結局、数時間は寝れたらしい。

 目が覚めると日が上っていた。

 さて、起きようと気合を入れて起き上がるが、クローゼットの前まで行って座り込む。

 何も考えずぼーと座るが立ち上がらなければ何も始まらない。

 仕方がなく、渋々立って、着替えをしようとクローゼットを開ける。


 さて、どれを着る?


 ……どれでもいいか。

 制服じゃないの面倒だなぁ。


 さすがにセーラー服を着る気持ちはないが、適当な服を出してきて着用する。


 食堂に行くとすでにアレンとノアが食後のティータイムをしていた。


「おはようございます。よく眠れましたか?」

「まぁ?」

「おはよう~。今日は水色のワンピースなんだね。似合っているよ」

「それより」

「僕の誉め言葉はスルーなの?」


 机に出されいたバスケットのなかに何種類かのパンが入っている。

 どうやらご自由にどうぞの今日の朝ごはんらしい。

 椅子に座わるとアレンがコップにリンゴジュースをいれてくれた。


 ノアのせいで、質問が中断になってしまったのでもう一度改めて質問をする。


「ありがとうございます。制服は?」


 その質問にアレンが明らかに目をそらす。


 なんだ?


「あー、そのことなんですが、アイナはどんなイメージです?」

「?皆と一緒がいいです。ダメなら我慢します」

「そう、ですよね」

「?」

「いや、どうせサイズがなくて作るならいっそ(貴女のだけ)デザインを改めようかと」

「皆も?」

「……いいえ」


 がーん。

 でも、ワガママは言わない。

 制服を指定してくれるなら。


「……派手でなければ」

「……若干不服そうですが、了承を得られて良かったです」


 この間から思っていたけど、何故同デザインを着せてくれないんだ。


「一応聞いておきますが、デザインしたいですか?」


 うーん。

 そりゃぁ、好みにデザインを出来るのは嬉しいけど、それが私に似合うかどうかと、こちらの価値観に合うかどうかはわからない。

 作りました、「なにあの子、へんなのー」は、いやだ。

 お洒落に興味がないヤツは、引っ込んでいたほうがいい。

 丸投げしていいのならそれが一番いい。


「やめておきます」


 御断りをすると、あからさまにほっとしている。


 自分でやると思われたかな?


「じゃあ、僕がプロデュースしてあげようか?」


 にこやかにいってくるノアをちらりと見る。


 静かに首を振っておく。

 絶対派手になるでしょう?心配しかないよ。


「うわっ。速攻で断られた。しかも、すごく冷たい目をされた!」

「私もノアに任せるのはどうかと思います」

「なんで?目茶苦茶可愛いのになる予感しかしないよ?」


 可愛いのって……「派手でなければ」っていったじゃん。


「では、デザインを何パターンかお願いするので、出来上がってきたらまた意見をください」


 と、いうことはまだまだ道のりは長いのか。


 私の願いとしては、普通がいい。

 地味なのがいい。

 せめて外見だけでも「みんなと一緒」でいたいから。


 中身の何も無い人形だったとしても、みんなから見えない透明人間だったとしても、せめてそこに属していいという証を下さい。

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