第31話
黒い人形は迫り来るヴァンパイアたちと激しく戦っていたが、数が多すぎるために苦戦している様子だった。
僕は綾美に向かって、「仕方ない。僕らも戦おう」と言った。
綾美は僕の言葉に同意し、迷うことなく殺鬼刀を構えた。
僕も殺鬼刀を手にし、朱雀部長と黒い人形を襲うヴァンパイアたちに斬りかかった。
ヴァンパイアたちはみなCランクほどの強さだと予測されたため、僕と綾美なら十分倒せるレベルだった。
戦いが始まると、朱雀部長は僕たちを見て、「君たち、何故ここに?」と言い、混乱しているようだった。
しかし、僕たちには説明する時間はなかった。
高校生の姿の僕たちは殺鬼刀を振り回し、一気にヴァンパイアたちを倒していった。
ヴァンパイアたちが次々と倒れていく中、朱雀部長は黒い人形と共に戦い続けた。
僕たちの協力によって、ヴァンパイアたちの数はどんどん減っていき、やがて最後の一体が倒れた時、僕たちはほっと息をついた。
朱雀部長は僕たちに感謝の言葉を述べたが、その目はまだ何かを探るように僕たちを見ていた。
僕たちの尾行がバレてしまったこと、そして僕たちが朱雀部長を助けたことが、これからの関係にどのような影響を与えるのか、僕にはまだわからなかった。
しかし、一つ確かなことは、僕たちが朱雀部長の命を救ったという事実だった。
朱雀部長は、黒い人形が最後のヴァンパイアを倒した後、僕たちに向かって「ありがとう」と礼を言った。
その後、彼は真剣な表情で「何故、ここにいるのか?」と聞いた。
僕らは隠すことが難しいと思い、正直に全てを話すことにした。
僕は朱雀部長に、彼のことを怪しいと思い、レッドツリーとの繋がりがあるかもしれないと思い尾行したことを話した。
朱雀部長は僕たちの話を聞いて大笑いし、「私がレッドツリーと繋がっているなんて、ばかばかしい」と言った。
彼は笑いを収めると、真面目な顔に戻り、「実は、私もレッドツリーと繋がっている者がヴァンパイアハンター協会の中にいるのではないかと疑い、調べているところだ」と言った。
そう、朱雀部長はむしろ僕たちの味方だったのだ。
僕と綾美は、誤解していたことに気づき、朱雀部長に疑ったことを謝罪した。
朱雀部長は僕たちの謝罪を受け入れ、「いや、君たちの行動は正しかった。疑うことは大切だ。そして、今回のことで君たちの勇気と決断力を見せてもらった」と言って、僕たちを褒めた。
僕たちは朱雀部長と共に、レッドツリーの謎を解き明かすために協力することを決めた。
僕たちの前にはまだ多くの困難が待ち受けているかもしれないが、僕たちは一致団結してそれに立ち向かう覚悟を固めたのだった。
僕は朱雀部長が出した黒い人形について尋ねた。
その人形はヴァンパイアたちとの戦いで見せた驚異的な力により、僕たちの興味を強く引いていた。
朱雀部長は少し困った様子で、あの黒の人形は僕の冥界の王の力を分析し、作られた擬似的な冥界の王の召喚の力だと説明した。
それは僕の持つ能力を模倣したものであり、研究の一環として開発されたとのことだった。
僕と綾美は朱雀部長の研究力の高さに驚いた。
彼の技術があれば、想像もつかないようなことが可能になるのかもしれないと感じた。
僕は思い切って提案した。
「この黒の人形を使えれば、レッドツリーという組織を壊滅できるほどの軍を作り上げることができるのではないかと思いますが、どうでしょうか?」
朱雀部長は僕の鋭さに驚きながらも、僕の意見に同意した。
「確かに、その可能性はある。しかし、それにはまだ多くの調整と強化が必要だ。」
そして、朱雀部長は重い口調で付け加えた。
「きっとこの先、私はレッドツリーにより狙われるようになるはずだ。私の研究成果は君が言う通り、奴らにとって脅威だからな。」
朱雀部長は続けて、「もし、私に万が一のことがあった場合、君の本物の冥界の王の力を鍛え上げ、レッドツリーを君の軍で叩き潰して欲しい」と言った。
その言葉には、僕たちに対する深い信頼と、未来への期待が込められていた。
僕はその重い責任を感じつつも、朱雀部長の期待に応えるべく、自分の力を最大限に活用することを誓った。
綾美も僕の決意を支え、共にこの新たな使命に立ち向かうことを決めた。
僕たちの戦いは、これからが本当の始まりだと感じていた。
僕らが朱雀部長との重要な話をしている最中、綾美が突然「あっ、野口部長」と声を上げた。
振り返ると、野口部長が笑いながら僕らの方へ近寄ってきていた。
僕は何故、こんなところに野口部長がいるのか不思議だった。
朱雀部長も驚いた様子で、「野口、どうしてこんなところに?」と尋ねた。
野口部長は軽く肩をすくめながら、「いや、色々とこちらで不穏な動きがあると聞いたものでね」と答えた。
その言葉に、朱雀部長は苦笑いを浮かべ、「お前が一人で現場なんて、人手不足が酷そうだな」と言い、アタッシュケースを握りしめた。
その様子に、僕は何かがおかしいと感じ始めた。
すると、野口部長が急に表情を変え、「ああ、困ったもんだよ。お前みたいな裏切り者を始末しないといけないんだならな」と言い、殺鬼刀を構えた。
その言葉に、僕たちは驚愕した。
野口部長が朱雀部長を裏切り者と呼び、殺鬼刀を構えるなんて、一体何が起こっているのか。
綾美と僕は互いに顔を見合わせ、状況を把握しようとした。
朱雀部長は冷静に野口部長を見つめ、アタッシュケースをしっかりと握りしめたままだった。
この緊張した空気の中で、僕たちは次に何が起こるのか、身構えながら見守るしかなかった。
この出来事が、僕たちの運命をどう変えるのか、その時はまだ誰にもわからなかった。
朱雀部長は、野口部長が殺鬼刀を構えた緊張した空気の中で、「おい、少し待て。野口」と静かに言った。
しかし、野口部長は僕と綾美に向かって、「こいつはヴァンパイアハンター協会の裏切り者だ」と断言した。
朱雀部長は激しく反論し、「違う!私は裏切り者ではない!」と声を上げた。
その言葉に、僕と綾美はどちらが本当のことを言っているのかわからなくなってしまった。
僕たちは互いに顔を見合わせ、この状況をどう判断すればいいのか、途方に暮れていた。
そのとき、綾美のスマホが鳴り始めた。
綾美はスマホを取り出し、「あっ、白木さんだ」と呟いた。
緊迫した状況の中での着信に、僕たちは一瞬、何が起こるのかと身構えた。
朱雀部長と野口部長は一時的に争いを中断し、二人とも電話に出るように綾美に言った。
綾美は少し躊躇しながらも、電話に出た。
電話を耳に当てる綾美の表情が次第に険しくなるのがわかった。
僕は綾美の反応から、電話の内容が何か重大なことであることを感じ取った。
綾美が電話を終えると、彼女は僕たちに向かって深刻な表情で何かを伝えようとした。
その瞬間、僕たちは綾美からの情報が、この状況をどう変えるのか、そして僕たちがどのような行動を取るべきなのかを決定する重要な鍵になることを感じていた。
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