sideレティシア 1

 私、レティシア・ガターベルは、任務を終えて団長の部屋に報告に訪れていた。

 中から話し声が聞こえる。

 来客中か、出直した方がよさそうかな。


 とりあえず、ノックをして返事を待つ。


 ……。

 やっぱり出直そう。


 そう思い踵を返そうとすると、了承の返事が返ってくる。

 部屋に入ると団長のほかにアレンもいた。


「あら、あんたもいたの?」


 軽口を叩けば、アレンは澄まし顔で応える。


「居てはいけませんか?そんなことを言ってないで、報告をしてはどうです?報告、しにきたんですよね」

「ふん、言われなくたってするわよ!」


 団長に向き直り、報告をする。


「例の件、とりあえず押さえました。まだ多少くすぶっていますので、経過観察は必要かと思います」

「ご苦労。詳しい報告書をあげてくれ。それによって対応策を考えよう」

「了解しました。……なにか問題ですか?」


 首を突っ込んではいけないだろうと思いながらも、ついつい聞いてしまう。


「あぁ、まあな。他言しないのであれば話すが?」

「水攻めをされたり、生爪を剥がされても話しません!」

「……それほど重要案件ではないですよ」


 男二人がドン引きしている。


「意気込みを語っただけよ。それぐらいの気持ちってことよ」

「まぁいい、今度うちに一人いれようかと思ってな」

「あら、そうなんですか。何処の班に?どんな子ですか?」

「……それについて話をしていたんです」

「班決め?いつも得意分野で決めてるじゃない。何か得意なことないの?」

「得意なこと……」


 二人が視線をかわす。


「得意なこと、ないんですか?じゃあなんでうちに入れようと思ったんですか!」

「いやまあ、色々とあってな……」

「いったいどんな子なんです?」

「反応の薄いわりに、感情の起伏の激しい子、でしょうか?」

「自己評価が極端に低くて、自分の事をどうでもいいと思ってる節があるな」

「もう少し周りを頼ったり、甘えたりすればいいのに。まだそれが許される年だろうに……」

「小さい動物みたいでかわいいんだけどなぁ。兎に角目立たないようにって思ってるみたいだな」

「ちょっとよくわからないので、くわしくせつめいしてもらっていいですか?」


 遠い目をしながら質問をする。

 片言になるところだった。


 斯々然々かくかくしかじか


 なるほど。異世界人の女の子か。

 しかもまだ子ども。

 だったら。


「保護が目的なら別に何処の班でもいいのでは?」

「だから、交流のあるうちの班に、と」

「いや、異世界人だしまだ子どもだ。俺預かりにした方のがいいんじゃないかって言ってるんだ」


 え、それで揉めてたの?

 どんだけ過保護っていうか、甘やかしたいんだ。


 団長がちょっとずれてるのは知っていたが、アレンがこれほど御執心なのは珍しい。

 ちょっと興味があるな、会えるのがたのしみだ。

 きっと面白くなるに違いない。

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