第41話

「俊也!」と綾美が叫ぶと、俊也はその場に倒れ込んだ。


綾美の心に怒りが湧き上がり、不死原本部長に向かって針を飛ばした。


しかし、不死原本部長は間合いを取り、綾美の攻撃を簡単にかわした。


綾美は俊也に駆け寄り、その身体を抱え込んだ。


涙が頬を伝いながら、必死に彼を守ろうとする思いが強まった。


「ドラゴン!少しだけ時間を稼いで!」と綾美は叫んだ。


ドラゴンは力強く応えた。


「姫の為なら」と言い、他の兵隊ヴァンパイアと共に不死原本部長に立ち向かっていった。


綾美は俊也の顔を見つめながら、「今から助けるからね」と涙をこぼし、自分のカッターシャツのボタンを外し始めた。


彼を救うために、何とかして今の状況を打破しようと心に誓った。


「殺鬼刀よ。力を貸して」と綾美は、手にした二本の殺鬼刀に語りかけた。


その瞳には決意の光が宿っていた。


「俊也、私の力をあげるんだから絶対勝ちなさいよ」と綾美は微笑み、二本の殺鬼刀を重ね合わせた。


彼女の心には確固たる信念があった。


「殺鬼刀よ。彼に我が力を捧げよ!」と綾美は叫んだ。


その声は廃工場の壁に反響し、静寂を破った。


次の瞬間、不思議な光が放たれ、殺鬼刀がうねり出し、綾美の心臓を俊也に移植した。


そして、綾美の力が俊也に伝わった。


綾美の愛と信念の力が、俊也を再び奮い立たせたのだった。


彼の目がゆっくりと開き、周囲の光景が視界に戻った。



僕がゆっくりと目を開けると、目の前には倒れている綾美がいた。


彼女の姿を見た瞬間、胸が締め付けられるような痛みが走った。


「綾美!」僕は叫び、彼女の体を抱きしめた。


彼女の静かな顔を見つめながら、涙がこぼれ落ちた。


ドラゴンが低い声で言った。


「王、姫はあなたを守るために、自らの心臓を王に託しました」


その言葉を聞いて、さっき頭の中で響いていた声の意味がようやく理解できた。


「くそっ!!!」僕は怒りと悲しみの声を上げた。


その瞬間、不死原本部長がドラゴンを突き飛ばし、僕のすぐ横に接近して攻撃を仕掛けてきた。


僕は咄嗟に反応し、不死原本部長の攻撃を自分の殺鬼刀で防ぎながら、「今だけは、少し待ってくれよ」とつぶやき、一気に力を込めて不死原本部長を吹き飛ばした。


その後、僕はほとんど無意識の状態で不死原本部長に立ち向かった。


彼を押し返した後、僕は「変化!」と叫んだ。


僕の殺鬼刀は形を変え、巨大な龍のような姿となった。


その姿勢のまま、僕は全力で攻撃を仕掛けた。


僕の攻撃は信じられないほどのスピードで、不死原本部長が避けることはできなかった。


彼に一瞬の隙も与えず、僕は次々と攻撃を続けた。


不死原本部長は驚愕の表情を浮かべ、ついに地面に倒れ込んだ。


僕は冷たい目で足元に倒れる不死原本部長を見下ろし、その瞬間、戦いが終わったことを実感した。


不死原本部長を倒したその瞬間、僕の中で綾美を失った喪失感が一気に広がった。


胸の奥で「ドクン、ドクン」と彼女の鼓動が響き続ける。


「綾美のためにも、必ずレッドツリーを壊滅させる」と心に誓ったその時、突如として邪悪なオーラを纏ったパンプキンマンが現れた。


彼は僕の妹を拘束し、まるで祭壇のような場所に妹を置いた。


「パンプキンマン!」と僕は叫んだ。


あの日の夜、僕の妹をさらったその張本人が、再び目の前に現れたのだ。


悲しみと怒りが交錯する中で、僕は妹を救うために全力を尽くす決意を新たにした。


パンプキンマンの放つオーラの力強さは、不死原本部長をも圧倒的に超えていることを感じた。


空気が重く、圧力が全身にかかる。


ドラゴンが冷静に言った。


「王よ、感じられているかもしれませんが、奴はレベルが違います」


僕はその言葉に応えた。


「ああ、そのようだな」


パンプキンマンは触手で僕の妹を捉え、その姿を見せつけてきた。


彼の顔には不気味な笑みが浮かんでいる。


僕の中で恐怖の感情が沸き上がってくる。


「何ビビってんだよ……今日、ここまで来るのにどれだけ犠牲を払ったのか思い出せよ……」と、自分の胸に手を当てた。


