第26話

怒りが僕の体を満たし、その力が爆発的に溢れ出るのを感じた。


その瞬間、何もかもが遅くなったように見えた。


マエストロに気付かれる前に、僕は彼女に向かって走り出した。


彼女が綾美を捕えている触手を、僕は一瞬で殺鬼刀で斬った。


触手は地面に落ち、綾美は自由になった。


マエストロは信じられないといった顔で、すぐに僕から距離をとった。


「嘘でしょ……」


彼女が呟いたその声は、戦場の雑音の中でひっそりと消えていった。


その時、背後からパンプキンマンが触手で攻撃してきた。


しかし、僕はその触手を殺鬼刀で受け止める。


触手と刀がぶつかり合い、異常なほどの静寂がその場を支配した。


その一瞬、僕は綾美に目を向け、「逃げて!」と叫んだ。


そして、全力でパンプキンマンを突き飛ばした。


僕の体からは怒りだけでなく、綾美と妹を守るという強い決意が伝わってくる。


パンプキンマンが後ろに飛び退きながら、僕は綾美の方を振り返らず、彼女が安全な場所に向かっていることを信じた。


この瞬間、僕は自分がどれだけ強くなれるか、そして綾美や妹をどれだけ愛しているかを改めて感じた。


また、僕の頭の中にいつもの声が響いた。


「力が欲しければヴァンパイアを喰え」と。


その声に導かれるように、僕は周りを囲むヴァンパイアたちを睨みつけた。


彼らはマエストロの指示のもと、僕を狙って迫ってきた。


僕は迷うことなく、迫り来るヴァンパイアたちに飛び込んでいった。


彼らを捕食することで、僕の中に新たな力がみなぎってくるのを感じた。


それはまるで、僕の体のすみずみに広がる熱い波のようだった。


この力は僕を変え、さらに強くさせる。


僕はマエストロが操るヴァンパイアたちを一つひとつ倒し捕食した。


僕は自分自身の中に秘められた力の深さを知る。


この力は僕を救い、同時に僕を試すものだ。


僕はその力を受け入れ、自分の運命を変えるために前に進む決意を固めた。


急に、心臓が強く鳴るのを感じた。


それは、僕の中で力が湧き出る予兆だった。


頭の中でいつもの声が響く。


「これで準備は整った」と。


その瞬間、背中が急に熱くなり、まるで何かが内側から解き放たれようとしているかのようだった。


次の瞬間、僕の背中から大量のVセルが吹き出し、それらは黒い人形に変わっていった。


一度ではなく、何度も僕の背中からVセルが吹き出し、それぞれが異なる黒い人形へと変わる。


ある者はジャックのような姿をしており、またある者はベアーの姿をしていた。


そう、これまで戦ってきた、そして僕が取り込んだヴァンパイアたちを呼び出すことに成功したのだ。


僕の体は、彼らを内包し、そして必要な時に彼らを僕の味方として召喚できるようになっていた。


この新たな力によって、僕はマエストロやパンプキンマンに立ち向かうための新たな戦力を手に入れたのだ。


僕はこの力を使って、彼らとの戦いに勝利し、綾美や妹、そして僕たちの世界を守るために戦う。


僕の心は決して折れない。


今、僕はこれまでにない強さを手に入れた。


「そんな馬鹿な」とマエストロが言い、彼女の表情は信じられないというものだった。


サンド、そしてパンプキンマンも、僕の変化した状態を見て、驚愕のあまり後退りした。


サンドが驚きを隠せずに呟いた。


「まさか、冥界の王だったのか…」


僕は、冷たく、しかし確かな声で、「やれ」と命じた。


召喚した黒いヴァンパイアたちに。


彼らは僕の命令を受け、一斉にマエストロ、サンド、そしてパンプキンマンに攻撃を仕掛けた。


彼らが放つ圧倒的な力は、僕がこれまで戦ってきた敵たちをも圧倒するほどのものだった。


戦場は一瞬にして混沌とした。


僕が召喚したヴァンパイアたちは、ジャックやベアーの姿をしたものたちであり、彼らは僕と共に戦うために召喚された。


マエストロたちは、予想外の事態に対応しようと必死だったが、僕の召喚したヴァンパイアたちの力は彼らが想像していたものをはるかに超えていた。


この戦いは、僕にとって新たな始まりを意味していた。


僕はただのヴァンパイアハンターではなく、冥界の王としての力を持つ存在になったのだ。


そして、この力を使って、僕は愛する者たちを守り、この世界を救うために戦う覚悟を決めていた。


まず、僕の目標はパンプキンマンだった。


彼に一気に攻撃を仕掛ける。


しかし、パンプキンマンはその触手を巧みに操り、僕の攻撃を見事に防ぐ。


同時に、僕が召喚したヴァンパイアたちはサンドとマエストロを狙ったが、やはり彼らの実力は僕たちよりもまだ上だということがはっきりと見て取れた。


その時、マエストロが僕が一時的に操っていたバーストを自分の意のままに操り始め、僕の召喚したヴァンパイアたちを一掃しようと試みる。


状況は急速に悪化していった。


「野口部長!パンプキンマンの動きを少しだけ止めてください!」


僕は叫んだ。


野口部長は即座に「任せろ!」と返答し、パンプキンマンの方へと駆け出していった。


その隙に、僕はマエストロが操るバーストに近づき、隙を狙い、バーストの首に噛みついた。


この瞬間、僕の中に新たな力が流れ込んできた。


マエストロが怒りと驚愕の声で「くそ!この泥棒野郎が!」と叫ぶ中、僕はバーストを取り込むことに成功した。


これにより、僕の力はさらに増大し、戦いの流れを変えるための新たな可能性が生まれた。


野口部長の助けと、自分自身の冷静な判断により、僕はマエストロとパンプキンマンに立ち向かうための新たな一歩を踏み出すことができた。


取り込んだバーストを僕の戦場に呼び出した瞬間、戦いの空気が変わった。


バーストが、かつての敵から僕の最強の兵士へと変貌し、マエストロに向かって炎を放った。


マエストロは追い詰められた獣のように、「このクソ野郎が!!」と絶叫した。


彼女の声には明らかに焦りが混じっていた。


マエストロをバーストに任せ、僕は今度は野口部長が苦戦しているパンプキンマンに向かった。


我々の合流した力は、パンプキンマンを圧倒し始めた。


かつてない速さを手に入れた僕と、熟練した野口部長の攻撃の前に、パンプキンマンは防御に専念するしかなくなった。


一方、サンドは僕が召喚したヴァンパイアたちの波状攻撃に圧倒され、戦場の隅へと追いやられた。


彼らの絶え間なく繰り出される攻撃に、サンドはもはや反撃の余地を見いだせない。


この時点で、マエストロとその仲間たちは明らかに劣勢に立たされていた。


バーストの炎、僕たちの連携攻撃、そして召喚したヴァンパイアたちの圧力が、彼らに絶望を感じさせるに十分だった。


戦いは我々の有利に進んでおり、僕たちはそれぞれの強敵に対する勝利の道筋を明確に見出していた。


僕たちの結束と戦略が、この闘いを支配し始めているのを感じることができた。

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