第28話

僕は、冥界の王の話が気になり、白木さんを訪ねた。


部屋に入ると、白木さんは窓の外を眺めながら、深い考えに沈んでいるようだった。


「白木さん、ちょっといいですか?」


白木さんは振り返り、僕に微笑みかけた。


「俊也、どうした?」


「実は、冥界の王の力のことで聞きたいことがあるんです。白木さんは、どうして僕にその血を飲ませたんですか?」


白木さんは一瞬、目を伏せた後、ゆっくりと口を開いた。


「実は、研究部門の朱雀部長に、君か君の妹に飲ませるように言われたんだ。部長は、君たちのどちらかが冥界の王の力を受け継ぐ資質を持っていると考えていたようだ」


白木さんの言葉に、僕は驚きを隠せなかった。


妹も僕と同じ力を持っているかもしれないなんて、考えたこともなかった。


「朱雀部長は、どうしてそう考えたんでしょうか?」


「部長は、君たちの家系について詳しく調べていたようだ」


白木さんの話を聞いた僕は、朱雀部長に直接会って話を聞きたいと思った。


「白木さん、朱雀部長に会わせてもらえませんか?自分の力のこと、もっと詳しく知りたいんです」


白木さんは僕の決意を感じ取ったのか、力強く頷いた。


「分かった。朱雀部長に会う手はずを整えよう。君の力は、これからのヴァンパイアとの戦いに欠かせないものになるだろうからね」


白木さんの言葉に、僕は改めて自分の力の重大さを感じずにはいられなかった。


朱雀部長との出会いが、僕の運命をどう変えていくのか。


期待と不安が入り混じる中、僕は新たな一歩を踏み出すのだった。


シルバーウォールでの戦いから数日が経ち、僕は妹がパンプキンマンに拐われたあのタイミングと、自分が冥界の王の血を飲んで吸血人になったことが、偶然ではないような気がしていた。


朱雀部長はきっと何か知っているはずだ。


僕は白木さんに相談し、一緒に研究所へ向かうことにした。


車で研究所へ向かう途中、白木さんは朱雀部長について語ってくれた。


「朱雀部長は相当な変人でね。天才的な頭脳の持ち主だが、常人には理解しがたい行動をとることがある」


僕は白木さんの言葉に、朱雀部長への興味がますます膨らんだ。


「朱雀部長は、ヴァンパイアハンターの主力武器である殺鬼刀の開発者でもあるんだ。彼の研究なくして、我々の戦いは成り立たなかったといっても過言ではない」


白木さんの話を聞きながら、僕は朱雀部長とレッドツリーの関係について考えを巡らせていた。


もしかしたら、朱雀部長はレッドツリーと何かしらの関わりがあるのではないだろうか。


研究所に到着し、僕たちは朱雀部長の研究室へ向かった。


ドアをノックすると、中から「入れ」という低い声が聞こえた。


僕は深呼吸をして、ドアを開けた。


部屋に一歩足を踏み入れた瞬間、強烈な薬品の臭いが鼻をつんざいた。


そして、部屋の奥で何やら作業をしている白衣の男性が目に入った。


「朱雀部長、お話があります」


僕が声をかけると、部長はゆっくりとこちらを振り返った。


鋭い目つきに、僕は思わず身構えてしまう。


「俊也君だね。話ってのは、冥界の王の力のことかな?」


朱雀部長は僕の目を見つめながら、まるで僕の考えを見透かすかのように言った。


僕は覚悟を決め、部長に詰め寄った。


「僕に冥界の王の血を飲ませたのは、部長の指示だったそうですね。一体何を企んでいるんですか?」


部長は僕の問いかけに、薄く笑みを浮かべた。


「君には大いなる使命があるんだよ、俊也君。冥界の王の力を受け継ぐ者として、この世界を導いていってもらわないとね」


朱雀部長の言葉に、僕は混乱した。


世界を導く?何を言っているんだ?


そして、部長は続けた。


「レッドツリーは、この世界の秩序を脅かす存在だ。彼らを止めるためには、君の力が必要なんだよ」


部長の言葉に、僕は言葉を失った。


一体、僕の運命に何が待ち受けているというのだろう。


朱雀部長の研究室での空気は、緊張で張り詰めていた。


部長は僕の問いかけに対して、意味深な笑みを浮かべながら話し始めた。


「君はあの不死原本部長を知っているか?彼は吸血人であり、最も強いヴァンパイアハンターだ。君は実はかつて伝説とされたヴァンパイアである冥界の王の力を引き継いでいる。つまり、君なら彼を超えてレッドツリーを打ち砕くことができるかもしれない」


僕はその話を聞いてもなお、朱雀部長の真意が掴めなかった。


「何故、僕か僕の妹に冥界の王の力を引き継がせる必要があったのですか?」


朱雀部長は、さらに笑みを深めた。


「それは言えないが、君の血縁関係に理由がある」


僕はますます朱雀部長のことを怪しく思った。


彼の言葉は、何かを隠しているように感じられた。


その時、朱雀部長が別の話題を切り出した。


「パンプキンマンに妹を拐われたみたいだな?」


僕は心臓が跳ねるのを感じた。朱雀部長のその言葉は、何かを暗示しているようだった。


「はい、なのでパンプキンマンと同様に妹を狙っていたあなたが何を企んでいたのか気になってます」


僕は言葉を絞り出しながら、背中から触手を出した。


その瞬間、白木さんが僕の前に飛び出してきた。


「やめろ!俊也」


白木さんの声に、僕は我に返った。


触手を引っ込めながら、僕は混乱した心を落ち着けようとした。


朱雀部長は僕たちのやり取りを静かに見守っていた。


彼の目には、僕たちがどう出るかを計るような冷静さがあった。


僕は白木さんに感謝しつつ、朱雀部長に対する疑念を一旦抑えることにした。


しかし、僕の中にはまだ答えられていない疑問が渦巻いていた。


朱雀部長とレッドツリー、そして僕の運命の間には、どんな繋がりがあるのだろうか。

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