お休みの予定を

 食堂に着いてから、自分でもわかるほどいつも以上に冷たい目でエドワードを威嚇してしまった。

 しかも何度も、喋るなよと圧をかけてしまった。


 そのたび、エドワードはビクッとして、目をそらしていた。

 私の気持ちはただ一つ、「余分なことは言うな」である。


 その効果があったのか、なかったのか特に「痛い子」にはならなかった。



 その後の制服が出来上がってからの初めての出勤は、すれ違う人に「おや?」といった顔で見られたが、知り合いからはたくさんのお世辞をもらった。落ち着かなかったけど、まぁ、場違いな服を着てウロウロするよりましだと思うことにした。



 それから数日後。

 ソラに請われ、料理を教えていくなかで、こっちにはどんな調味料があるのかという疑問。

 というか、私、こっちの一般常識わかってなさすぎかも。

 でも、何がわからないのかがわからないのだから仕方がない。


 こういうときは、本屋に行くのが一番なのか?


 そんなことを思っていると、ちょうどお休みが貰えると言う話になった。


「二日後、お休み?」

「そう、もし街に行くのであれば給料を先払いしますよ」

「……街」

「あれ、もしかして行ったことなかったっけ?」


 アレンの隣にいたノアに聞かれる。


 首肯。


「一人で行くのはやめてくださいね」


 大丈夫。そんな度胸はありません。


「じゃぁ、道案内するっすよ」


 迷子コースか?心配しかないぞ?


「ウォルターの休みは明日だろ」

「一日ずらせばいいっす!」


 そんな不毛なやり取りをする、ウォルターとリアムも無視し、ノアに質問される。


「アイナはさ、休みの都合とかなしで誰についてきてほしい?」


 やけにキラキラした目で聞いてくるな。

 うーん。ウォルターは論外だし、リアムとお出掛けなんて考えられない。

 ノアかアレンだよな。

 そうなれば……


「……ぶんたいちょ?」


 片言になってしまった。


「「えー」」


 仕方がないじゃないか。

 考えてみたけど、最初からその選択ししかないだろ。


「ちょうど良かったじゃないですか。分隊長も休みですよね?」

「あぁ、では、一緒に行きますか?」


 え、トントン拍子すぎない?


「予定があるのでは?」

「特にないので」

「え、もしかしてそれを狙って……」

「……たまたまだ」


 話がまとまり、街にお出掛けに行くことになってしまった。

 その後何故だか釘をさされた。


「服はそれではだめですからね。私服で行きますからね」


 ダメなの?

 またこれ、何着ていくか悩むパターンじゃん。




 ここで『イケメンとお出かけ?何着て行こう?』と困りながらもそのなかに、ウキウキワクワクの気持ちを持つのが普通なのだだろう。

 そうはならず、ただ何を着ていけば?やっぱりいかないことにならない?と悩む辺りが愛奈が愛奈たる所以である。

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