第36話

不死原本部長は圧倒的なスピードでドラゴンと僕に攻撃を仕掛けてきた。


彼の動きはまるで瞬間移動のようで、目で捉えることさえ難しい。殺鬼刀の刃が空気を切り裂き、その音が耳をつんざく。


「くっ…!」僕は必死に応戦し、ドラゴンと共に何とか致命傷を避けるように戦い続けた。


彼の一撃一撃は重く、体力が削られていくのを感じた。


それでも、僕たちは諦めることなく立ち向かい続けた。


ドラゴンの力強い攻撃が不死原本部長を捉えようとするが、彼は巧みにかわして反撃を繰り出してくる。


「くそっ…不死原め」


ドラゴンは自分の攻撃がなかなか決まらず、苛立っているようだった。


そのころ、一方で綾美の前に野口部長が現れた。


彼の冷たい目が綾美を鋭く見据え、その視線には容赦のない冷酷さが宿っていた。


「黒崎君、君にはがっかりだ」と彼は言い放ち、まるで彼女の存在を否定するかのように斬りかかってきた。


綾美は驚愕し、瞬時に防御態勢を取ったが、野口部長の攻撃は容赦なく迫る。


彼女の表情には焦りと決意が交錯していた。


僕はその光景を目にし、焦りと怒りが込み上げた。


「逃げろ!綾美!」と叫びながら、バーストを再度冥界の王の力で召喚し、綾美の元に向かわせた。


バーストは一瞬で現れ、野口部長の攻撃を炎の剣で防いだ。


「猪口才な」


野口部長は自分の攻撃を防がれたことに苛立った。


綾美はその隙を見て距離を取った。


彼女の息遣いが荒く、戦場の緊張感が一層高まった。


バーストはそのまま野口部長と対峙し、彼の攻撃を受け止めながら応戦した。


一方で、僕は再びドラゴンと共に不死原本部長との戦いに集中した。


彼の動きはなおも速く、攻撃の連続が続いたが、僕たちはなんとか持ちこたえた。


ドラゴンの目には強い決意が宿り、僕の心にも希望の火が灯っていた。


この戦いが全てを決する。


僕たちは、仲間のため、そして未来のために、全力で戦い続けた。


野口部長が「変化!」と叫ぶと、彼の殺鬼刀が瞬く間に変形し、全身を覆う鎧へと姿を変えた。


その鎧は黒く輝き、彼の攻撃力と防御力を一気に高めた。


バーストは容赦なく、野口部長に炎を浴びせた。


激しい炎が彼を包み込むが、野口部長は全く意に介さず、まるで何事もなかったかのように突撃してきた。


綾美はバーストの背後から「千本桜!」と叫び、無数の針を野口部長に飛ばした。


針は正確に鎧を狙ったが、その硬い鎧が全てを弾き返した。


野口部長は冷笑を浮かべながら言った。


「黒崎君、君のレベルではAランクの私にダメージを負わせるなど無理だろう。」


さらに彼は続けた。


「しかし、偽物とは言えSランクのバーストが味方なのは厄介だ」


そう言いながら、どこからか小さな装置を取り出した。


その装置は暗く輝き、見ただけで危険を感じさせるものだった。


バーストは一瞬たじろぐが、すぐに再び戦闘態勢を整えた。


綾美はその状況に焦りながらも、冷静に次の手を考えていた。


野口部長の力は圧倒的だが、ここで諦めるわけにはいかない。


僕はドラゴンとの戦いの合間に、この状況を見つめ、心の中で策を練っていた。


仲間と共に、この逆境を乗り越えるために全力を尽くす決意を新たにした。


野口部長はその黒い装置のボタンを押し、鎧に突き刺した。


次の瞬間、鎧の形状が変化し、より大きく禍々しい姿に変わった。


その変貌は、力がさらに増幅されたことを示していた。


綾美は一気に間合いを取り、その変化に備えた。


彼女の顔には驚愕と警戒の色が浮かんでいた。


バーストは綾美を守るように前方に出た。


彼の姿勢からは、綾美を守るための決意が感じられた。


野口部長が剣を振り回すと、強力な斬撃が空を切り裂き、周囲のものを次々に破壊した。


その力は圧倒的で、まるで嵐のように激しかった。


僕はその光景を目にし、あの黒い装置が野口部長をパワーアップさせたのだと確信した。


この状況で彼がさらに強くなることは、僕たちにとって致命的な不利をもたらす。


このままでは全てが崩壊してしまう。


僕たちは一刻も早くこの圧倒的な力に対抗する方法を見つけなければならなかった。


心の中で緊張が高まる中、僕は戦局を立て直すための策を必死に考えた。


僕はバーストだけでなく、さらに他のヴァンパイアたちも綾美の元に送ろうと考えた。


しかし、不死原本部長からの激しい攻撃のせいで全くその隙がない。


彼の一撃一撃は重く、僕はその防御に全神経を集中させるしかなかった。


「俊也、自分で何とかするから大丈夫よ!」


綾美の力強い声が響いた。


彼女の決意に満ちた表情が見えた。


「綾美、バーストに時間を稼がせるから早く逃げて」と僕は必死に言った。


綾美の安全を確保するためには、何としても時間を稼がなければならない。


しかし、野口部長はさらに高速で綾美に接近する。


その動きは見えないほど速く、僕はその瞬間に強い不安を感じた。


だが、綾美が「解放!」と叫び、もう一本の殺鬼刀を取り出した。


その刃が光を反射し、鋭く輝いた。


さらに綾美は「そして、変化!」と叫ぶと、その殺鬼刀は形状を変えて、蜘蛛の巣のような糸を放出した。


その糸が野口部長に絡みつき、その動きを一瞬で止めた。


僕はその光景に驚きながらも、綾美の勇気と決断力に感謝した。


彼女の行動が僕たちに新たな希望をもたらした。


戦いはまだ終わっていない。


僕たちは最後まで諦めずに戦い続ける。


野口部長は「ほう、二刀流か」と言いながら、蜘蛛の巣を引きちぎった。


その力強さに一瞬息を飲むが、綾美は冷静に間合いを取り、大勢を整えた。


バーストがすかさず、火炎放射を野口部長に浴びせるが、彼にはまったく効かなかった。


炎の中から現れる野口部長は、まるで無敵の存在のようだった。


「二刀流はかなり身体に負担がかかるだろう?」


野口部長は冷静な声で綾美に問いかけた。


綾美は一瞬もひるまず、「あなたのさっき使った力の増幅装置の方が負担かかってるんじゃないの?」と返した。


野口部長はニヤリと笑い、「よくわかってるな。だが、多少負荷はかかるが、一瞬で終わらせれば問題ない」と言った。


「それはどうかしら?」綾美は挑戦的な微笑を浮かべながら、二本の殺鬼刀を構えた。


彼女の目には揺るぎない決意が宿っていた。


これからの戦いに全てを賭ける覚悟が感じられた。


その瞬間、戦場の緊張感が一層高まり、僕は息を飲んだ。


これが勝負の分かれ目となる。


綾美の勇気と技が、僕たちの希望を繋いでいるのだ。

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