第39話

僕と綾美は朱島に到着した。エンジンの音が止まり、突然訪れた静けさが辺りを包み込んだ。


島全体が不気味なほど静かで、その静寂が僕たちの神経をさらに張り詰めさせた。


「あたりは不気味な静けさだな」と僕は小さく呟いた。


風もほとんど吹かず、ただ波の音だけが遠くから微かに聞こえるだけだった。


その静けさの中で、僕はさらに緊張を感じた。


心臓の鼓動が速くなり、手のひらに汗がにじむ。


ここが決戦の地だという実感が、全身を駆け巡った。


綾美が僕の方を見て、力強い声で言った。


「行きましょう」


その言葉に、僕は心の中で決意を固めた。


「うん」と深く頷き、歩き始めた。


彼女の隣に立つことで、少しだけ心が落ち着いた。


綾美の存在が僕に勇気を与えてくれた。


不気味な静けさの中、僕たちは一歩一歩、確実に前に進んでいった。


朱島の奥深くに進むごとに、緊張感が一層高まっていく。


それでも、僕たちは立ち止まることなく、妹を救い出し、レッドツリーを倒すために歩みを止めなかった。


僕らは島の奥へ進んでいった。


足元の砂が柔らかく、ひんやりとした空気が肌に触れる。


辺りには、普段なら見かけないような奇妙な植物がたくさん生い茂っていた。


その異様な光景が、ここが普通の場所ではないことを物語っていた。


道を進むごとに、不気味な雰囲気が増していく。


どこからか小さな音が聞こえるたびに、僕たちは立ち止まり、周囲を警戒した。


しかし、その緊張感を振り払うように、僕たちは再び前進を続けた。


すると、廃工場がいくつか見えてきた。


錆びついた鉄骨と崩れかけた建物が、無人のまま静かに佇んでいる。


これがレッドツリーのアジトだと直感した。


「ここが…」僕は呟いた。


胸の中で不安と決意が入り混じる。


綾美も同じように、目を鋭く光らせて周囲を見回していた。


僕たちの使命が、ここでの最終決戦にかかっているのだと改めて感じた。


僕は深呼吸をし、心の準備を整えた。


これまでの訓練と戦いが全てこの瞬間のためだった。


妹を救い出し、レッドツリーを壊滅させる。


その決意が僕の全身に力をみなぎらせた。


「行こう」と心の中で自分に言い聞かせ、僕たちは廃工場に向かって歩みを進めた。


これから始まる戦いに備え、心を引き締めて。


廃工場に足を踏み入れた瞬間、レッドツリーのヴァンパイアたちが一斉に襲いかかってきた。


彼らの目には冷酷な光が宿り、無数の影が僕たちに向かって押し寄せてくる。


「召喚!」僕は声を張り上げ、冥界の王の力を解放した。


瞬く間に、百近くのヴァンパイア兵が僕の前に現れた。


彼らの姿が、暗闇の中で鮮やかに浮かび上がる。


そう、戦争が始まったのだ。


ここが最終決戦の場となる。


僕と綾美もすぐに殺鬼刀を解放し、戦闘態勢に入った。


鋭い刃が光を反射し、僕たちの決意を象徴していた。


目の前のヴァンパイアたちに立ち向かい、次々と対抗していく。


「一歩も引くな!」


僕は自分に言い聞かせ、力を振り絞って戦った。


綾美も僕の隣で果敢に戦い続けていた。


彼女の動きは鋭く、そして美しかった。


早く妹を救わなければという思いが胸に渦巻いていた。


その思いが、僕にさらなる力を与えてくれた。


紗夜を取り戻し、レッドツリーを壊滅させる。


その決意が僕の全身にみなぎっていた。


廃工場の中で、激しい戦いが繰り広げられた。


ヴァンパイアたちの叫び声と鋼の音が響き渡る中で、僕たちは一瞬も気を緩めることなく戦い続けた。


すると、突如サンドが現れた。


彼の姿は一瞬の静寂を破り、僕たちの前に立ちはだかった。


サンドはかつてシルバーウォールでの戦いで僕らと対峙したSランクヴァンパイアである。


その存在感は圧倒的で、見るだけで過去の激戦が蘇ってくる。


「久しぶりだなあ。今日、来ると思ってたよ。だって今日はハロウィンだからな」とサンドは冷ややかに笑いながら言った。


彼の手からは砂状のVセルが舞い上がり、次の瞬間、攻撃を仕掛けてきた。


