ドナドナ

何か伝え忘れがありました、と二人が戻ってきたのかと思い、扉を開けると見知らぬお姉さんが立っていた。


「か」


 へ?


「かわいーーー!!」


 え?なにが?


 しかし、突っ込む暇もなく、美人なお姉さんに抱き付かれる。


「かわいーーー!!なにこれ?ちっちゃーい。可愛すぎるー。一緒に暮らせるなんて幸せすぎる~。人形みたい!!」


 むぎゅう。

 ちょ、苦しい……死んじゃう……ちーん。


「そこら辺にしておかないと窒息死というか圧死していまいますよ」

「え、あら?ごめんなさい」


 おぇ。げほげほ。


「うちの分隊長がすみません」

「……いえ、助かりました」

「ごめんなさい。余りにも可愛くて、つい」


 可愛いものを見たら、思わず殺してコレクションの危ない人だったのか。

しかし、死ぬならもう少し私の希望を聞いてほしい。

 見知らぬ女の人に抱き締められての窒息死は嫌だ。

 確認をせず開けてしまった私が悪いのだが、目の前に知らない美人さんがいて、固まっている間にまさか抱き付かれるとは夢にも思わなかった。


「アレンの班に新しく入った子でしょ?会いたかったの!!想像以上だわ」


 どんな想像のそれ以上だったんでしょう?


「分隊長、先に自己紹介した方がいいのでは?」

「あ、そうね。私はレティシアよ。レティって呼んでね。まぁ、本音を言えば、お姉さまとか呼んでくれたら鼻血が出るほど喜ぶわ!!で、こっちの可愛くないのが、うちの班の副でエドよ」

「……エドワードです。よろしくお願いします」

「……愛奈です」


 ぺこり。


 レティシアは、テンションの高い人だというのが、これだけのやり取りでよくわかった。エドワードの苦労が目に浮かぶ。

ちなみに私の苦手なタイプだと思う。


「今日来るって聞いたから来ちゃった♪」


 はぁ、そうですか。で?


「じゃあ早速行きましょう」


 何処へ?

 てか、この人自由だな。


「分隊長、説明をしましょう。いつも言いますが、突然すぎです」

「任せるわ!」

「……仕方がありませんね。建物の案内は聞きましたか?」


 首肯。


「食堂が談話室を兼ねているので、そちらに移動しませんか?」


 あぁ、そういうことね。


 首肯。


「じゃあ早速、レッツゴー!!」


 と、テンション高いレティシアが宣言をし、食堂に行こうとしたが、何故か体がフワッとうく。


 何が起こったのかわからず固まる。

 状況を落ち着いて確認すると、どうやらレティシアに小脇に抱えられているらしい。


 何故?意味がわからない。


 わからずにチラリとエドワードを見ると申し訳なさそうな、諦めたような顔で首を振られた。


 仕方がないので、小脇に抱えられたままドナドナされていくことにした。

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