第37話

僕とドラゴンは、圧倒的なスピードとパワーを持つ不死原本部長に苦戦していた。


彼の一撃一撃が地面を揺るがし、僕たちの攻撃はまるで水面に石を投げるかのごとく、無意味に終わっている。


綾美のことが心配だったが、目の前の不死原本部長をどうにかしないと彼女を守ることもできない。


心の中で焦りが募るが、それを押し殺して戦い続けた。


彼女の戦いの声が耳に届くたび、心臓が締め付けられるような感覚に襲われる。


不死原本部長が冷ややかに笑いながら言った。


「この状況で他人の心配か?」


その言葉に苛立ちと絶望が交錯し、次の瞬間、彼は強力な攻撃を僕に繰り出した。


僕はその攻撃を受けて吹き飛ばされたが、触手を上手く使い、何とかダメージを回避した。


壁に激突する直前に触手で軌道を変え、衝撃を最小限に抑えた。


体中に痛みが走るが、立ち上がることはできた。


一方、ドラゴンは確実に体力を削がれており、少しずつスピードが落ちているのが見られた。


彼の呼吸が荒くなり、動きが鈍くなっていく。


かつての力強さが失われていく様子に、胸が締め付けられる。


僕はこの不利な状況を打開する方法を何としても見つけなければならない。


心の中で策を巡らせながら、不死原本部長の動きを見極める。


彼の攻撃のパターンや隙を探るが、その速度と力に圧倒される。


この戦いが続けば、僕たちは全てを失うかもしれない。


しかし、希望を捨てずに戦い続けることが、唯一の生き残る道だと信じていた。


僕の心にはまだ、負けるわけにはいかないという強い決意が残っていた。


今こそ、その決意を力に変えなければならない。


汗が額を伝い、視界がぼやける中で、僕は再び立ち上がった。 


これが最後のチャンスだと自分に言い聞かせ、全ての力を振り絞って不死原本部長に立ち向かった。


僕は再度、殺鬼刀を変化させ、龍の形態に変えた。


刃が光り輝き、龍の姿を形作るその瞬間、全身に力がみなぎるのを感じた。


「行け!」と叫び、龍を不死原本部長に向けて放った。


鋭く蛇行しながら迫る龍の刃が、空気を切り裂く音が響く。


ドラゴンもその龍と共に、不死原本部長に立ち向かって行った。


彼の力強い意志が、僕たちの共通の敵に向かって燃え上がっていた。


しかし、不死原本部長はこの両方からの攻撃をものともせずにかわし続けた。


その動きはまるで影のようで、僕たちの攻撃は空を切るばかりだった。


焦りを感じた僕はさらに冥界の王の力を発揮し、何十体ものヴァンパイアを召喚し、不死原本部長の元へ放った。


召喚されたヴァンパイアたちが一斉に彼に襲いかかった。


しかし、不死原本部長は全く動じず、冷静に、そして確実に召喚されたヴァンパイアたちを次々に切り裂いていく。


その一撃一撃が的確で、僕の力がどれほど及ばないかを思い知らされた。


僕は素早く動き続け、不死原本部長の隙を見つけるのに必死だった。


彼の圧倒的な力と速度に対抗するために、全神経を集中させた。


この戦いが続けば、僕たちにとって非常に厳しい状況が待っている。


しかし、ここで諦めるわけにはいかない。


息を切らしながらも、僕はさらに攻撃のチャンスを探り続けた。


希望の光が見えるその瞬間まで、僕たちは戦い続けるしかなかった。


しかし、複数回にわたる不死原本部長の攻撃に、ついにドラゴンが崩れ落ちた。


彼の強靭な体も、絶え間ない攻撃の前には限界を迎えていた。不死原本部長は冷酷に、そして確実にドラゴンにダメージを与え続けた。


その一撃一撃が、ドラゴンの生命力を無慈悲に削り取っていった。


ドラゴンが地面に倒れ込み、その巨大な体が動かなくなった瞬間、僕の心には圧倒的な絶望が押し寄せた。


ここで僕たちが敗れれば、全てが終わってしまう。


このままでは不死原本部長に殺されてしまうという現実が、冷たく鋭く突き刺さった。


綾美の顔が脳裏に浮かんだ。


彼女もまた、不死原本部長の前に立ちはだかっている。


もし僕がここで倒れたら、彼女もきっとやられてしまうだろう。


彼女の勇気と決意を無駄にしてはいけない。


その考えがさらに心を締め付けた。


そして、何よりも、レッドツリーに拐われた妹の姿が浮かんだ。


彼女の救出が僕の最も大切な使命だ。


もしここで負けたら、妹を救い出すことも、再び彼女に会うこともできなくなる。