すると、綾美の笑顔や白木さん達との日々を思い出した。


僕は全ての恐怖を振り払い、決意を固めてパンプキンマンに立ち向かっていった。


「クソッタレ!」と僕は叫び、パンプキンマンに正面から攻撃を仕掛けた。


全ての怒りと決意を込めた一撃だった。


パンプキンマンは瞬時に反応し、妹を後方に投げ飛ばした。


その動きに僕の怒りがさらに燃え上がる。


「ふざけるな!」僕は叫び、全力でパンプキンマンに斬りかかった。


パンプキンマンは僕の一撃を触手で押さえ込んだ。


彼の圧倒的な力強さと冷酷な笑みが、僕の決意を揺るがす。


「変化!」と叫び、僕は殺鬼刀を龍の形に変え、パンプキンマンに攻め込んだ。


しかし、彼は不気味な笑みを浮かべながら、僕の攻撃を軽々と避ける。


その姿に苛立ちと焦りが募る。


ドラゴンと共に、僕は必死にパンプキンマンに次々と攻撃を仕掛けたが、全くダメージを与えられない。


彼の無敵のような防御に、無力感が押し寄せる。


次第に、希望が薄れ、絶望感が心を支配していった。


「その程度の力か?」パンプキンマンは冷たく嘲笑し、僕の努力を嘲るように言葉を放つ。


その声が耳に刺さり、心を蝕んでいく。


次の瞬間、パンプキンマンが「出よ!兵よ!」と言うと、かつて朱雀部長がアタッシュケースから召喚した人造ヴァンパイアの兵が大量に現れた。


無数の敵が僕たちを取り囲み、その数と威圧感に圧倒される。


「どうする、王よ?」ドラゴンの声が震え、希望が完全に消え去る寸前だ。


僕の中で綾美の姿がよぎり、胸の痛みと共に絶望感が一層強まる。


これまでの戦いが無駄だったのか?


僕の心に暗い影が差し込み、視界が狭まる。


逃げ場のない現実に直面し、全てが終わりかけていると感じた。


ボロボロの朱雀部長が突如現れた。


「俊也君、その人造ヴァンパイアは元々君の力を模倣して作ったものだ。君の冥界の王の力に反応し、取り込めるはずだ」と言い、彼の声には確固たる信念が感じられた。


その瞬間、パンプキンマンの目が光り、朱雀部長に攻撃をしようとした。


彼の動きは素早く、致命的だった。


「ドラゴン!」と僕は叫んだ。


ドラゴンは即座に応じ、「はい、王!」と言いながら、朱雀部長の前に立ち、パンプキンマンの攻撃を受け止めた。


激しい衝撃が響き渡り、ドラゴンは力強くその攻撃を受け止め続けた。


僕は朱雀部長の言うことが本当なら、この人造ヴァンパイアを僕の兵に変えることができるはずだと確信した。


冥界の王としての力を解き放ち、人造ヴァンパイアたちを支配するために、心の中で強く願った。


「この力を解き放つんだ…」


僕は自分に言い聞かせ、全身に力を込めた。


冥界の王の力が内部から湧き上がり、まるで生き物のように僕の体を巡る。


パンプキンマンと対峙する中、僕は自分の力を信じて一歩踏み出した。


人造ヴァンパイアたちが反応し始め、その動きが徐々に鈍くなり、僕の力に引き寄せられるようだった。


朱雀部長の言葉が真実であると感じ、僕はさらに力を込め、人造ヴァンパイアたちを完全に支配下に置くための一歩を踏み出した。


戦況が変わる兆しを感じ、僕の心に希望が再び灯った。


「やれ!」と僕が命じると、人造ヴァンパイアたちが一斉にパンプキンマンに攻め込んだ。


その光景はまるで嵐のようだった。


「なんだと!」パンプキンマンは驚きに目を見開きながらも、次々と人造ヴァンパイアをなぎ倒していった。


その動きは依然として圧倒的であり、彼の力の恐ろしさを再確認させられた。


しかし、戦局はこれで一気に変わった。


人造ヴァンパイアたちの攻撃でパンプキンマンの動きが鈍り始めたのを見逃さなかった。


「今がチャンスだ…」僕は心の中でつぶやいた。


新たに得た兵たちを巧みに操り、パンプキンマンの隙を狙うことに決めた。


パンプキンマンの攻撃の間隙を縫い、一瞬の隙を突くために僕は全神経を集中させた。

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