「やれ!バースト!」と僕は即座に指示を出した。


バーストは素早く反応し、サンドの攻撃を相殺するために動いた。


砂の嵐と炎がぶつかり合い、激しい音が辺りに響いた。


その瞬間、僕はサンドの隙を見逃さなかった。


素早く動き、触手を使って彼を押し飛ばした。


サンドは勢いよく飛ばされ、壁にぶつかった。


僕の心には、再び戦いの決意が固まった。  


ここでの一瞬一瞬が、妹を救い出すための重要な一歩だった。


サンドの出現は予期していたが、それでも僕たちは揺るぎない決意を持って立ち向かう準備ができていた。


綾美が素早く殺鬼刀を変化させ、針と糸を巧みに使って壁にサンドを貼りつけた。


彼の動きが止まり、その間に僕たちに有利な状況が生まれた。


「ナイス!綾美!」僕は叫びながら、サンドに強力な一撃をお見舞いした。


拳を振り下ろすと、サンドは衝撃で地面に倒れ込み、意識を失った。


その瞬間、僕たちの周囲に一時的な静寂が訪れた。


戦いの喧騒が一瞬だけ途切れたその瞬間、僕は自分たちが確実に強くなっていることを実感した。


過去の戦いとは異なり、今の僕たちは連携し、共に力を合わせて敵に立ち向かうことができる。


綾美と視線を交わし、僕たちの間に無言の了解が生まれた。


彼女の目には決意と自信が輝いていた。


僕たちの成長が、次の戦いに向けての希望となった。


不死原本部長と野口部長が現れた。


彼らの姿が廃工場の薄暗い照明の中で浮かび上がり、その威圧感が空気を重くした。


不死原本部長は冷ややかな目で僕たちを見つめ、「サンドを一瞬で倒すとは流石だな」と言った。


その声には少しの驚きと大きな侮蔑が混じっていた。


「また戦うことになると思っていたよ」と言いながら、不死原本部長は殺鬼刀を構えた。


その姿勢からは、彼が本気で僕たちを倒すつもりでいることが伝わってきた。


前回の不死原本部長との戦いでは、ドラゴンたちの協力のもと、何とか逃げることに成功した。


しかし、今回は逃げない。


奴を倒す。


僕はそう自分に言い聞かせた。


「出よ!ドラゴン」と叫び、冥界の王の力を解放してドラゴンを召喚した。


光が僕の前で渦巻き、ドラゴンの姿が浮かび上がった。


その巨大な体と力強いオーラが、僕に新たな勇気を与えてくれた。


戦いの決意を胸に、僕は不死原本部長に立ち向かう準備を整えた。


綾美も隣で殺鬼刀を握りしめ、共に戦う覚悟を決めていた。


今こそ、全てを賭けてこの戦いに挑む時だ。


僕とドラゴンは正面から不死原本部長に向かって行った。


全身に力がみなぎり、決意が固まった瞬間だった。


不死原本部長の冷たい視線を受けながら、一歩一歩確実に前進していく。


綾美は後方から針と糸を使い、僕たちの援護をしてくれた。


彼女の動きは正確で、素早く、まるで芸術作品のようだった。


彼女の援護があることで、僕たちは安心して不死原本部長に集中することができた。


不死原本部長に向かおうとすると、横から攻めてくる兵隊ヴァンパイアたちが現れた。


しかし、綾美が彼らの動きを針と糸で封じてくれた。


彼女の技術は見事で、一瞬の隙も見逃さない。


そのおかげで、僕とドラゴンは邪魔されることなく不死原本部長に集中することができた。


「今だ、ドラゴン!」と僕は叫び、全力で攻撃を仕掛けた。


ドラゴンもまた、フルパワーで不死原本部長に向かって行った。


二人の力が一つとなり、強烈な攻撃が放たれる。


その一撃一撃が、不死原本部長を追い詰める。


不死原本部長の冷笑が一瞬消え、彼の顔に驚きと焦りが浮かぶ。


その瞬間、僕は勝機を感じた。


僕とドラゴンの力、そして綾美の援護があれば、この戦いに勝利することができると信じた。


全ての力を振り絞り、僕たちは不死原本部長に立ち向かい続けた。


この戦いが、僕たちの未来を切り開くための重要な一歩となることを信じて。

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