彼女の悲鳴が遠くから聞こえるかのように、僕の胸に痛みが広がった。


目の前の光景がぼやける中で、涙がこぼれ落ちた。


自分の無力さに、打ちひしがれる。


しかし、ここで諦めるわけにはいかない。


ドラゴンの犠牲を無駄にせず、綾美と妹のために、最後まで戦い続けなければならない。


僕の心には絶望と焦りが交錯し、胸の奥から燃え上がる怒りが湧き上がった。


この一瞬が全てを決める。絶対に負けるわけにはいかない。


全てを賭けて、この一撃に全力を注ぐしかない。


突如、僕の頭の中にドラゴンの声が響いた。


その声は弱々しくも、確固たる決意が感じられた。


「俺の力を受け取って強くなれ」とドラゴンは言った。


彼の言葉に一瞬戸惑いが走ったが、その意味をすぐに理解した。


ドラゴンは、自らの力を僕に託すことで、不死原本部長を倒そうと考えたのだ。


「冥界の王の力を持つお前ならできるはずだ。我をお前の力に変えてくれ」とドラゴンは続けた。


その言葉には、自己犠牲の精神と、僕への信頼が込められていた。


僕は不死原本部長に勝つためには、ドラゴンの言う通りにするしかないと感じた。


胸が痛み、涙が滲んだが、決断の時は迫っていた。


僕は倒れたドラゴンの元に近寄り、その巨大な体を見上げた。


彼の目には、確固たる決意と温かさが宿っていた。


僕は彼の体に触れ、心の中で最後の別れを告げた。


「ありがとう、ドラゴン」と心の中で呟き、僕は冥界の王の力を使い、彼の力を自分の中に取り込んだ。


その瞬間、ドラゴンの力が僕の体に流れ込み、圧倒的な力がみなぎるのを感じた。


不死原本部長に立ち向かうための新たな力を手に入れたのだ。


涙がこぼれる中で、僕は立ち上がった。


ドラゴンの犠牲を無駄にしないためにも、全ての力を振り絞ってこの戦いを終わらせなければならない。


彼の力を受け継いだ僕は、再び不死原本部長に立ち向かう覚悟を決めた。


不死原本部長が冷たく言い放った。


「ドラゴンを取り込んでも結果は同じだ。」


その言葉に、一瞬心が揺れた。


確かに、さっきまで一緒に戦っていたドラゴンが僕の冥界の王の力で復活したとしても、状況は大きく変わらないかもしれない。


しかし、ドラゴンがいなくなれば勝算はゼロだ。


今の状況では、少なくともゼロではない。


不死原本部長は「まあ、いい」と言いながら、一気に間合いを詰めてきた。


その速さに驚き、僕は咄嗟に殺鬼刀で彼の攻撃を受け止めた。


激しい衝撃が全身を襲うが、ドラゴンの力を身体に取り込んだお陰で、なんとか持ち堪えることができた。


「くっ…」僕は息を整えながら、間合いを取って不死原本部長から離れた。


その一瞬の隙に、心の中で次の行動を決める。


「いくぞ、ドラゴン」と僕は声を上げ、冥界の王の力でドラゴンを呼び起こした。


すると、ドラゴンが再び現れた。


彼の力強い存在感が再び感じられ、心に新たな希望が灯った。


ドラゴンの力と共に、僕は再び不死原本部長に立ち向かう覚悟を決めた。


この戦いが全てを決める瞬間だ。


僕たちの連携が、希望の光を見出すための最後の手段だった。


僕は召喚したドラゴンと共に、不死原本部長に立ち向かって行った。


戦いの決意が僕の全身を駆け巡り、心臓の鼓動が激しくなる。


その瞬間、僕の頭の中でドラゴンの声が響いた。


「私の力で仲間たちを強くするぞ」と。


次の瞬間、既に召喚していた兵隊ヴァンパイアたちが一気にパワーアップしたのを感じた。


彼らの目が一層鋭く輝き、動きが格段に速く、力強くなった。


ドラゴンの声が再び頭の中で響いた。


「私の過去の戦闘経験や鍛錬の経験を全て仲間たちに共有した」


「そんなことができるなんて…」


僕は驚きを隠せなかった。


ドラゴンの力が、僕たち全員の力を何倍にも引き上げていた。


これならいけるかもしれない。


希望が心に芽生えた僕は、「行くぞ、みんな!」と叫び、一気に皆で不死原本部長に立ち向かった。


連携の力とドラゴンの経験を得た仲間たちが、一斉に攻撃を仕掛けた。


不死原本部長の目には、一瞬の驚愕が浮かんだ。


その隙を見逃すことなく、僕たちは総攻撃を開始した。


この戦いに全てを賭け、僕たちは最後まで諦めることなく立ち向かった。

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