sideリアム 1
「あっ」
ウォルターがそんな間抜けな声をあげると共にバシャン、と水の音が耳に届く。
一瞬の静寂ののち、ウォルターの叫びが木霊する。
「あーーーー。ヤバイ。ダメダメダメ」
そんな叫びも虚しく重要書類はお
結局もう一度書類は作り直しになり、再提出の運びとなった。
「分隊長~」
「ウォルター、うるさい」
そんなやり取りをしながら、二人は部屋を出ていった。
「楽しそうだねぇ」
副分隊長のコメントがおかしいのは、いつものことなのでスルーすして、仕事に戻る。
部屋には静寂がおりる。
ペンを走らせる音と紙が擦れる音だけがする。
うちの班は、引きこもりの文官班ではないし、普通に鍛練の時間も設けられている。
体を動かすことは、嫌いじゃない。
特に頭を使った後は軽く体を動かしたい。
……誰かのせいで仕事が増えたし。
そんなことを考えながら書類を片付けていく。
暫くすると、二人が帰ってきた。
「お帰りなさい」
副分隊長が声をかける。
二人は、何だかむずかしい顔をしている。
なんか、あったのか?
書類を受け取ってもらえなかったとか?
二人の様子が気になって書類をやる振りをして、上二人の会話を静かに聞くことにした。
「どうしたの?なにかあった?」
「いや……黒髪黒目の女の子、知ってるか?」
「召喚された子でしょ?」
「ああ。もう一人、聖女様の噂は?」
「……知ってる。それが?」
何だかきな臭い話が始まりそうだ。
分隊長とウォルターが今あった出来ごとを説明してくれる。
話が終わり抱いた感想。
噂には聞いていたが、ヤな女だな。
しかし、女の子の方もやり返したり、ちゃんと声をあげればいいのに。
そして、上二人が相談を始める。
そのタイミングで、ウォルターが話しかけてくる。
「俺、聖女様をはじめて見たけど、あれはないわ。推してる第一の奴らの気が知れない」
「そんなにか?」
「うん。よっぽどあの子の方のがちゃんとしてた」
「じゃあ、何でその子はやられっぱなしか?今の話だとあまり、自分から行くタイプじゃなさそうだよな?」
「そうだなぁー、あんまり自分に興味が無さそうって言うか、どーでもいいって思ってるって言うか……」
「ふーん?」
よくわからんな。
俺も喋る方じゃないが、言いたいことは言ったほうのがいいのに。
ウォルターとの会話が一段落したところで、分隊長がこちらに話しかけてくる。
どうやら、今後の相手の出方によっては、団長たちに相談のもとうちの班が間に入るかもしれない、と。
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