる訳がない。
そう思ってしまったのが運のつき。
躓いてその場に転んでしまう。
ここで死ぬの?
まぁ、通り魔に殺されるのと対して変わらない最後だな。
振り上げられた黒い爪が振り下ろされる前に反射的に目を閉じる。
しかし痛みは訪れない。
……痛くない?
目をうっすら開けると、アレンがたっていた。
「っ。遅くなりました」
何が起こったのか、相手は吹っ飛んでいた。
さすが、イケメン。
ナイスタイミングで助けにはいる。絶対イケメン補整だ。
「あれ、なんですか?」
ばかみたいなことを考えながら、茶化してみたものの発した言葉は震えていた。
「あれは『闇落ち』と呼ばれるものです。ああなってしまったら、もう人間ではありませんし、助ける方法もありません」
なんと。
じゃあ正当防衛がしっかりと証明される。
吹っ飛んでいた彼それが復活したので、話はそれくらいにして、どうにかしないとガクガクする足に力を入れて立ち上がる。
二対一になったのだから、なんとかなるだろうと、自分に気合いを入れ直した。
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